2016 Fiscal Year Research-status Report
細胞内イオン環境の時空間変動による細胞可塑性の光制御
Project/Area Number |
16K01351
|
Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
浅野 豪文 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (30552476)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 細胞分化 / 遺伝子発現 / 細胞内イオン / 光遺伝学 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞内外環境の恒常性維持が細胞の生存、活動にとって本質的意味を持っているが、細胞の運命決定における細胞内イオン動態との連関については明らかとなっていない。本研究課題は細胞の内外を隔てる原形質膜と細胞質内を隔てる小器官膜を介したイオン輸送による細胞内イオン動態が細胞機能の可塑性に果たす役割を明らかにすることを目的とする。 本年度はイオン輸送を生じさせる刺激を与えた時の遺伝子発現やカルシウム応答を検討した。光受容イオンチャネル・チャネルロドプシン(ChR)遺伝子を筋芽細胞に導入し光刺激を与えると、いくつかの筋分化制御因子の発現の量やパターンの変化が見られた。また細胞融合に関与する転写調節因子の発現亢進が認められた。そこで、誘導初期にパルス状の光を2時間照射し、分化培養5日目に免疫染色により形成されている筋管細胞の評価を行った。形成された細胞はコントロール群と比較して、取り込まれた核の数や太さが増加しており、肥大化してることが認められた。ChRを用いた光刺激が筋芽細胞の融合を促進させることで筋管細胞の成長、肥大化を引き起こしていることが示唆された。 部位特異的に局在する光スイッチを細胞に導入し、原形質膜と細胞質内を隔てる小胞体膜を介するイオン輸送を選択的に制御できるか検討を行った。同一細胞における細胞質内および小胞体内カルシウム変化をカルシウム感受性蛍光プローブYCaMPおよびR-CEPIA1erを用いて定量的に解析を行った。形質膜型ChRを導入した細胞において、細胞質カルシウム濃度の上昇が観察された。小胞体膜局在型ChRを導入した細胞においては、光の照射に伴って細胞質カルシウム濃度の上昇および小胞体内カルシウム濃度の低下が観察された。光照射により細胞外からのイオン輸送と細胞内のイオン輸送を区別して操作することができたと考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた研究計画について、上述の通りの研究成果を挙げることができている。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は筋芽細胞の分化を促進した細胞内イオン輸送の光制御の実験系を幹細胞の分化に適用する。光照射による律動性、非律動性の生理的刺激を与え、形態や遺伝子発現、タンパク質量、電気生理特性などを指標に形態的、機能的な側面から細胞分化機構を検証する。
|
Causes of Carryover |
刺激条件の検討が順調に進んだこと、検討する遺伝子群を効率的に絞りこむことができたことから消耗品費を節約することができ、未使用額が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
幹細胞分化における細胞活動の人為的介入を検証するため、遺伝子スクリーニングのためのDNAアレイ、サイトカインやケモカインの定量解析のためのELISAアレイ、定量PCR用酵素も含めた合成オリゴの費用にあてる。
|
Research Products
(2 results)