2017 Fiscal Year Research-status Report
遠心人工重力を用いて、微小重力環境によるラットの動作・神経機構の変化を防止する
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16K01451
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
太治野 純一 京都大学, 医学研究科, 研究員 (00755697)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 重力生理学 / 遠心人工重力 / ラット / 歩行 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在、高重力介入がラットの歩行動作に与える影響を介入強度別に調査中です。 ラットを尾部懸垂によって後肢免荷することで擬似的な微小重力環境に置くと、その歩行が変化し、膝・足関節を伸展したまま歩行する現象(伸び上がり歩行)が見られます。これらを防止するため免荷期間中に遠心人工重力発生器を用いた高重力介入を実施し、さらに介入重力の強度を3段階に分けて実験をおこないました。 無介入群(高重力介入なし)に比較して2G群(通常重力の2倍荷重を1時間/日)・1.5G群(同1.5倍80分/日)では立脚中期の膝・足関節角度が2週間後には有意に小さく(正常群に近く)、4週間後には正常群との有意差が認められませんでした。これに対し2.5G群(同2.5倍48分/日)では2週後・4週後ともに膝・足関節角度が正常群より有意に大きく、伸び上がり歩行を抑制する効果は認められませんでした。また、後肢の伸展に伴って拡大する股関節の床面からの高さ(中趾臀間距離)も同様の傾向を示し、立脚相/遊脚相比も正常群の0.73付近に対して無介入群・2.5G群では優位に高く(0.81付近)、2G群・1.5G群では有意差が認められませんでした。 これらの結果から、遠心重力介入は微小重力環境によるラットの歩行の変化を抑制できることが明らかとなりました。ただしその効果は介入重力の強度に依存し、至適強度外では十分な効果を発揮できない可能性も示唆されました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験スケジュールは概ね順調に進行しており、歩行動作と並行して学習行動データ・脳組織標本を採取中です。現在、介入強度ごとの歩行データを解析しており、同時に行動評価・脳神経組織のパイロットデータ解析も開始しています。行動評価・神経組織の免疫組織化学(免疫染色)の方法も確立されつつあり、歩行データ解析の目処がつき次第、行動評価に移る予定です。
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Strategy for Future Research Activity |
実験データの蓄積は概ねスケジュール通りに進行しています。現在、歩行データの解析をおこなっており、一旦ここまでの経過を論文としてまとめる予定です。これらと並行して行動評価・組織評価をおこなってゆきます。また、小動物の3次元動作解析はこの手法自体に新規性があるため、学会発表・論文などを通じて発信してゆきます。
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Causes of Carryover |
(理由) NOR (Novel Object Recognition:新奇物体認識)試験用の機器について、当初は実験機器メーカーのセット機器を購入する予定であったものを汎用品の組み合わせで補ったことで、廉価に抑えることができた。また実験試薬および手法の見直し、なかでも、ラット海馬の免疫組織化学評価で用いる染色法を、抗体の消費量が少ないものに変更したことで消耗品額を抑えることができた。 (使用計画) 引き続き、海馬のマーキング試薬(抗原)の購入、および論文投稿に関連する費用に充てる予定。
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Research Products
(5 results)