2016 Fiscal Year Research-status Report
異常血管に着目した筋筋膜性疼痛の発痛機序解明と治療への応用
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16K01462
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
渡辺 正哉 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 研究員 (90762633)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
植田 高史 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (90244540)
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Project Period (FY) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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Keywords | VEGF / myofacial pain syndrome / propranolol / VEGF R1 (Flt-1) / soluble VEGF R1 (s Flt1) / TRPV1 / Ultrasonic examination |
Outline of Annual Research Achievements |
1)我々は健康なボランティアを使ってmyofacial pain syndrome (MPS)が健康と考えている人の中にも蔓延していること、そして、潜在的MPS有症者においてもMPS特有の異常血管がすでに発現していることを明らかにした。 具体的には、健康なボランティア対象に、それぞれの下腿三頭筋部についてMPS診断基準に従い発症頻度の調査を行った。ほぼ全員のボランティアにおいてtaut band(筋硬結)およびtenderness(圧痛)がみられ、潜在的MPS有症者が多いことがわかった。調査対象者に対してパルスドプラエコー検査によるPI (pulse index) 値を計測したところ潜在的MPS有症群においても活動性MPS有症群と同程度の低いPI値が計測され、無症状群における計測値とは統計学的に有意差が認められた。 2)次にMPS発症のメカニズムを探る基礎的な実験に着手した。VEGFは血管新生と関連深い分子でその候補分子である。我々はVEGFをマウスに投与しMPSの症状が模倣されるかを調べたところ、VEGFは急性期ではその単独投与で疼痛過敏を惹起するとともに局所血流増加をもたらし、さらにVEGF投与マウスではその部位の筋硬度(stiffness)が上昇していた。 具体的には、動物の下腿三頭筋にVEGFを投与することで疼痛モデルを作出した。動物は1日後より疼痛行動を示し、投与2日後に下腿部には充血がみられ、エコー検査を試みたところVEGF投与マウス下腿部には血流増加像が観察された。一方、MPSの症状のひとつに筋硬結がある。興味深いことに、VEGF投与マウスにおいて生理食塩水投与動物と比較し有意にstiffnessが上昇していることがわかった。 3)疼痛過敏の発症についてはVEGFが直接神経に作用している可能性があり、現在、後根神経節を摘出し、qPCRや免疫染色により調べている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1)我々は、健康と考えているボランティア(n=28、20.5歳±1.64)を対象に、それぞれの下腿三頭筋部(n=56)においてMPS診断基準に従いMPSの発症頻度の調査を行った。ほぼ全員のボランティアにおいてtaut bandがみられ、約68%にtendernessがみられた。その中で、painful limitは約14%にみられ、twitch responseは1例もなかった。Gerwinらは、MPS診断においてtaut bandおよびtendernessの発症頻度は高いと報告(Gerwin et al. Pain, 1997)していることから、調査において、taut band及びtendernessがみられたグループを潜在的なMPS有症者と考え分類した。そして、この潜在性有症者群が明らかな運動制限をきたす活動性有症者群とエコー検査において測定値の違いがあるのかどうかを確かめるため、異常血管との逆相関が高いとされるパルスドプラー検査におけるPI 値の計測をおこなった。その結果、潜在性有症者群においても活動性有症者群と同様に異常血管の存在を示唆する結果を得ることができた。 2)異常血管の出現がMPSの発症に大きく関わっているかもしれない。我々は血管新生と関連深いVEGFに着目した。興味深いことに、VEGFはその単独投与でも健常マウスに疼痛過敏をもたらすことが明らかとなった。またVEGF投与マウスではエコー検査によりその下腿部に血流増加像が観察された。一方、この動物において筋硬度(stiffness)を計測した。興味深いことに、VEGF投与マウスにおいて生理食塩水投与動物と比較し有意に筋stiffnessが上昇しているという所見を得た。こうしたMPSの一連の症状をこのモデル動物が再現していることから、今後の基礎的実験に活用できると考え、当初の研究計画以上に進展しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
異常血管と痛みとの関係についてはいくつかの報告があり、血管新生には癌組織と同様VEGFが関わることが指摘されているが、現在のところ血管と神経とのクロストークに直接関わる因子は同定されていない。今後、定量PCR、in situハイブリダイゼーション、Western bolt、免疫組織染色を行い、VEGFそのもの、VEGF R1 (Flt-1)、soluble VEGF R1 (sFlt-1)等の神経節、筋、筋膜組織における発現を調べ検索したい。一方、加齢性黄斑変性症において、VEGFによる異常血管新生が抗VEGF薬で改善することがわかっている。さらに、新生児血管腫においてpropranolol(β遮断剤)によって改善することが知られており、すでにその治験がおこなわれているが、その効果メカニズムについてはわかっていない。これらの知見から、VEGF投与による疼痛モデル動物の疼痛回避行動が抗VEGF中和抗体、あるいは、propranolol投与で血管縮小と疼痛緩和に効果を示すのではないかと考えており、筋膜疼痛の発痛メカニズムの解明とともにその抑制メカニズムについての解明を目指している。
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Causes of Carryover |
中途の採択だったため、当初予定の研究を既存の類似したテーマの研究費にて行ったため。またパルスドップラーエコーなどの検査についても、簡易タイプの機器の購入を検討していたが、機種選定に時間がなく、借用により実施したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度の後半から平成29年5月にかけて、簡易タイプの検査機器のデモ機を試用した。その結果、この機器が我々の研究に不可欠で本研究目的を十分に達成できることができると判断された。次年度研究費でこの機器を購入する予定である。
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Research Products
(3 results)