2016 Fiscal Year Research-status Report
マルチエージェントシミュレーションによるレジリエントな減災のための解決法の提案
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16K01303
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Research Institution | Wakayama National College of Technology |
Principal Investigator |
謝 孟春 和歌山工業高等専門学校, 電気情報工学科, 教授 (90300574)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 協調行動 / 役割分担 / 災害救助 / マルチエージェント / 異なる報酬 |
Outline of Annual Research Achievements |
知的エージェントの学習プロセスの設計と協調行動の獲得を検討するために,災害救助ロボットをマルチエージェントとし,フィールド上に配置された全ての負傷者を効率的に救助するモデル化した「災害救助問題」に取り組んできた. 本研究では災害救助問題に対して,役割分担による協調行動の獲得を以下のように行う.まず災害救助という全体のタスクを,負傷者救助とガレキ撤去という2つのサブタスクに分割する.次に,災害救助を行うエージェントを,負傷者救助を優先するエージェントと,ガレキ撤去を優先する撤去エージェントに分け,それらに異なる報酬を与えることでタスクを分担させる. エージェントは強化学習により,報酬をより多く得る行動を選択する.そのため学習段階で,優先度が高いタスクに関する行動に対して,他の行動よりも高い報酬を与えることで,そのタスクを優先して行うように学習させることができると考えられる.報酬の与え方として,①全てのエージェントに同じ報酬,②優先すべきタスクに応じて異なる報酬,③自らが優先すべきタスクの行動を選択したときのみ報酬,という3パターン設けて,実験によってそれぞれの協調行動の学習プロセスを検証した. 救助エージェントと撤去エージェントに異なる報酬を与え,エージェントが優先すべきタスクの行動選択したときには高い報酬が与えられ,そうでないときは低い報酬が与えられるという学習パターンは最もよい結果が得られた.すなわち,救助エージェントが負傷者救助を優先,撤去エージェントがガレキ撤去を優先するように学習することによって,エージェント間の役割分担ができ,効率的な協調行動を獲得できたと考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通りに研究成果が得られた. ①知的エージェントの学習プロセスの設計として,エージェントの属性と行動ルール及び方策からなるエージェントの構築を完成した.災害救助問題を対象とし,救助エージェントと撤去エージェントの2種類のエージェントが環境からの情報を獲得でき,強化学習により自らの学習挙動の制御ができた. ②協調性のある知的エージェントの構築として,災害救助問題に対して,災害救助を行うエージェントを,負傷者救助を優先するエージェントと,ガレキ撤去を優先する撤去エージェントに分け,それらに異なる報酬を与えることでタスクを分担させ,エージェント間の協調行動を獲得することができた. また,エージェントの構成のみならず負傷者の容体も考慮した報酬配分によるエージェントの協調行動の獲得方法も検討している.さらに,エージェントが効率的な経路を選択する為の最適化に関する基礎的解法の研究も取り組んでいる.
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Strategy for Future Research Activity |
計画通りに研究を推進する予定である. ①効率的な避難シナリオの設計とレジリエント減災・防災の構造化を検討する. 南海トラフ地震の津波で甚大な被害が予測されている地域を対象とし,避難誘導などの措置で防災への効果をシミュレーションで行う.避難者の人数に応じて誘導者の配置や、避難路の選択及び避難所の設置などによる避難効果の違いを分析する. ②地域の特徴を考慮したシミュレーションによる避難方式の方式を検討する. 海抜の低い地域に対して,すべての避難者が津波が到達するまでに裏山・高台のような安全な場所に避難するために,車を使用する避難の効果と問題点をシミュレーションで検討する.道路の状況を考慮しながら渋滞が発生しないように地域の環境条件による好ましい避難行動の多様性を明確する.
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Causes of Carryover |
当初予定していたパソコンの価格より安価に購入できたため,次年度使用額が生じた. また,検証実験を自ら行ったため,人件費の出費を抑えた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
①シミュレーション解析用パソコンの購入 20万円 ②研究成果発表のための外国旅費 35万円 ③外国語論文の校閲 5万円 ④検証実験の補助 5万円
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