2016 Fiscal Year Research-status Report
皮膚や臓器に貼付できるフレキシブル酸素イメージングフィルム
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16K01372
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
塚田 孝祐 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (00351883)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 酸素センサ / 生体計測 / ウェアラブル |
Outline of Annual Research Achievements |
生体の組織や臓器に直接貼付可能な,フレキシブルなフィルム型の酸素分圧センサを新規に開発することを目的とした.この実現のために,最大感度を引き出す独自の電極パターンを決定し,EL素子の電気的特性を明らかにする.最終的にはマウス皮膚および心臓表面に貼付した実測実験ならびに細胞培養への応用実験から有効性を実証する.この技術の実現は,手術中の組織・臓器酸素モニタや救急医療といった臨床応用のみならず,細胞培養において厳密な酸素濃度管理を要する再生医学をはじめとする基礎医学分野など,様々な応用展開が期待される. 初年度では,有機ELに並行して有機化学発光(ECL)にも着目し,非侵襲且つ酸素を直接測定できるフィルム型酸素センサの開発を目指した.ECLは酸素プローブとなるPd-TCPPを励起する光源として用いられるため,ECLの発光波長はPd-TCPPの吸収波長に合わせる必要があり,青色発光するDPAおよびIr(dfppy)3を材料として用いた.交流電圧の印加によってPd-TCPPを励起する実験から,十分な発光が得られるのはDPAであることが明らかになった.続いて,ECLを用いてPd-TCPPを励起する方式について検討した.従来はPd-TCPPをパルス励起して燐光寿命から酸素分圧を定量する方法が一般的であるが,ECLの発光持続時間が燐光の消光時間よりも長いため,パルス励起は適さないことが明らかになった.そこで,ELCを交流駆動させ,ECLとPd-TCPP発光の位相変化が酸素分圧に依存する性質を利用することで酸素分圧を定量することを試みた結果,0%および20%酸素濃度下において位相差の変化が認められ,以上より酸素分圧測定が可能であることが示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
有機EL型の酸素センサは構造が簡易であるが,電極やEL材料が酸化に弱いデメリットがあった.初年度の研究から,発光材料と酸素センシング材料を別々に開発することにより,劣化に対するデメリットを抑制することが可能になった.さらに,ECL材料および酸素センシング材料共にフレキシブル素材で作製することが可能であるため,将来的な目標には影響しない.また,ECLの場合交流駆動が可能であるため,有機EL型のように短パルス励起する必要がなくなり,電圧を印加する装置も小型化できる利点がある. 酸素センサプローブPd-TCPPは400nmに吸収帯を有するため,その波長帯の発光波長を有する光源が求められるが,DPAを材料に用いることで実現した.さらに,DPAの発光を励起光源としてPd-TCPPを励起した結果,酸素濃度に依存した交流位相シフトが認められ,酸素センサとして機能することを実証することに成功した.
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の研究から,ECLを用いた酸素センサの仕組みは有機EL型センサに比べて構造が複雑になるものの,発光安定性の面で優れることが明らかになった.現時点における課題は,(1)校正実験による精度の検証,(2)フレキシブル素材への応用,(3)生体実計測が挙げられる. まず校正実験では,酸素濃度に依存した位相差シフトを定量し,酸素分圧値に変換して校正を行う.ECLデバイスをガスタイトチャンバーに設置し,チャンバー内の酸素分圧を変化させながらファイバ型酸素センサで測定し,その一方,ECLによって励起されたPd-TCPP発光信号を取得する.ECLとPd-TCPPの発光位相差を定量し,リアルタイムで酸素分圧に変換するシステムを構築する.また,フレキシブル素材としてはPETフィルム等を基板とし,電極素材はITOの他,銀ナノワイヤーやカーボンナノチューブを検討する.ECLの液体部分はゲル化することでフレキシブル化に対応可能である.またはPDMSなど柔軟性が高く微細加工が可能な素材に封止することも検討する. 生体実計測については検討事項(1)の校正実験が終わり次第開始する.提案するデバイスは生体皮膚や臓器に貼付することを前提としているが,液体中でも測定可能である特徴を活かし,例えば培養ディッシュにセンサを設置して細胞培養中の酸素モニタを試行し,広い応用を提案していく.
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Research Products
(5 results)