2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K01486
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
仲泊 聡 国立研究開発法人理化学研究所, 多細胞システム形成研究センター, 研究員 (40237318)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 眼球運動 / 視線計測 / 視覚障害 / 目と手の協応 |
Outline of Annual Research Achievements |
視覚障害者への音声ガイドの心得として「ここ」や「そこ」などの場所を示す指示語を用いないということがある。そのため、視覚障害者への空間的ガイドを音声で行う場合の効率は非常に悪い。一方、視覚障害者の中には全盲になっても眼球運動が保たれる場合が少なくない。そして、その見かけの視線と自身の注意の方向の一致性が保たれている場合がある。そこで、このような視覚障害者が視線計測装置を装用し、見かけの視線が指し示す場所を「そこ」という指示語でガイドされた場合、このようなシステムが彼らへの空間的ガイドの一助となるのではないかと考えた。 そこで今回、1) ヘッドマウント型であること、2) 被験者前方の映像をモニターできること、3) その映像に視線情報を重ねられること、4) これらの映像を遠隔から観察できることを選定条件とし、視線計測器EMR-9(Nac社製)を用意した。また、いきなり視覚障害者に適用するのではなく、健常者を被験者とし、その視線方向を遮蔽するとともに眼球運動をモニターし、音声ガイドの方法を確立したのちに、視覚障害者への適用を予定した。しかし、視線方向の遮蔽は、視線方向の映像を捉えるカメラへ影響を及ぼしやすく、セッティングに予想外の困難があった。そこで、倫理審査の承認の後、3名の視覚健常者に研究協力を依頼し、本機を用いた試用実験を行い、以下の対策が必要であることを明らかにした。a) 下方視しても装置がずり落ちないこと、b) 文字情報であっても画面上で音読できるようにするために、より高精細な映像がモニターできるか、文書をカメラに近づけてもピントが合うこと、c) 実験中、誘導者はモニター映像だけを見て被験者を直接見ないようにすること、d) 遮蔽板を眼前に置けるように赤外線を通し可視光を通さないフィルターを用いること、e) 遮蔽を改善するのと並行して視覚障害者に対する試行実験を行うこと。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
視線計測器EMR-9には、インターネットを介する遠隔でのモニターを可能にするシステムが別途用意されており、将来性をも考えてこれを選定した。しかし、被験者前方の映像が640x480ピクセルと粗く、自動焦点機能を有していなかったため、対象の映像の詳細を拡大しようとカメラに対象を近づけた場合、画像がぼやけてしまった。また、前方映像用カメラと眼球撮影用カメラの位置関係が、装着する遮蔽板を大きなものとせざるを得ない条件となってしまい、装置にこの遮蔽板を追加することにより本来の装置のの重量バランスを崩し、とくに食事場面を想定した実験では、前かがみになることでずり落ちやすくなってしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
前方映像用カメラの画像解像度については、装置的限界があり、別系統のカメラ系を導入する必要があるため、予算的に今回は手をつけず、現在のものの試用を続ける予定である。遮蔽板については、小型の赤外線選択的透過フィルターを眼前に置くことのできるものを工作する。そして、これとともに、遮蔽板を要さない視覚障害者の被験者に同実験を行い、実用可能性について検討する。音声ガイドの方法に関しては、実験を通して検討するとともに、目の前の情景を音訳するという手法に精通した専門家(映画の視覚障害者用副音声を作成する者等)に対するヒアリングによりマニュアル作りを行う。 最近になり、視線計測は伴わないものの視覚障害者に対する音声ガイドサービスのいくつかが提案されてきている。たとえば、iPhoneアプリBeMyEyes(http://bemyeyes.com)は、撮像した前方映像(静止画)を、遠隔で見る視覚健常者がチャット(文字情報)で支援するというものである。iPhoneを使用する視覚障害者の多くは、文字情報を音声情報として活用可能であるため、これを聞いて参考にすることができる。また、Horus(https://horus.tech/?l=en_us)は、イタリアで開発され、本年度に発表されたシステムで、側頭部に装着したカメラで撮像した映像をAIが認識し音声でガイドするというもので、近日中に日本での販売が表明されるようである。さらに、ロボホン(https://robohon.com)やSota(https://sota.vstone.co.jp/home/)などの小型ロボットの活用法としても、遠隔からの音声ガイドという発想がある。本システムが、これらと組み合わされることで、より実用的な視覚障害者支援システムになることが予想されるため、今後、これらに関する情報収集についても努めていきたい。
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Causes of Carryover |
平成28年度における研究が予算内に収まったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
おもに被験者謝金と旅費に使用する予定
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