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2017 Fiscal Year Research-status Report

異常血管に着目した筋筋膜性疼痛の発痛機序解明と治療への応用

Research Project

Project/Area Number 16K01462
Research InstitutionNagoya City University

Principal Investigator

渡辺 正哉  名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 研究員 (90762633)

Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) 植田 高史  名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (90244540)
Project Period (FY) 2016-10-21 – 2019-03-31
Keywordsmyofacial pain syndrome / VEGF / VEGFR1 (Flt-1) / VEGFR2 (Flk-1) / TRPV1 / neovascularization / ultrasound examination / Elite runner
Outline of Annual Research Achievements

1)我々は,大学エリート長距離ランナーを対象にmyofacial pain syndrome (MPS)の発生頻度を調査した.40名のエリートランナーを精査したところ,その83%にMPSが発症しており,そのうち約30%にMPS特有の異常血管が発現していることを明らかにした。異常血管の発現部位は、健康なボランティアとは異なり下腿三頭筋部ではなく長指屈筋とヒラメ筋の間の深筋膜であった.
2)我々は動物の下腿三頭筋にVEGFを投与することで疼痛モデルを作出に成功した.さらに,VEGFをマウス下腿部ヒラメ筋深筋膜下に投与しエリート長距離ランナーに発症するMPSの症状が模倣されるかを調べたところ、VEGFは急性期ではその単独投与で疼痛過敏を惹起するとともに局所血流増加をもたらした.このプロトコルによりMPS様モデルマウスの作出に成功したと考え,今後の実験に使用した.
3)VEGF疼痛メカニズムにはVEGFレセプター1(VEGFR1)とVEGFレセプター2(VEGFR2)の関与が考えられることから,それぞれのレセプターをブロックすることでそれぞれの筋膜痛への関与を調べたところ,VEGFR1ブロックにより疼痛緩和が得られ,VEGFR2ブロックでは緩和がされず増悪することがわかった.VEGFR1は疼痛増悪に関与し,VEGFR2はむしろ疼痛緩和に関与していることが示唆された.
4)transient receptor potential cation channel subfamily V member 1 (TRPV1)はカプサイシンで感作されるイオンチャネルで,他に機械刺激,温度刺激でも応答する.このTRPV1ノックアウトマウスに対してVEGFを投与したところ疼痛行動をおこさなかった.このことはVEGF疼痛においてTRPV1が関与することが考えられた.

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

1)我々は、エリート長距離ランナー( n=40, 20.3±1.6歳)を対象にMPSの発生頻度の調査を行ったところ,下腿部において83%にMPSを発症しており,そのうち約30%にMPS特有の異常血管が発現していた.MPSの発症部位のほとんどは長指屈筋であり,異常血管の発現部位は長指屈筋の脛骨付着部と長指屈筋とヒラメ筋間であった.下腿中下1/3部におけるエリートランナーの長指屈筋の面積は一般ランナーと比較すると2から3倍大きく,その走法は,踵を接地しない前足接地であることから長指屈筋に大きな負荷がかかり,これが長指屈筋にMPSが発症する理由と考えられた.
2)我々は血管新生と関連深いVEGFに着目し,VEGFの単独投与で健常マウスに疼痛過敏をもたらすことを明らかにした.さらにVEGFをマウスヒラメ筋深筋膜下に投与することでエリートランナーと同様の所見を示すMPS様モデルマウスを作出することに成功した。VEGF投与はエコーガイド下でヒラメ筋深筋膜と長指屈筋,長母指屈筋浅筋膜間におこなった.
3)VEGFによって惹起される疼痛は,末梢神経に発現するVEGFR1およびVEGFR2の関与により発症すると考えられ,実験をおこなったところ,VEGFR1を坑VEGFR1抗体でブロックしたことでVEGF誘導による疼痛が緩和された.
多くの長距離ランナーが罹患するmedial tibial stress syndrome (MTSS)はMPSであることが示唆され,こうしたMPSの一連の症状をもつモデル動物を作製できたことから今後の基礎的実験に活用できる.また,本研究によりMPSに関与している分子が次々と明らかになってきており,研究計画は順調に進展している。

Strategy for Future Research Activity

これまで,MPSの治療法として筋膜リリースがおこなわれている.筋膜リリースは徒手的に筋膜をストレッチングする方法とhydro releaseと呼ばれるエコーガイドによって筋膜間に生理食塩水を注射する方法がある.これらは筋膜の癒着をとることで疼痛が緩和されるとされるが,我々は疼痛を誘発しているVEGFが希釈されることで疼痛緩和されるという仮説をたてた.VEGF疼痛モデルでは最低濃度2nmolVEGFで疼痛行動を生じるので,この疼痛モデルに対し生理食塩水を注射し疼痛緩和が可能かどうかを調べる.さらに,異常血管と痛みとの関係についてはいくつかの報告があり、血管新生には癌組織と同様VEGFが関わることが指摘されているが、現在のところ血管と神経とのクロストークに直接関わる因子は同定されていない.一方,VEGF疼痛には組織に遊走するマクロファージが関わっているという報告があり,今後、免疫組織染色,定量PCR、in situハイブリダイゼーション、Western boltを行い、VEGFそのもの、VEGF R1 (Flt-1)、マクロファージ等について神経節、筋、筋膜組織における発現を調べたい。一方、加齢性黄斑変性症において、VEGFによる異常血管新生が抗VEGFで改善することがわかっている。さらに、新生児血管腫においてpropranolol(β遮断剤)によって改善することが知られており、すでにその治験がおこなわれているが、その効果メカニズムについてはわかっていない。これらの知見からVEGF投与による疼痛モデル動物の疼痛過敏行動が抗VEGF中和抗体、あるいは、propranolol投与で血管縮小と疼痛緩和に効果を示すのではないかと考えており、筋膜疼痛の発痛メカニズムの解明とともにその抑制メカニズムについての解明を目指している。

Causes of Carryover

モデル動物の筋組織標本作製課程において様々なアーチファクトが発生し良好な組織標本の作製に時間を費やし,予定通りの実験を実施するに至っていないため.
次年度は,種々のモデル動物の購入と作製および免疫染色用抗体などの試薬を購入し実験をおこなう予定である.

  • Research Products

    (5 results)

All 2018 2017

All Journal Article (2 results) (of which Peer Reviewed: 2 results) Presentation (2 results) Book (1 results)

  • [Journal Article] 歩行,ランニングにおける前足接地と踵接地2018

    • Author(s)
      渡辺正哉
    • Journal Title

      理療

      Volume: 185 Pages: 25-45

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] 筋膜疼痛症候群(MPS)(発症メカニズムとエコー検査)2017

    • Author(s)
      渡辺正哉
    • Journal Title

      日本超音波骨軟組織学術研究

      Volume: 17 (1) Pages: 29-36

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] salineによるhydro releaseの効果2018

    • Author(s)
      渡辺正哉
    • Organizer
      第30回日本整形外科超音波学会
  • [Presentation] 筋膜疼痛(MPS)の発症メカニズム2017

    • Author(s)
      渡辺正哉
    • Organizer
      第29回日本整形外科超音波学会
  • [Book] 入門 運動器の超音波観察法2018

    • Author(s)
      渡辺正哉
    • Total Pages
      184
    • Publisher
      医歯薬出版
    • ISBN
      978-4-263-24077-9

URL: 

Published: 2018-12-17  

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