2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K01326
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
長谷川 祐治 京都大学, 防災研究所, 特任助教 (60342664)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 山地河川 / 掃流砂計測(ハイドロフォン) / 掃流砂 / 数値シミュレーション / 現地実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度の計画は,全国の流砂観測の実態並びにデータの収集,並びに既存データを用いた流砂量の解析手法の検討であった.検討から,流砂量が多い状態では既存の解析手法で流砂量の推定が難しいことが明らかとなった.そこで,現地で土砂流出実験を実施してハイドロフォンによる結果と直接採取した流砂量と比較して,流砂量が多い状態でも適用できる解析手法を提案した.提案した手法と観測データを用いて数値シミュレーションを実施して,観測と計算を連携させるために必要な情報を整理した. ハイドロフォンによる流砂量解析には,流砂の衝突回数(パルス数)を記録する方法が用いられる.パルス数の記録には音響信号のような連続量に対して閾値を設けて離散化処理を行う.既存の解析では,全ての閾値でパルス数を記録して,最も多く記録される閾値で評価する.しかし,現地で運用されるハイドロフォンシステムは,ある時間毎(ほとんどが1分以上)にパルス数が出力されるため,その時間内で最大値以外のパルス数を評価しない方法は,流砂量が多い状態では過小評価される場合がある.一方,最大閾値のみでパルス数を記録すると,出力時間に関係なく各閾値のパルス数を評価するため,流砂量が多い状態でもパルス数で評価ができることを確認した.そこで,以降は提案した手法を用いて流砂量解析を行う. 現地の土砂流出実験を京都大学防災研究所穂高砂防観測所神通川水系足洗谷試験流域内のヒル谷で実施した.ヒル谷には排砂ゲートを備えた試験堰堤があり,堰堤上流の沈砂池に堆積した土砂を排出して,給砂を行った.現地観測データと数値シミュレーション結果の比較から,地形条件や流量の他に,上流端からの流砂量の供給条件,粒径,河床条件が必要であるが,本計算では,供給流砂量が最も影響することを示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は,ハイドロフォンで取得したデータから流砂量の解析手法を検討し,流砂量が多い状態でも流砂量の推定が可能な手法を提案した.さらに,現地で土砂流出実験を実施して,観測と計算を連携させるために必要な情報を整理した.また,全国で実施されている現地観測の事例については,国土技術政策総合研究所砂防研究室との協議の上,情報を共有することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
ハイドロフォンは流域に関係なくほとんど同じ規格が用いられる.しかし,河床材料の粒径,地形条件,流量など流域毎に特性が大きく異なる.そのため,規格の異なるハイドロフォンの検討が必要である.今後の検討では,破損による欠測の防止を目的としてハイドロフォンのセンサー部となる金属管の肉厚に着目した検討を水路実験で検討する.これまでの実験では,得られた結果を外挿して,現地に適用していたが,流れの条件が大きい領域ではその関係性はあまり知られておらず,検討した例はほとんどない.そこで,単位幅流量を合わせて現地スケールに近い条件で実験を実施するため,大型ポンプを有する水路を使用する.まず,ハイドロフォンに衝突する流砂の持つ運動量と金属管内で発する音の関係性を肉厚ごとに広い範囲で確認し,衝突による凹みも考慮して,流域特性に応じた規格を提案する.また,それらの検討と並行して現地観測結果と地形条件を取得して数値シミュレーションを実施する.地形条件には,山地河川特有の階段状河床地形の影響を検討し,必要に応じてモデルを提案する.さらに,全国にある流砂観測に関する情報収集を今後も引き続き行い,分析を行っていく.
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