2017 Fiscal Year Research-status Report
ナノ秒高電圧パルスのユニークな作用に基づく新しい癌治療法の確立
Project/Area Number |
16K01363
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
諸冨 桂子 熊本大学, パルスパワー科学研究所, 特別研究員 (80639435)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ナノ秒高電圧パルス / 細胞死 / 癌治療 / 免疫反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度はナノ秒高電圧パルスを固形腫瘍由来細胞に作用させ、その細胞死メカニズムについて解析を行ったが、本年度はそれ以外のタイプの細胞への作用を検討するため、ヒト白血病細胞に由来するHL-60を用い、ナノ秒高電圧パルスの効果を検討した。低濃度のジメチルスルホキシド存在下でHL-60を好中球へと分化させることができることから、未分化HL-60細胞と好中球へと分化させたHL-60細胞の双方について解析を実施した。その結果、好中球へと分化したHL-60細胞にナノ秒高電圧パルスを作用させると、細胞外に染色体DNAが放出されるという興味深い現象が観察された。この現象は未分化細胞では観察されなかったことから、好中球細胞外トラップと呼ばれる免疫反応であると推察された。この反応が誘導される際には、シトルリン化と呼ばれるヒストンの翻訳後修飾が伴うことが知られている。そこでヒストンのシトルリン化をウェスタンブロット法により解析したところ、ナノ秒高電圧パルスによって、分化細胞特異的にヒストンのシトルリン化が誘導されていた。さらにナノ秒高電圧パルスによる好中球細胞外トラップの形成とヒストンのシトルリン化には細胞外カルシウムの存在が必須であることが判明し、細胞外カルシウムの流入が好中球細胞外トラップを誘発する重要な要因であることが示唆された。また好中球細胞外トラップの定量化のための新しいアッセイ系を確立した。続いて、ナノ秒高電圧パルスを作用させるための新しい実験セットアップを立ち上げた。新たな電源により、100ナノ秒単位で、100ナノ秒から2ミリ秒までの任意のパルス幅が使用可能となった。この電源を針型電極と接続し、ナノ秒高電圧パルスを印加したところ、またこれまで使っていた装置よりも高い電圧を達成することでき、より効率的な細胞死誘導が可能になると見込まれた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
固形腫瘍以外の細胞へのナノ秒高電圧パルスの作用を解析した結果、好中球細胞外トラップの誘導という新しい知見を得ることができた。また新しい電源装置の導入により、パルス幅が可変で、より高い電圧を達成することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に導入した新しい電源と、それを組み込んだ実験セットアップにより、癌治療のモデル実験と、細胞への作用のメカニズム解析を引き続き実施する。
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Causes of Carryover |
経費の効率的な使用に努めた結果、約11万円の研究費を平成30年度へ繰り越すこととなった。 平成30年度の研究に必要な各種解析のための試薬に充当する。
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