2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K01413
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
山崎 文靖 高知大学, 医学部附属病院, 特任教授 (10243841)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
弘田 隆省 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 助教 (10437741)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 低侵襲治療システム / 起立性低血圧 / 空圧パンツ / 血圧自動制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでわれわれは、重度起立性低血圧治療のため、硬膜外カテーテルを用いた人工圧反射装置を開発してきが、侵襲的であることから実用化が困難であった。そこで、空圧ショックパンツを用いて非侵襲的に下半身を圧迫する装置を考案し、プロトタイプを開発した。しかし、現行のパンツは空気嚢が大きく、加圧時の座位・立位時に快適な圧迫ができない。また、より少量のエア供給量で圧迫できる形状と圧迫部位がわかれば、空圧制御装置を小型化することが可能である。今回、血圧低下治療を効率的に行うことが可能な小型空気嚢を備えた空圧パンツを開発するため、3年間の実験的臨床研究により、1) 圧迫部位、空気嚢の形状の違いによる血圧への効果の検討、2) 空圧制御機との最適化と起立性低血圧の治療効果の評価、を到達目標とする。 平成28年度は、以下を行った。 ①下肢と腹部圧迫による血圧への効果の違いの検討:起立性低血圧を有する神経疾患患者に、下肢、腹部それぞれの空圧パンツにランダムに圧を入力し、パンツ圧から血圧までの伝達関数・ステップ応答関数を算出し比較した。下肢のみの場合(最大圧100mmHg)10秒以内に定常ゲインの90%に達し、定常ゲインは0.04mmHg/mmHgであった。腹部のみ(最大圧50mmHg)では、定常ゲインは0.20mmHg/mmHg、下肢、腹部同時での定常ゲインは0.3mmHgであった。よって、両者同時の加圧がより効果的であると考えられた。 ②空気嚢の形状の違いによる血圧への効果の検討:空気嚢の形状を小型化する。体表面積の約30%ものを設計・製作し、実際の低血圧治療器での起立制定血圧に対する効果を検討した。30%の空気嚢を有する空圧パンツでの制御(6例)では、起立時間を97±60秒から300秒まで延長させることが可能であった。また、装着感も良好であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
体表面積に対するより小さい空気嚢を有する空圧パンツの設計・製作が遅れているが、十分な症例数でのデータが蓄積されつつある。今回は実際の制御に用い、その効果と装着感を検討したが、良好な成果であった。今後、症例数を増やすとともに、より小さな空圧パンツでの検討をする必要がある。また、エア量の節約のため下肢と腹部の制御を違えた方法も考える必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
H28年度までに設計・作成した、体表面積の30%を空気嚢が加圧する空圧パンツを用いて同様の検討をし、症例を増やすとともに、より小さいもの、また大きい従来のものとの比較をする。起立性低血圧を有する神経疾患患者に、臥位でそれぞれの大きさの空圧パンツを装着し、最大圧60mmHgでランダムに圧を入力する。ランダムパンツ圧から血圧までの伝達関数を記述し、ステップ応答関数を算出する。それぞれのパンツ装着時のステップ応答関数を用いて、圧迫効率を定量的に評価する。 対象患者数は起立性低血圧を有する神経疾患患者30例を目標とする。 さらに、小型空気嚢を装備した空圧パンツを用いて、人工圧受容器反射システムを再設計する。サーボコントローラの動作原理としては,比例・積分補償型のネガティブフィードバックを採用する。刺激-血圧応答関数の平均値H2(f)は上記で記述したもののゲインファクターを変更して用いる。ステップ状の血圧低下に対する血圧サーボシステムの振る舞いを比例補償係数Kp=0, 1, 2,積分補償係数Ki=0, 0.01, 0.05, 0.1, 0.2の組み合わせでシュミレーションし,血圧サーボシステムがもっとも安定的かつ迅速に血圧低下を代償する係数を決定する。完成したシステムを用いて起立負荷検査(カテコラミン等液性因子の解析を含む)を行いその有効性を確認する。 分担研究者として弘田隆省医師(循環器内科学)、連携協力者として佐藤隆幸医師(循環制御学)が制御システム設計に協力し、森田ゆかり医師(神経内科)、清家真人医師(いずみの病院、脳神経外科)、豊永晋一医師(土佐市民病院、脳神経外科)が起立性低血圧を有する神経疾患患者のフォローに協力する。また、国内で唯一耐Gスーツを製造している藤倉航装技術部の斎藤智幸が空圧パンツの設計に協力する。
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Causes of Carryover |
解析ソフトウェアの購入を遅らせたことと、研究補助員の雇用を遅らせたことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H28年度の研究費とあわせ、消耗品費として、空圧パンツ改変費用、連続血圧測定装置改修費用、データ保存用メディアを計上する。人件費・謝金として、前年と同様、研究補助員を1名確保するための経費を計上する。また、調査・研究旅費を計上する。
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