2016 Fiscal Year Research-status Report
原子力緊急時において即時対応が可能な局所域詳細大気拡散予測手法の開発
Project/Area Number |
16K01341
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
中山 浩成 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力基礎工学研究センター, 研究副主幹 (50535903)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | Large-Eddy Simulation / 大気乱流 / 温度成層効果 / 局所域大気拡散 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、Large-Eddy Simulation(LES)モデルを用いることで局所地形・建物の影響を受ける複雑乱流場の中でも正確に大気拡散計算ができ、かつ、詳細データの提供が迅速に行える原子力緊急時のための大気拡散予測手法の開発を行うことを目的としている。LESは非定常現象を数値的に計算するモデルであるため、流入境界条件も時々刻々変化する風速や温度データを与える必要がある。従来、風工学・境界層気象の分野では、主解析領域の上流側に別途、大気乱流を駆動させるための計算領域を設けていた。この領域では、主に、下流側にて乱流変動成分のみを抽出してそれを流入境界に与えたrecycle手法により、まず、熱的影響のない中立大気乱流が作成される。次に、この大気乱流変動風を温度分布データと共に主解析領域の流入境界に与えて、温度成層大気乱流を作り出していた。この手法は、ターゲットとする気象状況を物理的にリーズナブルに作り出すことはできる。しかしながら、中立乱流を作成するための計算領域、および、温度成層効果を有する大気乱流を空間的に発達させるための長い助走空間が必要であるために計算負荷も非常に高くなるという問題があった。 そのため、本研究では、短い吹走距離で任意の気象状況の再現を可能にする手法を提案する。まず、解析領域の流入境界にターゲットとする風速・温度分布を与える。次に、やや下流側の地点において、時空間平均された平均分布と瞬時における変動成分を抽出し、それらを流入境界に与えてrecycleさせる方式を提案した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で提案したLES温度成層大気乱流の生成手法の妥当性を評価するために、代表的温度成層条件(不安定・中立・弱安定)を対象に数値シミュレーションを行い、既往の室内実験結果(Ohya and Uchida,2004)と比較した。いずれの温度成層条件に対し、平均風速分布は一致していることを確認した。ただし、特に弱安定条件では計算格子解像度の影響により、鉛直成分の乱流強度や温度変動成分が実験結果に比べて地表近傍で急激に減衰した分布が得られた。しかしながら、それ以外は、実験結果と同様な分布形状を示すことを確認した。さらに、本手法を野外気象観測実験に適用したところ、風速や温位などの数値計算結果が観測データと良好に対応し、物理的に妥当な乱流変動性状が得られたことを確認した。以上により、本手法の有効性が示されたと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度で開発したLES温度成層大気乱流生成手法を用いて、実在する原子力研究施設を対象に各風向別に大気拡散計算を行う。ここでは、代表的な風速・温度分布をLESモデルの入力条件として与えて仮想気象状況を再現し、基本的な濃度分布パターンのデータ取得を行う。る。風向間隔は5°から10°程度として計36から72ケースの計算を行い、濃度分布をデータベース化する。次に、対象施設周辺において取得した気象観測データを入力条件として与えて、実気象状況下での大気拡散計算を行う。この気象状況の風向出現頻度に基づき仮想気象条件下でデータベース化された濃度分布を重ね合わせたものと、現実気象条件下での濃度分布に関する計算結果との対応性を調べ、重合平均による拡散予測手法の有効性を実証する。
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