2016 Fiscal Year Research-status Report
長期保管可能フィーダー細胞層を用いた造血機能の生体外再構築
Project/Area Number |
16K01348
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
三好 浩稔 筑波大学, 医学医療系, 講師 (70292547)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
二宮 治彦 筑波大学, 医学医療系, 教授 (10198533)
上妻 行則 筑波大学, 医学医療系, 助教 (90550145)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 造血幹細胞 / ストローマ細胞 / さい帯血 / 凍結保存 / 分化・増殖 / 三次元培養 / 共培養 / ティッシュ・エンジニアリング |
Outline of Annual Research Achievements |
白血病などの有効な治療法である造血幹細胞移植は、移植する細胞数が多いほど成績も向上する。そのため、生体外で効率的に造血幹細胞を増幅できるような培養系を確立することは、臨床上の意義が大きい。本研究では、ヒトさい帯血由来の造血系細胞を三次元培養系においてフィーダー細胞層上で共培養することにより、未分化な造血系細胞を生体外で増幅できるような三次元培養法を開発することを目的とする。このとき、共培養前にフィーダー細胞の増殖を三次元凍結保存処理によって抑制しておくことで、造血系細胞を効率的に増幅することを目指す。 本年度は、ヒトさい帯血由来の造血幹細胞を増幅できるかどうかを、マウス由来とヒト由来の2種類のストローマ細胞を用いて調べた。まず、マウス由来造血幹細胞の増幅を支持することが確かめられている C3H10T1/2 マウスストローマ細胞株を用いてヒト造血系細胞の増幅実験を行ったところ、未分化な造血系細胞(CD34 陽性細胞)は 10 倍以上に増幅できたことから、本共培養系を用いてヒトの造血系細胞を増幅できることが確かめられた。 臨床応用に向けては、ヒト由来のストローマ細胞を用いる必要があることから、次にヒト由来のストローマ細胞株である HS-5 を用いて同様の増幅実験を行った。このとき、造血系細胞の増幅に適したストローマ細胞密度についても、あわせて検討した。その結果、ストローマ細胞の密度は低い方が造血系細胞の増幅は良好であり、未分化な造血系細胞を 15 倍以上に増幅することができた。 以上の結果から、ヒト由来のストローマ細胞と三次元共培養することで、ヒトさい帯血中の未分化な造血系細胞を増幅できることが確かめられた。増幅に適した培養条件をさらに検討することで、移植に応用できるような造血幹細胞の増幅方法を確立することができると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目的であった、「三次元共培養系においてヒトさい帯血由来の造血幹細胞を増幅できるような条件を決定する」という点は、おおむね達成することができた。また、来年度以降に検討を開始する予定であった、「三次元培養系を用いて特定の血液系細胞へと分化させる研究」については、血小板産生の基になる巨核球へと分化させるための検討を開始した。その結果、まだ予備的な検討を行った段階であるものの、巨核球への分化が一般的な単層培養よりも良好であるという結果が得られている。以上のことから、研究はおおむね順調に進行していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒトさい帯血に含まれている未分化な造血系細胞を増幅するための実験では、造血系細胞の培養密度が増幅度に及ぼす影響について、詳細に検討する予定である。また、本年度の実験ではヒトストローマ細胞株を用いたものの、この細胞を臨床応用に直接利用することは困難であると考えられる。そこで、自己のストローマ細胞を用いた増幅方法についても検討を開始する予定である。 未分化な造血系細胞を特定の細胞へと分化させるための実験では、今年度に検討を開始した「血小板産生を目的とした巨核球への分化実験」を継続して行う。この実験では、分化を促進する刺激因子の濃度や、因子の組合せが巨核球分化に及ぼす影響について検討する。
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