2017 Fiscal Year Research-status Report
活断層下の低電気比抵抗構造領域に注目した新たな活動性評価法の構築
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16K01319
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
山口 覚 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (70191228)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村上 英記 高知大学, 教育研究部自然科学系理学部門, 教授 (10166259)
加藤 茂弘 兵庫県立人と自然の博物館, その他部局等, 研究員(移行) (50301809)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 電気伝導度構造 / 活断層 / 郷村断層 / 山崎断層 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,山崎断層系那岐山断層帯を対象地域とした. 那岐山断層帯は3本の断層から構成される.(1)ほぼ東西方向にのびる声ヶ乢断層(長さ約10km),(2)東北東-西南西方向にのびる那岐山断層(長さ約6㎞),(3)大きく北側に凸に湾曲する那岐池断層(長さ約9㎞).また,これら断層の変位は,声ヶ乢断層は左ずれ,那岐山断層は右横ずれを伴う南下がりであり,また那岐池断層は北側から南側へ突き上げる逆断層である(岡田ほか,2016).那岐山断層帯は隣接する山崎断層帯主部と一般走向,傾斜,ズレの向きのセンス,平均活動間隔,最新活動時期が異なる.また,周辺の地震活動も大きく異なる(山崎断層帯主部付近では多くの地震が発生しているが,那岐山断層帯付近ではほとんど発生していない.)などの特徴を有する. 那岐山断層・那岐池断層の地表トレース(N82°E)に直交するように約2kmの観測測線を設定し,この測線に沿って約200m間隔で12点の観測点を設定した.各観測点で可聴周波数帯(約10000~約1Hz)の磁場変動を信号源とするAudio-frequency Magnetotelluric法探査を実施した. 各地点で決定されたMT応答関数からABIC最小化による平滑化拘束付き2次元比抵抗インバージョンコード(Ogawa and Uchida,1996)を用いて深さ約2kmまでの2次元比抵抗構造モデル(NGSモデル)を決定した.このモデルは,2つの非常に低比抵抗な領域(C1, C2),4つの低比抵抗領域(C3~C6),2つの高比抵抗領域(R3, R4),2つの非常に高比抵抗な領域(R1, R2),および2つの比抵抗急変帯で特徴づけられる. 2つの急変帯を結ぶ上方延長と那岐池断層の地表位置が一致すること,および地表で推定されている断層傾斜と一致することから,この急変帯が那岐池断層の地下形状を表していると結論した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
那岐山断層帯は山崎断層系を構成する断層帯の一つである.山崎断層系は岡山県東部から兵庫県南東部にかけてのびる総延長約120kmの西南日本でも有数の横ずれ変位が卓越する活断層帯であり,那岐山断層帯,山崎断層帯主部および草谷断層の3つの断層帯から構成される.このうち那岐山断層帯は山崎断層系を構成する主要な断層帯であるが,隣接する山崎断層帯主部と一般走向,傾斜,ズレの向きのセンス,平均活動間隔,最新活動時期および地震活動性が大きく異なるなどの特徴を示し,注目すべき断層帯である.しかし,先行する調査研究例が大変少なく,特に地下構造についてはほとんど知見が得られていなかった. 本年度の観測およびその解析から那岐山断層帯の地下比抵抗構造モデルを構築することに成功し,それから本断層の地下形状に関して信頼性の高い情報を導き出すことができた.これは大きな成果である.また,この成果は,那岐山断層帯に関する成果にとどまらず,山崎断層系全体の地震活動と断層の特徴との関連を明らかにする上で重要な成果である. この成果は異なった視点から評価される.垂直変位量が少なく,横ずれ変位が卓越する断層では,一般に.物理探査の適用が難しいと認識されていたが,本研究で用いたAudio-frequency Magnetotelluric法探査ならばこのタイプの断層でも有効に地下構造を明らかにできることが実証された.
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Strategy for Future Research Activity |
2017年度に得た成果は,那岐山断層の東部を横切る測線から得られた成果である.言いかえると,この那岐山断層東部の地下構造を明らかにしたことに相当する.2017年度の得た成果が断層帯東部の局地的な特徴であるのか,それとも本断層帯全体の特徴であるかを明らかにすることは重要な課題である.2018年度は,那岐山断層帯の西方に位置する津山北方断層で追加観測を行う予定である.観測にあたっては,断層近傍でより詳細な構造を明らかにできる様に観測方法を改良する.具体的には,従来のようにすべての観測点で地磁気3成分(南北,東西,鉛直成分)と電場水平2成分(南北,東西成分)を測定するのではなく,これら5成分を測定する観測点と電場2成分のみを測定する観測点を交互に配置し,効率的かつ高密度な測定を行う予定である. モデル計算にあたっては,解析手法・モデル計算メッシュデザインなどは本年度とできるだけ同じ仕様として,複数測線の比較が容易になるように配慮する. 2018年度は本研究課題の最終年度であるので,2016年度の郷村断層系の成果,2017年度と2018年度の那岐山断層帯の成果を中心として,これまでに行ってきた山崎断層系の研究成果を総合的に考察し,本研究の課題「活断層の危険性評価精度の向上には,活断層の地下構造の情報を取り入れることが有効である.本研究では,断層下の電気比抵抗構造,特に,断層破砕帯と密接に関係し,顕著に低い電気比抵抗領域として表現される,断層ダメージゾーンの位置・幅・深さ・電気比抵抗値に注目する.この断層ダメージゾーンと詳細な断層地表情報との比較・検討から,①真に活断層か? ②断層セグメントが真に不連続であるのか?の判定基準や③断層活動度との関係を明らかにする」を達成する.
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Causes of Carryover |
投稿中の論文の査読と修正に予想以上に時間がかかり、出版が2018年度にずれ込んだため、その費用を2017年度分から2018年度分に残したため。
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Research Products
(4 results)