2017 Fiscal Year Research-status Report
生体組織-電子・機械工学系を融合した生体融合化新世代人工心臓システムの開発研究
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16K01375
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
岡本 英治 東海大学, 札幌教養教育センター, 教授 (30240633)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 人工臓器 / 人工心臓 / 軸流型ポンプ / 組織工学 / チタンメッシュ / 拡散 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,大動脈弁位置埋め込みを目的として大動脈弁位置埋め込みを目的としたインペラ後部設置式軸流型補助人工心臓の開発と,新しい人工心臓材料としてのチタンメッシュの応用に関する研究開発を行った. インペラ後部設置式軸流型補助人工心臓は,最大出力10Wの小型モータ後部に外径17.3mmのインペラを装着し血液を駆出するポンプで,外形19.3mm×長さ55mmである.そこで,インペラ外径を17.3mmと一定にし,運動量理論と翼理論を元に,入口角,出口角,ハブ比を変えた24種類のインペラを製作してポンプに実装し,3%グリセリン溶液を用いたin vitro実験を行い,インペラ効率を算出して最適インペラの選択を行った.その結果,羽根枚数4枚,入口角14度,出口角17度,ハブ比0.58,ハブ長さ3.5mmのインペラの流体効率が最大値28%と最も優れていることがわかり,インペラ回転速度12000rpm,ポンプ差圧100mmHgで,最大8.5L/minの血液拍出量を得た.また,擬死後に取り出したヤギ心臓に本ポンプを装着し,大動脈弁位置に装着可能であることを確認した. チタンメッシュの人工心臓の応用では,昨年度の研究で一面を閉じたチタンメッシュの組織誘導に制限を受けることを確認した.本年はその原因を究明するとともに,拡散方程式を用い一面が閉じたチタンメッシュ内に生体組織が健常に存在できる範囲を推定した.その結果,組織誘導の制限は線維芽細胞の侵入抑制ではなく,その後の血管形成の抑制に原因があること,拡散方程式を解くことより,末梢血から酸素を供給される部位で一面を閉じたチタンメッシュ内誘導組織が健常に存在できるのはチタンメッシュ周辺から510μm以内,動脈血から酸素を供給される組織中で800μm以内であることが判明した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
昨年度は前部インペラ設置方式と後部インペラ設置方式の二つの大動脈弁位置埋込み軸流型補助人工心臓を開発していたが,医学側立場の助言を受け,本年度は後部インペラ設置式軸流型補助人工心臓の開発に絞り研究を進めた.特に後部インペラ設置方式軸流型補助人工心臓のポンプ性能の向上のためインペラ設計に重きを置き研究開発を進めた.インペラ性能の向上は溶血の低下と直接的に関係するため最適インペラの研究は必須である.本研究の軸流型補助人工心臓のようにインペラとモータを分離する方式は,CFDを使わずとも流体機械分野で一般的な運動量理論と翼理論でインペラ設計が可能であることが特徴である.その研究の結果,in vitro実験の結果,回転速度12000rpmでポンプ差圧100mmHgで最大流量8.5L/分の血液拍出量を得た.この後部インペラ設置式軸流型補助人工心臓の大きさは欧米で臨床使用されているJarvik Pediatricと比較し,長さはほぼ同じで外径はJarvik Pediatoricより4.3mm大きいが,Jarvik Pediatricの2倍以上のポンプ拍出流量を得ることができ,当初の予想以上に非常に優れた軸流型補助人工心臓を開発できたと評価している. 細胞足場材料のチタンメッシュを人工心臓に応用する場合,通常の細胞足場材料を応用した組織工学的治療と異なり,チタンメッシュの一面が塞がれた状態で用いることになる.そこで本研究では一面を塞いだチタンメッシュの組織誘導特性を実験的に解明すると同時に拡散方程式による理論的裏付けも行った.その結果,一面を塞いだチタンメッシュを用いる場合,チタンメッシュ内誘導組織が健常に生存できるチタンメッシュ厚みを一般化し説明することができたことは,今後のチタンメッシュの人工心臓への応用に関する重要な指針を提示できたものと考え,順調な研究の進捗と判断している.
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Strategy for Future Research Activity |
大動脈弁位置埋め込み型人工心臓では,非常にポンプ性能に優れた軸流型補助人工心臓を開発できたものと考えている.動物実験においてインペラ後部設置式軸流型補助人工心臓を大動脈弁位置に設置し検証した結果,設置可能な大きさではあるが,解剖学的にさらに小型化されることが望ましい,一方,本年度のインペラ最適設計の結果,当初は部分補助に必要なポンプ性能を求め研究を推進していたが,体格の小さい患者に対する前循環補助も実現可能な性能を有するところまで研究を進めることができた.したがって今後の研究方針として,この補助人工心臓をさらに小型化しカテーテル式に大動脈弁位置設置を目指すカテーテル型補助人工心臓を目指す方向性と,現在の形状を維持あるいは多少小型化を図るとともにJarvik Pediatricと同様の位置づけの補助人工心臓として開発を進めていく方向性がある.そこで本申請では,今後のニーズが増え国内での研究が行われていない前者の方向性で研究開発を進めていくつもりである. 本研究ではチタンメッシュの人工心臓への応用例として体内埋込み人工心臓のモニター用に人体通信を用いた経皮的情報通信システム用の組織誘導通院電極としての応用を考えている.チタンメッシュ電極の電極インピーダンスが非常に小さいことはすでに本研究で検証済みで有り,本年度の研究により誘導組織が正常に生存できるチタンメッシュ電極厚みを確定することができた.今後は,通信電極として使用した場合の通信電流の誘導組織への影響について検証が必要と考えている.
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Causes of Carryover |
次年度使用額は17985円であるので,ほぼ計画通りに予算を執行したと考えている.
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Research Products
(10 results)