2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K01304
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Research Institution | Oshima National College of Maritime Technology |
Principal Investigator |
岡村 健史郎 大島商船高等専門学校, その他部局等, 教授 (60194388)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松村 遼 大島商船高等専門学校, その他部局等, 助教 (20734768)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 沿岸監視 / 密漁 / 自動監視 / サーマルカメラ / パーティクルフィルタ / Raspberry Pi / システム構築 |
Outline of Annual Research Achievements |
沿岸部で発生する密漁犯罪や漁具の盗難は近年増加しており,資源の枯渇を招き,暴力団組織の資金源となるなど安心安全にとって大きな脅威となっている.特に,地方の漁場や漁港を管理する小規模な漁業組合の多くは高齢化や小規模化が進み,十分な監視施設や監視体制を築く余裕が無い.そのため,これらの事案に対応するためには小型で安価な自動監視システムを複数設置し,監視エリアの広域化と検出の省力化を図る必要がある. 筆者らはすでにサーマルカメラを用いて海上を含む沿岸領域を観測した画像から,固有空間法を用いて背景部を記述し,天候や観測時間に影響されずに進入物体領域を抽出できることを示している.また,固有空間法で検出した量を物体存在の確からしさに用い,単一の物体を対象に,複雑な背景変動に対して頑健な三次元上の物体追跡を高性能なコンピュータを用いて出来ることを明らかにしている. 一方,近年,湾岸監視システムに必要な装置に低コスト化という大きな変化が起きている.例えば小型コンピュータRaspberry Piは数千円と安価にもかかわらず,入出力ポートを多数備え,汎用基本ソフト(WindowsやLinux)によって動作可能で,従来のコンピュータ上で開発されたシステムを移植することが可能である. 本研究は平成28年度において,高性能コンピュータ上で開発されたシステムに対して,安価なコンピュータ上で稼働する様に入力画像サイズ,検出間隔及びプログラムサイズの最適化を行った.さらに,従来単一物体に対する物体に対する検出・追跡であったものを,先入れ後出し構造を持つスタックを検出物体管理に応用することで,長い時間連続して検出されている結果を重視し,容易に複数物体を同時に追跡できるようにした.さらに,平成29年度の研究に対応するよう広範囲な領域を監視する複数のサーマルカメラを設置し,データの収集を開始した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
広大な沿岸領域を対象に,天候,時間による背景変動に対して頑健な検出・追跡性能を持つ安価な自動監視システム構築のため,平成28年度においては,(1)小型コンピュータシミュレータの構築と小型コンピュータ上での動作可能な手法の開発,(2)広域な沿岸領域を対象に複数のカメラからデータを集中できるシステムの構築,を行った. 上記(1)において,開発を効率的に行うために高性能なコンピュータ上に小型コンピュータ Raspberry Piのシミュレータを,フリーウェアQEMUを用いて行った.このQEMU上に高性能コンピュータ上で開発を行っていた検出システムの移植を行った.この時,利用する画像サイズを半分にすることで毎秒1回の検出を行い,それらを連続して追跡できることを確認した.また,従来,単一物体に対する物体に対する検出追跡であったものを,先入れ後出し構造を持つスタックによる検出物体管理を用い,長い時間連続して検出されている結果を積極的に採用することで,容易に複数物体を同時に追跡できるようにした.更に,最新型の小型コンピュータRaspberry Pi 3に対して,これらのシステムを移植し,小型コンピュータ上でも複数物体の検出・追跡が可能であることを確認できた.また,市販の持ち運び可能な安価なソーラパネル(55W)とバッテリーを組み合わせ,小型コンピュータを用いて物体の検出を行い,この時の画像をメールで送信できることも確認した. 上記(2)においては,筆者らの施設が漁港に隣接し遊漁者が多く訪れる沿岸部にあることを利用し,新たに2台のサーマルカメラを設置し,従来から有るサーマルカメラと合わせて広大な沿岸領域を撮影した動画の収集を開始した. 更に,平成29年度に実施予定であるカメラキャリブレーションにおいて海上地点における座標を取得するためにGPS機器を用いる手法開発を行い,精度検証を行った.
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度においては,(1)実際の複数の監視領域を統合するためのカメラキャリブレーション手法の開発,(2) 複数のカメラから得られる情報の統合方法の開発,の二つを重点的に行う. (1) 単眼カメラをもちいて実世界三次元空間上での物体追跡を行うためには,領域内地点の三次元座標とカメラ画像の画素座標との対応を求めるキャリブレーションが必要である.従来は,領域ごとに座標系を設定し,その領域内の陸上部分において,レーザメーターや巻き尺などを使って領域内の点の座標を決定することでキャリブレーションを行っていた.しかし,監視対象領域が海上部分の場合には,陸上部分を利用する方法は使えない.そこで,船舶,GPSおよびWiFiネットワークを使い,その船の上に置いた発熱体を撮影したサーマルカメラ画像の座標をリアルタイムに船上で読み取り,GPSの経度・緯度情報から三次元座標とカメラ画像の画素情報を対応付けることを考える.これらの観測手法を確立するために平成28年度に本手法を試行したが精度に関しては不十分であった.今年度は観測方法の改良や潮位に対する対策を取る予定である. (2) 複数のカメラを使い,広大な領域を監視する場合には,カメラの監視領域の重なりを少なくする必要がある.そのため,別々のカメラ間から得られた情報の統合が必要になる.我々らが開発しようとするシステムは三次元空間での物体のサイズやその位置を推定できる.この性質を使い,複数カメラ間で連続した追跡を可能とするだけでなく,サイズや位置,移動速度から検出精度を向上させる手法を開発する.
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Causes of Carryover |
海上キャリブレーション調査に必要な小型船舶用燃料,調査補助人件費等を予定していたが,学内予算より支出したため不要になった.更に,予定していた学会出張が不可避の行事と重なり参加できなかったために当該助成金が発生した.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度に行う予定であった海上キャリブレーションの試行をした結果,精度が十分でないことが判明した.精度向上のためにGPS機器の追加購入を行う.更に,平成29年度以降の実験に備えて画像データの蓄積を予定より早く始めたが,情報量が多くデータ保存用ディスクが飽和状態となっている.これに対処するためディスクの増設を行う.
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