2016 Fiscal Year Research-status Report
移動支援機器の搭乗部位置の移動を活用した数段の階段移動に関する研究
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16K01550
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
中嶋 秀朗 和歌山大学, システム工学部, 教授 (30424071)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | パーソナルモビリティビークル / 移動支援機器 / 階段移動 / 電動車いす / 不整地移動 |
Outline of Annual Research Achievements |
社会構造の高齢化が急速に進む日本において,高齢者を含めた移動弱者や移動困難者がはつらつとした生活を送るためには家の外へ自律的に出かけられる環境が必要である.活動範囲を広げるための移動支援機器の存在も重要になる.本研究では,斜めからの段差移動も可能なRT-Moverシリーズの搭乗型機の移動能力を拡大することが目的である.具体的には今までの限界であった2段までの階段移動を,3段まで移動できるようにする.感覚的に高さが0.5[m]程度までの差がある空間は同一空間と感じるが,2段までしか移動できないと0.35[m]程度の高低差がある空間の行き来までしかできない.3段まで階段を上り下りできると高低差0.5[m]程度の2つの空間を行き来できるようになるのである.3段の階段を上る場合,機体が40度程度傾き,また階段踏面にある支持車輪の位置を調整するスペースがないため従来研究の成果では移動不可能だった. この問題を解決するために,本年度は主に次の内容を行った. ・移動支援機器のハードウエア改良の第一弾を実施した.機構の改良は重心移動範囲の拡大,車高とホイールベースの変更を行った.電気回路やコンピュータシステムの実装を新規に行った. ・数段の階段移動アルゴリズムの検討を物理シミュレータを開発して行った.シミュレータは,主要なコードが実機制御用とシミュレータ用で共通となるような構成にし,シミュレーションで検討したアルゴリズムを直接実機に移行できるようにした. さらに,国際大会であるCybathlonに出場し,移動能力に関して,ここまでの研究成果を国際的に評価する機会を持った.Cybathlon では,開発した移動支援機器に障害者が搭乗して競い合うため高い完成度や信頼性が必要であり,参加へのハードルは高かった.Powered wheelchair部門で世界4位という実績を残した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
3段の階段を上る場合,機体が40度程度も傾くため,機体の安定性確保を可能にする機構の実現がポイントだった.階段を上り下りするためには,車輪を脚のように動作させるための広い可動範囲が必要であり,ソフトウエアで機構同士が干渉しないようにした.シミュレータの開発により,十分な検証を効率的に行い,その上で実験を数多く行って改良を重ねた結果,3段の階段の上り下りが可能になった. H28年度においては,機構に加えて移動制御ソフトウエアの開発も進んだため,国際大会であるCybathlonに出場し,Powered wheelchair部門で世界4位という実績を残すことができた. Cybathlonは,最先端のロボティクス技術や生物機械工学技術を駆使して,障害を克服した上で障害者アスリートが競い合う国際大会であり,第一回目の大会が世界的に有名なスイス連邦工科大学チューリッヒ(ETH Zurich)の主催で開催された.6種目合計で世界25ヵ国から66チームが結集して競い合った. 研究開発成果をCybathlonという国際大会で評価でき,結果も世界4位だったということは,研究成果の質と信頼性の高さを客観的な一つの指標で把握できたことになり,当初の計画以上の進展度と判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
ここまで行ってきた実験やCybathlonへの出場を通して,より移動能力を向上するための知見が新たに得られた.その知見をもとに,機体の改良とシステムの信頼性向上,移動制御アルゴリズムの性能向上を図りたい. その一方で,一人用の乗り物として移動能力が高まってくるにつれて,操縦性や乗り心地に関する問題点も見え始めてきた.そのため,自動運転などの知能化との連携を意識した研究開発も行い始める予定である. また,平成29年度は1年目から出始めた研究成果の社会還元として,国際会議や国内会議での研究成果発表,あるいは,論文発表を積極的に行う予定である.さらに,大学の成果を発表する展示会などでも積極的に情報発信し,科研費で研究開発した技術の,社会での応用の可能性を広げる取り組みも行う.
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Remarks |
新聞報道15件,テレビ・ラジオ報道7件(サイバスロン関連) 科学技術イベント等での招待講演7件(在日スイス大使館主催2件,韓日産業技術協力財団主催1件,日本財団主催1件など) 和歌山大学主催イベントでの講演・実演11件(全学後援会1件,経済学部後援会1件,サテライトキャンパス10周年記念1件,ホームカミングデー1件,関西広域連合広域産業振興局長視察1件,経済同友会視察1件,文科省参事官視察1件など)
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Research Products
(6 results)