2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K01490
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Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
井上 雅仁 国立研究開発法人情報通信研究機構, 脳情報通信融合研究センター脳情報通信融合研究室, 研究員 (10423047)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北澤 茂 大阪大学, 生命機能研究科, 教授 (00251231)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 運動学習 / サル / リーチング / ニューロン活動 |
Outline of Annual Research Achievements |
運動学習では、運動の誤差情報を用いて次の運動を変化させることが重要な役割を果たしている。腕の到達運動では大脳皮質の運動野に終点の誤差情報が入力し、次の試行まで運動を修正させる方向を保持しているが、このような持続的な誤差情報への変換に小脳でのLTDが本当に関与しているかは明らかにされていない。本研究では、リーチング運動遂行時のサルのニューロン活動を、小脳皮質登上線維の入力源である赤核、小脳の出力源である小脳歯状核から記録し、運動の誤差情報の時空間的特性を解析・比較することにより、小脳が持続的な誤差情報への変換・保持に関与しているかを明らかにする。この研究により、運動学習の脳内メカニズムを解明でき、効果的なリハビリテーション方の開発に寄与できると考えられる。運動の誤差情報の持続的な情報への変換過程への小脳の役割を明らかにするために、ニホンザルに視覚誘導性リーチング課題を訓練し、課題遂行時の単一ニューロン活動を小脳の入力源である小細胞性赤核、小脳の出力源である小脳歯状核から記録し、運動の誤差情報をコードしているニューロンが存在しているかどうか、またその誤差情報の時間特性を検証する。また、運動終了時に誤差情報をコードしているニューロン活動が記録された際に、その部位を運動終了時に微小電気刺激することにより次の試行での運動の誤差の増加が生じるかを解析する。平成29年度には、サルに対して視覚誘導性リーリング課題の訓練を行い、小細胞性赤核から神経細胞活動の記録を行った。 なお、本研究は、分担研究者である大阪大学大学院生命機能研究科 北澤茂教授との連携のもとで実施された。本研究の動物実験は日本学術会議が定める「動物実験の適正な実施に関する基本指針」に従って行われた。また本研究は、大阪大学大学院生命機能研究科動物実験倫理審査委員会の承認を受けて行われた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、平成29年度内に、新規に導入した2頭のニホンザルに視覚誘導性リーチング課題を訓練し、訓練終了後、小細胞性赤核の細胞活動記録用のシリンダーを取り付ける手術を行い、小細胞性赤核のニューロン活動の記録および刺激実験を開始する予定であった。小細胞性赤核の神経細胞活動を記録した結果、運動の誤差情報をコードしているニューロンが存在していることが明らかになった。運動終了時に誤差情報をコードしているニューロン活動が記録された際に、その部位を運動終了時に微小電気刺激することにより次の試行での運動の誤差の増加が生じるかを解析した結果、運動野と同様に誤差情報の最適方向と反対側に運動の誤差が生じた。この結果は、運動の誤差情報が小細胞性赤核を介して小脳皮質の登上線維に運動の誤差情報が送られていることを示唆している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度から、視覚誘導性性リーチング課題を訓練した2頭のサルから小脳歯状核での記録実験と刺激実験を行う。記録したニューロンはオンライン、および実験終了後にオフラインで解析を行う。今回は、運動の誤差情報をコードしているニューロン活動を解析するため、運動の終了後のニューロン活動を解析する。運動の誤差情報をコードするニューロン活動が存在するかどうか、存在した場合、誤差の相対的位置との関係、誤差情報の時間経過を解析し、プルキンエ細胞の複雑スパイク、一次運動野、運動前野、頭頂連合野、小細胞性赤核との違いを解析する。記録しているニューロン活動がオンラインの解析で運動の誤差情報をコードしている時には、その部位で電気刺激実験を行う。電気刺激は運動終了から200ミリ秒間与える。コントロール試行として刺激なし試行を30試行、刺激有り試行を30試行、再びコントロール試行として刺激なし試行を30試行行わせる。刺激有り試行でのサルの行動変化、すなわち反応時間、運動時間、運動の誤差の量を解析する。運動の誤差情報をコードしているニューロンが運動の修正に関与しているならば運動の誤差の量が増加すると考えられる。このような解析により、小脳歯状核が運動の誤差情報をどのタイミングでコードするか、また、運動の誤差情報に基づく運動の修正に関与するかどうかを明らかにする。 また、不測の事態に備え3頭目のサルを導入し、視覚誘導性リーチング課題の訓練を行う。
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Causes of Carryover |
実験動物の導入の遅れにより、記録実験の開始が平成29年度のずれ込んだため、記録実験に用いる機材の購入を先延ばしした。また、海外出張に旅費を使用する予定だったが、使用しなかった。 平成30年度には、予備の実験動物の購入、記録実験に必要な機材の購入を行う。
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