2017 Fiscal Year Research-status Report
噴火規模と噴火様式の時間変化の原因を探る:マグマ溜りの状態変化の物質科学的研究
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16K01314
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
安田 敦 東京大学, 地震研究所, 准教授 (70222354)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | FTIR 含水量 / マグマ溜まり / 温度 / 富士山 |
Outline of Annual Research Achievements |
マグマ供給系の時間変化を調べるため,最近3500年間の18回の山頂噴火と山腹噴火の降下火砕物試料について化学組成分析を行った.これら分析結果に鉱物学的温度計を適用し,それぞれの噴火で活動したマグマ溜まりの温度を計算した.加えて,幾つかの噴火についてはメルトインクルージョン(MI)をFT-IR反射分光法で分析し,MIが捕獲された時点のマグマの含水量を求めた.また,焼野西丸尾溶岩(AD700年頃)に含まれる多数のゼノリスの分析から,富士山北西部のマグマ滞留深度について検討を行った. 砂沢噴火(2900 cal BP)以降,宝永噴火(AD 1707年)の前まで,全岩化学組成はややSiO2に乏しくなる方向に変化している.富士山の爆発的噴火としては最大規模の宝永噴火で噴出した玄武岩マグマはその前数回の規模の小さな噴火よりも分化した組成であった.18回の噴火には規模の大きな噴火が数回含まれているが,噴火の規模と全岩化学組成には明確な対応関係は見られない.ほとんどの噴火で斜長石斑晶組成がバイモーダルを示すとともに,かんらん石斑晶に逆累帯が観察され,先行研究で全岩化学組成の検討から提唱されているように,富士山ではほぼ普遍的に2種類のマグマが混合して噴火していることが鉱物の化学組成の観点からも裏付けられた.混合マグマの高温側成分のマグマ温度をMI組成とホストかんらん石斑晶の組成から計算すると,すべて1100度から1140度の範囲に入る.この温度と噴火の規模との間にも相関は無い.バイモーダル分布を示す斜長石のAn値の高An側のピーク位置は噴火によってAn値で15程度の揺らぎがあり,マグマの含水量とマグマの温度の両者の変動が高温側マグマの上昇に影響しているらしい.一方,噴火の規模はこの高温側成分単独では決まらず,浅部にある低温マグマとの相互作用に依存しているものと思われる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していなかった研究組織外の方々から富士山のマグマ溜まり研究に適当な下記の試料の提供を受けて共同研究を開始した.これにより作業量は増えたが,富士山の活動全体を把握する素地が整った. (1)マグマ溜まりの存在環境を知るのに適当なゼノリス試料 (2)最近の爆発的噴火を網羅した露頭試料32点 また,分析手法の検討のため,阿蘇火山と西之島火山の試料分析も実施し,本研究のような分析・解析手法が他の火山についても有効であることが確認できた.
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Strategy for Future Research Activity |
29年度に入手した試料とこれまで採取した試料を合わせて分析を継続する. 爆発的噴火の試料と溶岩流試料について様々な時代のものが手に入ったので,噴火の形態とマグマ溜まり環境との関係やマグマ供給系の時代変化についてさらに検討を進める.
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Causes of Carryover |
当初計画に含まれない人たちから富士山に関する試料の提供を受けたため,計画していた試料採取についての優先度が下がり,試料採取を実施しなかった.計画していた試料採取が最終的に必要か否かは,現在入手している試料の分析結果によって判断する.このためH30年度に繰り越した. 分析結果によってはH30年度の前半に試料採取のための地質調査を実施する.実施しない場合には,当初予定したよりも分析試料数が増加することに対応して,旅費を分析用消耗品の購入や分析補助者への謝金などに振り替えて使用する.
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Research Products
(10 results)