2017 Fiscal Year Research-status Report
リンパ管Na+ポンプによる食塩感受性高血圧症の新規治療法の開発的研究
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16K01370
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Research Institution | Tsukuba International University |
Principal Investigator |
水野 理介 つくば国際大学, 医療保健学部, 教授(移行) (30273080)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 食塩 / リンパ 循環 / 高血圧症 / トランスポーター / 平滑筋 / アンジオテンシンII |
Outline of Annual Research Achievements |
食塩感受性高血圧とは、食塩摂取により惹起される本態性高血圧症である。この病態に神経系(中枢ならびに末梢)、心血管系および腎臓等の臓器が複合的に関わり多様性を示すことが知られている。最近、リンパ循環系もこの食塩感受性高血圧症の病態に重要な役割を果たすことが報告された。我々は、モデル動物(ラット・マウス)を用いて集合リンパ管収縮機能が高食塩負荷によって変化する事を世界に先駆けて発見した。さらに、リンパ管のCl-チャネルやTRP受容体も高食塩負荷によって変調することを当該研究の過程で見出した。本年度計画に沿って得られた結果と新発見は、以下である。結果1.マウス摘出集合リンパ管は、アンジオテンシンIIに対して、低濃度から顕著な収縮反応を示した。一方、動脈に対するアンジオテンシンIIの反応生を検討した結果、著しい部位差(胸部、腹部、腎動脈下部、腸骨)の存在することを確認した。すなわち、アンジオテンシンIIの反応性における脈管系間(動脈-リンパ管)の著しいheterogeneityを明確にできた。結果2. Mas受容体アゴニストであるアンジオテンシン1-7の集合リンパ管に対する作用を検討した。いずれの遮断薬・阻害薬非存在化において、アンジオテンシン1-7は、集合リンパ管の自発性収縮に影響を与えなかった。結果3.集合リンパ管自発性収縮に対する、Cl-の影響を明らかにするために、Cl--HCO3- exchangerとNa+-K+-2Cl- co-transporter(NKCC)の関与を検討した。MOPS溶液下リンパ管自発性収縮のパラメーターは、Krebs溶液下と同様であった。NKCC阻害薬であるfurosemideは、リンパ管自発性収縮の最小径と最大径を有意に増加し(リンパ管拡張)、ejection fractionを有意に減少した(pumping efficiency低下)。しかしながら、収縮頻度には影響を与えなかった。以上の結果からリンパ管自発性収縮の緊張性維持とポンプ機能に対して、NKCCの関与していることを初めて証明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新発見として、集合リンパ管自発性収縮の緊張性維持とポンプ機能調節に対して、NKCCの関与していることを証明した。しかしながら、以下の2点の検討が不十分であった。1)集合リンパ管に対するアンジオテンシンIIとMas受容体の関与の解析において、遮断薬・阻害薬の影響(アンジオテンシン受容体解析、NOやプロスタノイドの関与)、2)高食塩負荷の影響。
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Strategy for Future Research Activity |
集合リンパ管に対するアンジオテンシンIIとMas受容体の関与の解析において、遮断薬・阻害薬の作用検討(ARB、L-NAME、インドメタシン)を行い、隠蔽されていると考えられる作用機序を明らかとする。新発見である、集合リンパ管自発性収縮におけるNKCCの関与に対して、詳細検討を推進する。特に、1)より選択性の高い阻害薬であるbumetamideの作用検討、2)高食塩負荷の影響を検討する。
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