2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K01423
|
Research Institution | Toin University of Yokohama |
Principal Investigator |
徳岡 由一 桐蔭横浜大学, 医用工学部, 教授(移行) (30339907)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
蓮沼 裕也 桐蔭横浜大学, 医用工学部, 助教 (70643013)
池上 和志 桐蔭横浜大学, 医用工学部, 准教授(移行) (30375414)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 黄色ブドウ球菌 / Staphylococcus aureus / 発育抑制 / LED白色光 / 連続光 / パルス光 / Staphyloxanthin |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、申請者が偶然見出した LED白色光照射によって黄色ブドウ球菌 (Staphylococcus aureus、以下 S. aureus)が死滅するという現象について、その細菌発育抑制(PDI)効果の機序を明らかにし、実用化に向けた基礎的知見を得ることにある。 平成28年度の研究結果から、白色LED光の照射エネルギー量の増加に伴いS. aureusに対するPDI効果の増加が認められた。さらに、同一照射エネルギーで比較した場合、PDI効果は連続光よりパルス光で高くなること、並びにポルフィリン系化合物や還元性物質を含む培地ではPDI効果は著しく低下することから、白色LEDによるPDI効果は、S. aureusが産生するカロテノイド系化合物の光増感作用による活性酸素種の生成に起因すると推察した。これらの成果は、現在、学術論文として投稿中(Photomedicine and Laser Surgery)である。平成29年度は、カロテノイド系化合物に注目し、遺伝学的および光化学的手法を用いて、PDI効果とカロテノイド系化合物との関連について検討を進めた。その結果、PDI効果とカロテノイド系化合物とは関連性が高いことが示唆された。さらに、光照射後の細胞の状態を調べ、PDI効果の作用機序についても合わせて検討した。その結果、PDI効果は細菌の細胞分裂に関連する遺伝子を標的に作用していることが示唆された。この結果は、第29回日本臨床微生物学会総会・学術集会、第91回日本細菌学会等にて報告した。さらには、将来的に臨床応用を視野に入れた光源装置の改良にも着手した。すなわち、白色LED光源に用いる波長フィルタの選定、パルス光照射制御の効率化のためのタイマー装置の作製および市販LED光源を用いた照射装置の開発についても検討を開始した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、まず、S. aureusが産生するカロテノイド系化合物合成遺伝子の発現解析のための実験系の確立を行った。その結果、カロテノイド系化合物合成酵素遺伝子であるcrtMの発現量を種々の培養条件で確認した。さらに、カロテノイド系化合物産生量が低下する嫌気培養株では、白色LEDによるPDI効果は低下することを明らかにした。一方、外因性カロテノイド系化合物と共培養した細菌細胞のPDI効果についても検討し、フコキサンチン20nM添加系では高いPDI効果が認められたものの、200nM添加系では逆に低下した。この結果から、抗酸化作用を有するカロテノイド系化合物は、条件によって活性酸素種を生成することが示唆された。さらには、光照射された細菌細胞は増殖の誘導期時間が延長することを見出した。したがって、光照射に伴い生成した活性酸素種は細菌の細胞分裂に関連する遺伝子を標的に作用していると考えられる。 次に、白色LEDから青色光を効率的に抽出あるいは削除するための光学フィルタの選定を行った。その結果、いくつかの光学フィルタで白色LEDの青色光のみを選択的に抽出およびカットできることがわかった。これらフィルタを用いて、PDI効果を誘導する至適波長を明らかにしたい。さらに、PDI効果に有用なパルス光照射システムの改良を行った。従来のパルス光照射システムでは、パソコンによるマクロプログラムにより照射パルスを制御しているが、長時間の測定では効率的とはいえない。そこで、新たな組込型タイマーの使用の可不可について検討を開始した。さらには、これまで用いてきた白色LED光源は太陽電池用に開発されたものであり、高価(数十万円)であった。そこで、代替品として、汎用性の高い市販の白色LED光源を用いて、その照射エネルギー量および面分布の調査を開始した。既に、いくつかのLED光源を入手済みである。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成29年度に確立したカロテノイド系化合物合成遺伝子の発現解析のための実験系を用いて、平成30年度は、臨床菌株および種々の培養条件によるカロテノイド系化合物合成酵素遺伝子量を測定すると伴に、白色LEDによるPDI効果との相関について検討する。さらに、培養細胞から、カロテノイド系化合物の主成分であるStaphyloxanthinを高効率かつ高純度で抽出し、それらの光増感作用について検討する。特に、活性酸素種の生成の有無だけでなく、生成される活性酸素種の同定も合わせて検討する。また、Staphyloxanthinだけでなく、その代謝中間体における光増感作用についても明らかにしていく予定である。さらには、PDI効果の作用機序の解明についても、遺伝学的手法等を利用し、引き続き検討する予定である。また、照射実験をより効率的に行えるシステムを構築し、臨床応用可能なLED照射システムへ発展できるように研究を進める。
|
Research Products
(8 results)