2016 Fiscal Year Research-status Report
不完全観測下における点検の有効性と保全活動への応用に関する研究
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16K01296
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Research Institution | Kobe Gakuin University |
Principal Investigator |
佐藤 毅 神戸学院大学, 共通教育センター, 准教授 (30304405)
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Project Period (FY) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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Keywords | 不完全点検 / 信頼性 / 点検しきい値 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、不完全点検を実施すべき境界条件導出を研究の中心事項とした。不完全点検は、点検結果が対象物(以下システム)の真の状態を表す保証がないことから、完全点検よりも実施時期について深く考慮しなくてはならない。信頼性研究の立場から、点検実施の境界条件を、システムの故障確率を用いて導出した。 この点検実施の境界条件を点検しきい値と呼び、点検前のシステム故障確率、および点検能力(感度、特異度)、および保全実施のため設定される保全しきい値から導出した。また、点検レベルをシステムレベルととらえるのではなく、構成ユニットレベルとし、そのユニットレベルでの結果に基づきシステム状態を判断する問題について考察を行った。複数ユニットシステムの場合、構成ユニットの物理的構造がシステム状態を規定するため、複雑な構造をもつシステムの正確な故障確率の導出は難しい。そこで、システム信頼度と構造に関する一般化モデルとして有効な構造関数を用い、近似的に点検しきい値の上下限の導出を行った。ただし、各ユニット間の独立性が保たれない場合、単純な構造以外は非常に難解であることから、各ユニットが独立な場合におけるnユニットシステムに対する点検しきい値の導出にとどまっている。 今後、複数ユニットシステムに対する点検しきい値の近似精度の向上とともに、点検しきい値を考慮した保全問題への応用を計画している。また、不必要な点検を実施しない質的な境界値である点検しきい値を、信頼性・保全性理論において研究が行われている保全時期決定を目的とした意思決定問題へ応用した研究も予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成28年度の研究計画当初に予定した2つの研究推進項目のうち、構成ユニットの物理的構造を用いた点検しきい値の導出について、研究の一部推進ができた。厳密な点検しきいの導出は、システム構造の複雑さに依存するところが多く、現状では近似的に点検しきい値の上下限値を導出するにとどまっている。今後、近似精度を上げるとともに、真の点検しきい値の導出法について研究を進める必要もある。 また2つ目の項目である点検診断構造については研究に着手できていない状況である。点検や診断がシステム構造上のどの範囲をカバーしているかに依存し、システム状態の推定が異なる可能性が予想され、考察すべき状況が多数存在する。そのため、基本的なシステム構造を対象に、点検や診断でカバーされる状況を単純なケースを想定した上で、点検診断構造を考慮した複数ユニットシステムに対する点検しきい値の導出について考察する必要がある。 研究の推進については、本研究課題の採択が追加採択であり、研究開始時期が遅くなったため、若干の遅れが生じています。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進方策としては、複数ユニットシステムに対する点検しきい値の近似精度の向上、点検診断構造を考慮した点検しきい値の導出を進めるとともに、点検しきい値を考慮した保全問題への応用を計画している。点検しきい値は、目的にそぐわない不必要な点検を実施しないという観点から得られる、質的な規範に基づき導出される境界値である。この質的規範に基づく点検実施のもと、信頼性・保全性理論において研究が行われている保全時期決定を目的とした意思決定問題について研究を推進する。代表的な点検問題として、定期点検問題や逐次点検問題がある。これら点検問題に点検しきい値を適用し、さらにシステム再生(取替や完全修理)を組み合わせた、より現実的な維持管理問題へ応用する予定である。 これら、質的規範に基づく点検計画モデルの定式化を実施し、従来モデルとの比較のため,既存研究で多用される評価規範との比較も予定している。 また、点検しきい値を用いた維持管理問題化における最適解の存在条件を解析的に行うと同時に,数値実験による各種考察を予定している.しかし、最適解の存在条件の導出についてはかなり難しいと予想され、最適解の存在を数値実験により検証するにとどまる可能性が非常に高いと考えている。
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Causes of Carryover |
本課題は非採択であるとの通知があり、10月中下旬に本課題が追加採択になったと連絡がありました。つまり、本課題実施にかかわる費用発生は全く予定しておらず、不必要な支出は厳に慎むべきと理解し、平成28年度は本課題にかかわる予算からの支出は行いませんでした。追加採択という制度を正しく理解していませんでした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究計画の初年度(平成28年度支出計画)をベースに研究費の使用を予定しております。数値実験用コンピュータ、および解析用ソフトウェアとともに、関連書籍等の購入を予定しております。当初の予定では、平成29年度では、2回の海外渡航を予定しておりましたが、平成30年度以降へ変更予定であります。
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Research Products
(1 results)