2017 Fiscal Year Research-status Report
皮膚や臓器に貼付できるフレキシブル酸素イメージングフィルム
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16K01372
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
塚田 孝祐 慶應義塾大学, 理工学部, 准教授 (00351883)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 酸素センサ / 生体計測 / ウェラブル |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は初年度に得られた成果を発展させ,酸素センサのフレキシブル化について重点的に検討した.ガス透過性の高いPolydimethylsiloxane (PDMS)に酸素感受性燐光色素であるPd-meso-tetra (4-carboxyphenyl) porphyrin (Pd-TCPP)を混合することで薄膜酸素センシングフィルム作製した.Pd-TCPPの励起光源として電気化学発光 (Electrochemiluminescence: ECL) による発光および比較としてLED (Light emitting diode)を用いた.発光部のフレキシブル化のために,PDMS薄膜に窪みを設けてECL溶液を封入した.漏れを防ぐために酸素プラズマ処理を施した.センサの電極および基板材料の組み合わせとしてITO/PET, PEDOT:PSS/PET, Graphene/PETを用いた.励起電極に交流電圧を印加し,光源と燐光の位相変化からStern-Volmer式を用いて酸素分圧値を算出した. 各電極材料において歪み負荷を与えた際の抵抗率および発光に大きな変化は認められなかった.しかし,小さな歪みを負荷した際には溶液の漏れが確認されなかったが,大きな歪み負荷をかけた後,歪みがない状態に戻した時にしばしばECL溶液の漏れが確認され,更なる封止の工夫が必要と思われた.LEDを光源として校正実験を行った結果,測定レンジにおいて高精度に酸素分圧を測定することが可能であった.一方,ECLによるPd-TCPPの励起では酸素分圧の変化に対して位相の変化が認められたが,LEDによる励起よりも測定精度は低かった.ECLの消光が燐光の消光速度と同程度であることが考えられ,今後はECLの発光強度や印加電圧パターンの改善を行うことで測定精度を向上させることを目指す.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は有機ELに並行して有機化学発光(ECL)にも着目し,青色発光するDPAおよびIr(dfppy)3を用いて酸素分圧測定が可能であることが示唆された.また酸素センサ薄膜を作製し,センサプローブ色素を励起する電圧パターンおよび信号処理系について検討した. 平成29年度はセンサ材料のフレキシブル化を可能にする素材を検討した.センサの電極および基板材料の組み合わせとしてITO/PET, PEDOT:PSS/PET, Graphene/PETを候補とし,ITO/PETが適していることを明らかにした.歪み負荷試験を行い,生体皮膚を想定した歪みの範囲では電気的特性は安定していたことから,電極の劣化が見られないことを示した.また,発光源として用いるECLを自在なサイズ・形状で発光させるため,ゲル中にECL溶液を含有させた状態で発光させることに成功した. 以上,初年度終了時に検討課題として挙げた電極材料の決定および特性評価を行い,一定の成果を得られたため,おおむね順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度はこれまでの検討から明らかになった問題点を解決し,また最終的にはセンサのプロトタイプを作製し,生体実計測を実施することを目標とする. まず,センサに歪みを負荷した際に発光材料が漏洩する問題を解決する.これには今年度試作したゲル浸透ECLを適用することで改善されると考えられる.ゲル化のメリットは漏洩の防止だけではなく,発光形状を自在にデザイン可能な点にある.発光点を小さくして多数配列することで,酸素分圧イメージングが可能になる.発光強度の低下による計測精度の低下が予想されるため,ゲルサイズ,発光強度,最終的な酸素分圧値の精度確認を併せて行う. 次に,ECLによる励起によって発光するPd-TCPPのリン光を検出する手法を確立する.貼付するセンサにフレキシブルな光散乱フィルムを重畳し,光ファイバによって光検出器まで導光する. 最終的にマウス皮膚および臓器表面に貼付した生体計測を実施する.麻酔下のマウスを剃毛し,気管内挿管を施してベンチレーターによって呼吸を管理する.呼気酸素濃度を変化させ,皮膚および肝臓表面に貼付したセンサによって,組織の酸素分圧変化を検出できるかを明らかにする.
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Research Products
(3 results)