2017 Fiscal Year Research-status Report
医療機器への不具合対処行動に基づいた医療職に対するレジリエンス教育の構築
Project/Area Number |
16K01290
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Research Institution | Kanagawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
鈴木 聡 神奈川工科大学, 工学部, 教授 (20586028)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 透析装置 / 不具合対処 / 故障 / 臨床工学技士 / 医療機器 / レジリエンス教育 / 行動形成要因 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は以下の手順で計画されている。1)医療機器(ここでは透析装置)に不具合を生じさせる“仕掛け”の考案と導入、2)不具合の詳細を告知せずに被験者に必要な対処を行わせる実験、3)被験者の属性と不具合対処実験における対処の成否に基づく分析、4)不具合対処行動の形成要因の明確化と教育方法の考案
平成29年度は前述の1)にある“仕掛け”の種類を増やして実験を重ねた。具体的には、“仕掛け”として28年度は「加圧ポンプ本体側コネクタ接続不良」、「SV41閉鎖不全」、「加圧ポンプインペラ加工による吐出不足」の3種類を基本とした実験をしてきたが、29年度は「静脈側気泡クランプ基板側接続不良」、「SV41密閉回路側エアフィルタピンホール」、「漏血検出器受光側電圧不良」、「背圧弁H2スプリング相違」、「給水用ギアポンプリリーフ弁スプリング不良」、「血液ポンプ基盤側コネクタ外れ」、「異物挿入による血液判別器異常」、「液圧センサゼロスパン調整不良」という8種の不具合仕掛けを追加した。被験者数の確保が難しい状況だったが、これにより実験データの数は増やすことができた。
分析作業においては当初の計画通り、認知的・人間工学的部分について、一部の研究協力者の研究室を中心とした分析について、28年度に採取したデータから順次行い、一部ではあるが複数の学会で報告した。これは前述の3)および4)の一部に相当するものである。行動形成要因の分析には至っていないが、得られたデータを順次分析しており、被験者の対処パターンに対する特徴づけを行った。また、当初(申請時)は計画しなかったが、熟練技士の不具合対処に関する状況認識を援用したタスク記述を行うことで、前述の対処パターンを分類しやすくした。30年度はさらに実験データを追加しながら、不具合対処についてのレジリエンス教育を明確化する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験実施においては、施設の臨床スタッフ数定数減により本来の臨床業務の負担が増え、実験に協力可能なスタッフの手配が難しくなってきている状況は、昨年より深刻になっている。実験では不具合の“仕掛け”について、一度行うと同じ被験者に同じ“仕掛け”を行えない(意味がない)ので、実験データ数が危惧されたが、29年度は“仕掛け”の種類を大幅に増やすことができ、被験者数増は十分とはいえないものの、実験数は確保できた。 分析に関しては28~29年度に採取したデータについて、対処パターンの分類および特徴づけについて検討し、一部成果発表した。またそのデータに加え、熟練技士の認識表現(故障診断方略に関するプロセスのマッピング)を行い、それらの比較から、透析装置の異常診断プロセス評価について検討した。 全体として被験者数増加に関してはやや少ないものの、実験パターンは当初の計画より大幅に増やしている。また分析ならびに一定の知見を得ることに関しては、計画通りであり、全体としては概ね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究協力施設(医療施設)において被験者を増やすことには今年度も注力するが、ほとんどの透析医療現場は人員確保しにくい状況で研究協力をいただいており、被験者の負担は大きいと思われる。背景には診療報酬変更等によるさらなるコスト低減などがあると察する。本研究の申請書では詳細に言及しなかったが、実験用に確保した透析装置(コンソール)だけでは複数施設での実施は困難であることや、単一機種のみによる検討では不十分(コントロールスタディが望まれる)であり、異なる機種の確保も検討したいと考える。また、30年度は本研究最終年度であり、採取したデータの分析を早急に行う。
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