2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K01383
|
Research Institution | Osaka Institute of Technology |
Principal Investigator |
藤里 俊哉 大阪工業大学, 工学部, 教授 (60270732)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 組織工学 / 培養骨格筋 / アクチュエータ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、コラーゲンゲルに包埋した樹立筋芽細胞の伸張培養によって作製した三次元培養骨格筋を、工学的に応用することを目的としている。特に、これまでに得ている1,000μN弱の収縮力を有する培養骨格筋を用いたバイオアクチュエータを、実用モジュールにまで昇華させることを目的としている。このため、培養骨格筋の強力化(課題1)、伸縮運動機構の導入(課題2)、ならびに、3ヶ月間の駆動時間を目標とした体外培養機構の開発(課題3)について取り組み、そしてクリアする。 平成28年度は、まず、培養骨格筋の強力化について取り組んだ。機械刺激ならびに温熱刺激、そしてビタミンCなどの薬物刺激を与えて培養することで、培養骨格筋の強力化を図った。筋芽細胞としては、マウス筋芽細胞由来樹立株であり、筋管細胞への分化能を有するC2C12細胞を用いた。その結果、自動伸展機構を有する機械刺激装置やビタミンCを加えることで、収縮力の増大が観察された。温熱刺激については、一時的に収縮力が減弱するものの、通常温度に戻して培養することで急激に回復することを見出した。 また、コラーゲンスポンジを用いた培養骨格筋の大型化にも取り組んだ。その結果、血管構造を有するスポンジを足場として培養骨格筋を作製することで、大型化の達成が示唆されたが、徐々にスポンジが収縮し、血管構造が破壊されていくことによって深部の細胞死が観察された(論文投稿中)。 いずれも、さらなる改良および最適化を図っていく計画である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は、課題1について主として検討した。 まず、培養骨格筋の強力化については、機械刺激の最適化、温熱刺激による影響、そしてビタミンC濃度の影響について、より詳細に検討した。機械刺激については、循環培養装置を組み込んだ自動伸展刺激装置を研究協力者の筒井が開発し、その収縮力への影響を検討したところ、適度は機械刺激を与えることで培養骨格筋の収縮力は増大するが、切断されることもあった。そのため、より最適な刺激条件の検索が必要であると示唆された。温熱刺激については、前述の通り、また、ビタミンC濃度については、添加によって収縮力は増大したものの、濃度が高い場合はpH変化などにより、減少することがわかった。 コラーゲンスポンジについては、前述のように徐々にスポンジが収縮し、血管構造が破壊されていくことが課題であることが判明したため、収縮運動をするための適度な柔軟性を持ちつつ、栄養の供給路を確保するため、化学架橋などでスポンジの構造を維持させる必要性について検討する必要があると思われた。 現在、これらについて、一部は既に論文投稿済み、また、一部は論文投稿準備中である。 以上のことから、平成28年度の達成度は順調であると自己評価する。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、課題1の改良ならびに最適化について引き続き検討するほか、課題2についても検討を進める。 課題1については、コラーゲンスポンジの改良を引き続き行い、培養骨格筋の長大化を進める。同時に、電気刺激培養や繰り返し伸展刺激、温熱刺激、薬物刺激などを行い、成熟の促進ならびに高度化を進める。 課題2については、研究協力者の筒井らと共に、これまでに作成した培養骨格筋組織を組み込んだマイクロデバイスの改良を行う。生体骨格筋でも自ら弛緩して伸びることはなく、収縮すると関節が曲がる屈筋と、収縮すると関節が伸びる伸筋とが拮抗的に働くことで、関節が曲げ伸ばしされる。したがって、培養筋2本を互い違いに駆動することで、効果的なアクチュエータ駆動を行うことができる。一つの培養容器内に培養骨格筋2本を組み込み、かつ各筋を個別に駆動し得る電気刺激システムを構築しつつあり、その完成を図る。
|
Causes of Carryover |
課題1について、スポンジ構造の完成を図る予定であったが、長期培養後の収縮による血管構造破壊の解決を次年度に持ち越すこととなり、そのための消耗品の購入を次年度に繰り越すこととした。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
課題1について、スポンジ構造の完成を図るため、培養用コラーゲンゲル溶液などの消耗品購入に充てる。
|
Research Products
(5 results)