2017 Fiscal Year Research-status Report
ダイナミックファントムによる高密度プローブ拡散光イメージング法の実証実験
Project/Area Number |
16K01373
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
岡田 英史 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (40221840)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 光脳機能イメージング / ファントム / 画像再構成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近赤外光を用いた脳機能イメージングの評価を行うための、新たなダイナミックファントムを開発し、これまでシミュレーションで確認してきた高密度プローブ配置や画像再構成法について実測に基づいた検証を行うことを目的としている。本研究で製作するダイナミックファントムには、表層組織と脳組織において局所的な吸収変化を独立して発生させることで、頭皮血液量変化の影響を軽減する脳機能イメージング法に対する評価を可能とする点、ファントムの全ての要素を固体材料で構成することで、液体材料を用いた従来のファントムと比較して測定の再現性を向上させる点に特長がある。 29年度は、前年度に試作したプロトタイプの実績を踏まえ、最終的な実証実験に用いるダイナミックファントムを製作するための要素技術を確立することを目的とした。具体的には、高密度プローブ配置の実証実験を少数のプローブで行うため、吸収体の位置を変化させることで仮想的なプローブ配置に対する測定結果を取得する方法に関する課題、および実際の頭部組織における光学特性値を模擬した材料でダイナミックファントムを作製する課題である。前者については、前年度に作製したプロトタイプを用いて仮想プローブを用いた吸収体イメージングの実験を行い、仮想プローブを用いた測定でもシミュレーションで得られた理想的な測定結果に相当する画像が得られることを確認した。後者については、無色透明なエポキシ樹脂に散乱粒子と色素を混入することで、任意の散乱係数、吸収係数を有するファントム材料を作製する方法について検討し、散乱係数と吸収係数を設定するための検量線を取得した。このことで、ダイナミックファントムを製作するための要素技術を整備することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度に作製したプロトタイプに対して、最終的に製作するダイナミックファントムでは、1) 少数のプローブによる繰り返し測定によって高密度プローブ配置の測定を模擬するため、自動ステージを用いた吸収体の位置制御を行う、2) ファントムの各層について、対応するヒト頭部組織の光学特性を模擬した材料を用いる、という点が課題となる。前者については、プロトタイプファントムの手動ステージを自動ステージに置き換え、照射プローブと受光プローブを2つずつだけ装着した状態で吸収体を移動し、仮想的に照射プローブと受光プローブを8つずつ配置した測定系、同一の測定領域に対して、仮想的な照射プローブと受光プローブを6つずつ追加することで測定点密度を2倍に向上させた測定系を構成し、吸収体のイメージング実験を行った。高い測定点密度で測定した画像では、吸収体の大きさが位置によって変化する誤差が軽減するという効果が認められた。このことで、ダイナミックファントムによる仮想的なプローブ配置によって、高密度プローブ配置の実証実験が可能であることが確認できた。後者に対しては、エポキシ樹脂に、近赤外域に吸収を有する色素を混入して吸収係数、酸化チタンを混入して散乱係数を調整し、各組織の光学特性を模擬した材料を作製する方法について検討した。吸収係数については、3種類の色素を選定し、分光光度計を用いて600~900 nmの吸収スペクトルおよび吸収係数を調整するための検量線を測定した。散乱係数については、酸化チタンを混入したエポキシ樹脂の反射率と透過率を積分球光学系で測定し、モンテカルロ法で計算したルックアップテーブルから散乱係数に関する分光特性と検量線を作製した。このことで、頭部組織を模擬したダイナミックファントム作製の準備が整い、ほぼ計画通りの進捗が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、29年度までの進捗状況を踏まえ、高密度プローブ配置による光脳機能イメージングの評価を行うためのダイナミックファントムの製作およびダイナミックファントムを用いた高密度プローブ配置と画像再構成に関する実証実験を行う。 実際の光脳機能イメージングでは、高密度プローブ配置は隣接するプローブが物理的に干渉するため、プローブ密度には制約が生じる。ダイナミックファントムを用いる測定ではプローブを少数配置して、吸収体の移動によって仮想的にプローブ密度を向上させるため、より高い密度のプローブ配置に対して、プローブ密度と空間分解能の関係を実測に基づいて評価することが可能となる。この点を活用して、光脳機能イメージングの空間分解能低下の主要因とされる、プローブ密度が低いこと、測定領域が散乱によって広がること、の2点の関係について実測に基づいた検証を行う。さらに、画像再構成における逆問題解法の評価については、空間分解能に加え、3次元的な画像再構成を行うさいの頭皮領域と灰白質領域における吸収変化の分解能について検討を行う。とくに、光脳機能イメージングの画像再構成においては、不良設定問題を解く必要があることから、正則化の方法について様々な提案がなされている。先行研究では、高密度プローブ配置による測定に対して頭皮血液量の影響を軽減し、正確な脳機能画像を再構成する正則化方法の提案なども見られるが、その妥当性は実証されていない。ダイナミックファントムを用いることで、正則化方法や正則化パラメータ設定の妥当性について、実測に基づいた検証を行う。
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