2016 Fiscal Year Research-status Report
脳蘇生治療の高度化のための高精度脳生理状態自動管理・管理支援システムの開発
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16K01420
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
檮木 智彦 東海大学, 工学部, 講師 (70431955)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 脳血流 / 脳圧 / モデル / 脳蘇生 / 自動制御 / 集中治療 / 脳温 / 脳低温療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、これまでに構築してきた脳血液循環モデルの検証と高精度化のための改良、及び脳圧変動を説明するために必須の脳組織・脊髄液循環モデルの構築を主に行った。 これまで構築してきた脳血液循環モデルは、内頚動脈・椎骨動脈から頚静脈に至るまでの脳血液循環を、血流路を左右の大脳半球、前・中・後の各大脳動脈支配領域、および灰白質と白質の違いに従って12分割し、さらに血管の解剖学的構造、血液の粘性、灌流圧とICPによる血流量自己調節機能を考慮して表現可能なものである。 本年度は、まず右中大脳動脈が閉塞した状況におけるモデル解析を行い、これまで理論的に考えられている血液循環状態との比較から、少なくともこの解析結果が定性的に妥当であることを確認した。これについては、平成28年8月にオークランド(フロリダ州)で開催されたIEEE EMBC'2016で発表済みである。また、各大脳動脈とWillisの動脈輪の直径と長さを実際の患者のデータに合わせた場合の解析結果と、実際にその患者計測した左右の内頚動脈と椎骨動脈、及び各大脳動脈の血流量を比較し、先行モデルよりも高精度であることを確認した。現在は、灌流圧とICPによる血流量自己調節機能部分の修正と検証による高精度化を進めている。 一方、脳組織を上記の脳血液循環モデルに合わせて12個のコンパートメントに分割し、さらに脳脊髄液コンパートメントを加えた合計13コンパートメントからなる脳組織・脊髄液循環モデルの構築も行った。このモデルでは、静水圧と膠質浸透圧によるコンパートメント間水分移動流量、各脳組織コンパートメントの膠質濃度変化、脈絡叢とくも膜顆粒における脳脊髄液の産生・吸収流量、各コンパートメントの体積変化とそれに伴う静水圧変化が解析可能である。これについては、平成29年度に国際会議等で発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究計画では、これまでに構築した脳血液循環モデルに脳脊髄液循環機能と温度に対する血管抵抗調節機能などを加えて、脳温、脳圧、脳血流量の相互関係を考慮した脳生理状態統合モデルを平成28 年度中に構築することになっていたが、実際には脳血液循環モデルの検証と高精度化から研究を実施したので、例えば脳温に対する血管抵抗調節機能などは未着手である。 しかしながら、平成29年4月から、脳組織・脊髄液循環モデルの改良・高精度化に加えて、脳組織内熱移動モデルの構築に着手し始めている。これらの改良・構築は当然、今後のモデル統合を見据えたものであり、次年度中の完成が見込まれるので、本研究課題の目的である、個人の特性を脳生理状態統合モデルに反映させるシステム同定方法の確立と、脳生理状態自動制御システムの設計は、研究期間を半年程度オーバーして達成できると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度に、脳組織・脊髄液循環モデルの改良・高精度化と、脳組織内熱移動モデルの構築を行う。また、平成30年度に脳組織内熱移動モデルの改良・高精度化と、脳組織内代謝調節モデルの構築を行い、年度末にそれまで構築してきたモデルの統合を行う。 本研究課題の最終目的である個人の特性を脳生理状態統合モデルに反映させるシステム同定方法の確立と、脳生理状態自動制御システムの設計は、平成31年度に入って本格化させる予定であるが、同年度半ばにはひととおりの達成を見込んでいる。
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Causes of Carryover |
当初は、研究室の人員不足を補うために、モデル解析のコンピュータプログラム作成のための補助員を採用する予定でいたが、今年度は指導学生が予想より多かったために補助員の採用が不要になり、謝金の支払いが生じなかったので、11万円あまりの次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現在、研究を脳血液循環モデルの検証・高精度化から開始したので、半年程度の遅れが生じている。これを補うために、平成29年度ではより多くの人員を活用して研究を遂行する予定である。今年度生じた次年度使用額も、その一環としてコンピュータプログラム作成補助員の謝金などに充当する。
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