2017 Fiscal Year Research-status Report
脳蘇生治療の高度化のための高精度脳生理状態自動管理・管理支援システムの開発
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16K01420
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
檮木 智彦 東海大学, 工学部, 講師 (70431955)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 脳血液循環 / 脳組織水分移動 / 脳組織熱移動 / モデル / 治療システム / 脳生理状態 / 自動制御 / 脳蘇生 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで構築した脳血液循環モデルは、血流制限要素として血管抵抗のみを考慮し、血流路をWillis動脈輪の各セグメント、左右大脳半球、前・中・後の各大脳動脈支配領域、および灰白質と白質によって分割したものであった。35個の節点において立式したので、35元非線形連立方程式として表現している。しかし、血管の弾性や質量を考慮しなければ、今後、動脈硬化や動脈瘤などの影響を評価できないので、血流路の分割はそのままに、血管の弾性要素と慣性要素を追加し、191次元非線形連立微分方程式を得た。なお、血管走行の解剖学的構造や灌流圧と頭蓋内圧による自己調節機能はこれまでどおり考慮している。これについては、ICBES Paris 2018(平成30年3月、パリ)で発表した。 また、平成28年度に構築した脳組織内水分移動モデル(ICBB 2017、平成29年9月、オッフェンブルクにて発表)において、脳脊髄液コンパートメントを脳室コンパートメントとクモ膜下腔コンパートメントに分割し、さらに頭蓋内容積の不変性を考慮して44次元非線形連立微分方程式を得る改良を行った。これにより、脳組織内の水分移動がより精確に表現可能になり、脳圧増減シミュレーションの信頼性が向上した。この成果は、ICBCBBE Barcelona 2018(平成30年8月)にて発表する予定である。 さらに、脳組織生理状態の表現に欠かせない要素として脳組織内熱移動モデルの構築も行った。このモデルは、上述の脳組織内水分移動モデルのコンパートメントに脳静脈洞、頭蓋骨、頭皮を加えた計17コンパートメントからなるモデルであり、代謝産熱、温度差による熱伝導、及び水分移動による熱対流を考慮している。脳組織熱移動モデルは各種の先行モデルがあるが、本モデルは上述のモデルと同様に17次元非線形連立微分方程式によるものであり、将来の統合が容易である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究計画では、これまでに構築した脳血液循環モデルに脳組織水分移動機能と温度に対する血管抵抗調節機能などを加えて、脳温、脳圧、脳血流量の相互関係を考慮した脳生理状態統合モデルを平成28 年度中に構築し、平成29年度には脳生理状態統合モデルの解析と検証を行うことになっていたが、平成28年度に脳血液循環モデルの高度化を図ったことから、約1年程度の遅れが生じている。ずなわち、平成29年度に脳血液循環モデルの改良、脳組織水分移動の改良、及び脳組織熱移動の構築を行ったことから、平成30年度にこれらを統合して脳生理状態統合モデルを構築し、解析・検証を行う予定である。平成30年度には、同時に脳組織代謝モデルも新たに構築することにしたので、本研究の終了後になると思うが、このモデルの統合により、さらに実態を反映した脳生理状態モデルの構築が期待できる。 一方、平成30年度には脳生理状態自動制御システムの設計を計画していたが、脳生理状態統合モデルの完成が遅れたことにより、平成30年度は要素となる脳組織熱移動自動制御システムの設計を行う予定である。また、同じく平成30年度には個人差を考慮するための脳生理状態に関するシステム同定方法の確立を行う予定であったが、やはり脳生理状態統合モデルの完成が遅れたことにより、この課題は平成31年以降の課題にせざるを得ない。 以上から、本研究は研究の進度に伴い新たな課題の出現と対応により1年程度の遅れとなっているが、取り組んだ課題は順調にクリアしているので、必ず達成できると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度に、これまで構築した脳血液循環モデルと脳組織水分移動モデルの統合、脳血液循環モデルと脳組織熱移動モデルの統合を行う。そして、両者の統合から脳生理状態モデルの完成を図る。また、脳生理状態モデルへの組み込む脳組織代謝モデルの構築を行い、平成31年度以降の研究環境を整える。 一方、平成30年度には、同時に、脳組織熱移動に関して自動制御システムの設計を行い、平成31年度以降の脳生理状態自動制御システムの設計の前段階とする。さらに、平成31年度以降に計画がずれた脳生理状態に関するシステム同定方法の確立について、余裕があれば予備的な検討を平成30年度から進めていきたい。これらは、平成31年度の終了時までには終了する見込みである。
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Causes of Carryover |
平成28年度と平静29年度は、研究室の人員不足を補うために、モデル解析のコンピュータプログラム作成のための補助員を採用する予定でいたが、両年度とも指導学生が予想より多かったために補助員の採用が不要になり、謝金の支払いが生じなかったので、累計して41万円あまりの次年度使用額が生じた。平成30年度には、平成29年度の成果を発表するために当初より数多い国内外の学会発表と論文執筆を計画している。特に、平成30年度から共同研究者となる元大学院生が全国各地に就職したので、学会参加のための旅費はこれまでより高額になる。したがって、次年度使用額は、この旅費に加えて学会参加費、論文投稿料などに充当する予定である。
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