2016 Fiscal Year Research-status Report
力学的データを用いた有限要素解析によるプラスチック短下肢装具設計に関する研究
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16K01579
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
北山 一郎 近畿大学, 生物理工学部, 教授 (80426535)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | プラスチック短下肢装具 / PAFO / 有限要素解析 / 3Dプリンタ |
Outline of Annual Research Achievements |
はじめに、歩行中装具にかかる外力のほとんど全てが測定できる装具計測システムを完成させた。同システムでは、装具の底面と靴との間にかかる荷重(床反力相当)、装具と足底との間の荷重、足関節部のベルトにかかる荷重、下肢腓腹部と装具間の荷重などの荷重に加えて、膝屈曲の角度及び装具変形に伴う装具下腿部と足部間の角度変化の測定を可能とした。同装置を用いて、6名の健常者と6名の片麻痺者による装具歩行のデータを取得した。データの分析により、健常者と片麻痺者では、立脚相前期での装具にかかる荷重や立脚相後期での装具にかかる荷重などにおいて、両者のデータ間には統計的に有意な差があるという知見が得られた。特に、一部の重度の片麻痺者では、健常者よりも大きな荷重が装具にかかっていることが分かり、装具が歩行を支援していることが示唆された。また、3Dスキャナを用いた装具形状のデータ取得、ANSYS(有限要素解析)によるデータの解析、それに基づく3Dプリンタでの装具製作については、今回の開発システムでは比較的長い時間を要するなどの改良を必要とするものの基本的には本研究で実現することができた。同データの解析には、前者で示した片麻痺者による歩行の際に装具にかかる荷重のデータを活用している。また、スキャナで得られた形状データに対し、CADを用いて形状の一部を修正し、その後、有限要素解析などで、装具の変形量や装具にかかる応力分布を知ることが可能となった。なお、これらの結果については、実験力学や臨床バイオメカニクスなどの雑誌への3題の投稿論文等に詳細を述べ公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
同研究を進めるにあたり、プラスチック短下肢装具に現在一般に使用されているポリプロピレンを用いて3Dプリンタで装具製作できるかどうかということに関し時間を要すると考えていた。この点に関し、国内企業から協力が得られることとなり、設計した装具形状に基づく装具のポリプロピレンによる3Dプリンタで製造することの目処が立ったことが研究の進展に大きく貢献したと考えている。 そのほか、本研究の1年目の基礎技術として、装具計測システムの開発、CADによる装具形状の変更、有限要素解析、データの3Dプリンタへのファイルデータの移行などにおいて一定の成果が得られていると考える。 これらにより、上記区分に分類した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、①身体形状測定→②装具基本設計→③装具形状の変更に伴う設計変更→④荷重に基づく有限要素解析→⑤適する荷重や応力状態が得られる形状の設計→⑥3Dプリンタによる装具の製作→⑦製作装具による試歩行→⑧改良→⑨最終モデル製作、といった一連をプラスチック短下肢装具設計の基盤技術の確立を目標としている。もう一点は、これら設計を支援するための基盤技術として、⑩装具歩行中の立脚相での荷重データ計測、⑪遊脚相中の荷重データ計測を目標としている。 この中で、②装具基本設計、③装具形状修正、④有限要素解析、⑥3Dプリンタによる装具製作及び⑩立脚相でのデータ計測は、本年度においてほぼ実現しており、次年度さらに改良を重ねて完成させたい。①身体形状測定、⑤適する荷重と応力や変形状態の分析・設計、については、一部の知見は得られているもののまだ不十分であるので、⑪の遊脚相中の荷重データ計測を併せて次年度重点的に進めて行く。また、⑦の試歩行、⑧改良、⑨の最終モデルについては、最終年度完成させたい。
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Causes of Carryover |
本年度3Dプリンタによる装具製作費用が発生すると考えておりましたが、研究概要にあるように試作的に製造してくれる企業があったので、その分の費用を抑えることができたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
一方、装具計測のために必要なセンサ取り付け用具などの機械部品は被験者に応じて取りそろえまた加工する必要があることから、次年度の実験等に向けてこれら機械部品の購入費用にあてたいと考えています。
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