2017 Fiscal Year Research-status Report
高分解能衛星データを用いた土砂災害被災情報提供手法の確立
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16K01337
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Research Institution | Hiroshima Institute of Technology |
Principal Investigator |
小西 智久 広島工業大学, 環境学部, 助教 (40559960)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | SAR / 合成開口レーダ / コヒーレンス / 広島豪雨災害 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、高分解能衛星データを用いた土砂災害分析手法の開発を行うことを目指すものである。 広島豪雨災害の解析では、COSMO-SkyMedおよびALOS-2/PALSAR-2の観測データを用いて土石流の被災地域における災害前後のコヒーレンス、相関係数、正規化後方散乱係数などを計測した。その結果、正規化後方散乱係数は災害前後の変化が大きいため被災地検出に有効であることが分かった。そして、COSMO-SkyMedおよびALOS-2/PALSAR-2データの各指標に閾値を設定し、被災地の検出を行った。どちらのSARデータにおいても八木3丁目の被災住宅およびその周辺部を検出することができた。次に、光学センサであるSPOT/NAOMIのデータを用いて、NDVI差分法、ISODATA法による教師なし分類および最尤法による教師付き分類により土砂崩壊地検出を行った。その結果、検出精度は最尤法が高いが、処理手順の簡便さではNDVI差分法が優れていた。 紀伊半島豪雨災害の解析では、災害前後のCOSMO-SkyMedデータを用いて後方散乱係数の差および相関係数に対して閾値を設定し土砂崩壊地の検出を行い、高分解能光学衛星から判読した土砂崩壊地と比較を行った。その結果、Frostフィルタを適用し、37×37の局所領域で相関係数を算出し、閾値処理により土砂崩壊地を検出した場合にF値が61.24%と最も高くなった。 SARデータによる建物被害を把握する試みとして、ALOS-2/PALSAR-2データを用いて熊本地震災害の解析を行った。3時期のALOS-2/PALSAR-2データを用いてコヒーレンスを算出し、災害前後のコヒーレンスから正規化差コヒーレンスを算出した。その結果、推定倒壊棟数が増加するほど災害前後のALOS-2/PALSAR-2データから算出した正規化差コヒーレンスが増加することを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の主な計画は、COSMO-SkyMedデータおよびALOS-2/PALSAR-2データを用いたコヒーレンス、相関係数および正規化後方散乱係数による土砂災害の被災領域の抽出と被災程度の把握である。被災領域の把握についてはCOSMO-SkyMedデータおよびALOS-2/PALSAR-2データを用いて被災域と非被災域でコヒーレンス、相関係数、正規化後方散乱係数などを計測し、これらの計測結果に基づき閾値を設定し被災領域を抽出した。一方で、被災領域全域を抽出することが困難であったことから、ニューラルネットワークなどの画像分類による土砂災害の被災領域抽出は実施できなかった。2011年の紀伊半島豪雨の事例では災害前後のCOSMO-SkyMedデータを用いて局所領域内の相関係数を算出し、閾値処理により約60%の土砂崩壊地を検出することができた。この成果は、査読付国際誌であるEuropean Journal of Remote Sensingに掲載された。 土砂災害の被災程度の把握については広島市安佐南区の八木ケ丘団地の99棟の住宅についてCOSMO-SkyMedデータを用いて検証を行った。その結果、5×5領域の相関係数を用いて全壊家屋とその他の家屋を区分することができたが、土砂が流入した家屋などの被害程度を推定することは困難であった。そのため、2016年熊本地震による土砂災害被災領域の抽出および建物被害についてALOS-2/PALSAR-2データによるコヒーレンス解析を行っている。その結果、地震による建物被害ではあるが、領域内の建物倒壊率が高くなるほど正規化コヒーレンス値が増加する傾向が得られた。今後は、ALOS-2/PALSAR-2データのコヒーレンスおよび偏波情報を用いて建物1棟ごとの被害程度を推定する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、災害前後のSARデータの画像分類処理による土砂災害の被災領域抽出に関する研究を実施する。複数時期のSARデータをマルチチャンネルデータと考え、最尤法、ニューラルネットワーク等の手法を用いた画像分類による土砂災害の被災領域抽出を行う。その際に、SAR強度画像だけでなく、コヒーレンス、相関係数、正規化後方散乱係数などの情報も用いて被災領域抽出に最適な情報について検証を行う。 SARデータによる災害の被災程度の把握では、2016年熊本地震による建物被害を対象として、コヒーレンスおよび偏波情報などを用いた推定方法の確立を目指す。まず、建物の被害情報をGISデータ化し、SARデータによる推定結果の検証を実施する。使用データとしてはALOS-2/PLSAR-2の高分解能モードによる単偏波とフル偏波データを使用し、これらの災害前後のデータを用いてコヒーレンスおよび偏波情報と建物の被害程度との相関性について解析を行う。 さらに、衛星データによる土砂災害被災情報の提供手法の開発を実施する。Webを通じて被災情報を提供するため大学内にサーバを設置し、地球観測衛星データと防災に関連するGIS情報を統合化して提供する仕組みを構築する。また、衛星データと数値標高データの統合による3次元化による土砂災害の被災情報作成および提供手法の開発を行う。 研究成果は、国際学会(SPIE Remote Sensing)および国内学会(土木学会など)で公表し評価を受けた後、原著論文として学術雑誌に投稿する。
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Causes of Carryover |
国際学会への旅費として30万円程度を見込んでいたが、大学から旅費の補助を受給できた。また、学術雑誌の投稿費5万円程度を見込んでいたが、キャンペーン期間中であったため無料でオープンアクセスとして投稿することができた。これらのことから未使用額が生じた。 次年度では、学会での成果発表の旅費に充てる。また、研究成果を学術雑誌で公表するための英文校正費および論文投稿費として使用する。
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