2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K01489
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
肥後 範行 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 主任研究員 (80357839)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 脳損傷 / 霊長類モデル / 巧緻動作 / 機能回復 / リハビリテーション / グリア細胞 / 神経投射 / 神経可塑性 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳損傷後の上肢運動の機能回復過程における神経投射の変化を明らかにするために、神経解剖学的トレーサーを用いた組織解剖学的解析を行った。これまでに我々が確立したマカクサル第一次運動野局所損傷モデルを用いて、損傷後の上肢運動回復過程における機能的変化が示唆されている運動前野腹側部に、神経解剖学的トレーサーであるビオチン化デキストランアミン (Biotin Dextran Amine:BDA-10,000)を注入した。約1ヶ月後に解剖し、HRPを用いた発色を行うことによりBDAを可視化し、運動前野腹側部からの出力線維を同定した。損傷を作成していない健常個体と損傷後の回復期の個体に対して同様の解析を行い、損傷後の回復期の個体のみに存在する投射すなわち脳損傷後の回復期に形成される投射線維を探索した。これまでに報告した皮質下運動神経核である赤核や小脳核だけでなく、線条体や大脳皮質頭頂葉においても、損傷後の回復期個体のみに見られる投射線維があった。これらの神経路も、上肢運動の回復過程で皮質下運動神経核における変化と並行して変化している可能性がある。さらに脳損傷後に生じる細胞レベルの変化を知るため、免疫組織化学を用いてミクログリアマーカー蛋白であるIba1およびアストロサイトマーカー蛋白であるGFAPの経時的発現比変化を調べた。その結果、精密把握の障害は梗塞後半年間まで続いていたことから、運動障害が長期的に持続することを示した。また、第V層でIba1の発現比がニューロンの減少時期に先行あるいはほぼ同時期に増加していたことから、M1第V層ニューロンの減少にはミクログリアが関与している可能性が示唆された。また、梗塞部においてもIba1およびGFAPの一過性の増殖が認められた。そのうちIba1の発現変化は少なくとも梗塞後半年間持続することが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、脳損傷後に生じる神経投射の変化を複数同定しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き脳損傷後の回復過程で生じる神経投射やグリア細胞の変化を明らかにする。H30年度は当該研究費の最終年度であるため、論文にまとめることにも重点を置く。現在投射変化の一部について論文にまとめ投稿準備中であるが、その他の成果についても早めに論文にまとめ投稿する予定である。
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Causes of Carryover |
組織化学解析装置が不調の時期があったため、定量的解析に若干の遅れが生じ、一部の成果について学会発表と論文執筆に至らなかった。次年度の使用計画としては、学会および論文での公表を目指して最終的な解析を進めるとともに、英文校閲等公表に向けての必要経費に充てる。
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Research Products
(3 results)