2016 Fiscal Year Research-status Report
パーシュートを用いた視覚情報処理能力の測定法の開発
Project/Area Number |
16K01592
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
小野 誠司 筑波大学, 体育系, 准教授 (70754753)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木塚 朝博 筑波大学, 体育系, 教授 (30323281)
三浦 健一郎 京都大学, 医学研究科, 助教 (20362535)
川村 卓 筑波大学, 体育系, 准教授 (30334056)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 眼球運動 / 視覚 / 反応時間 / 運動制御 / 感覚情報 |
Outline of Annual Research Achievements |
実際の競技スポーツ場面において、ボールや相手の動きなど、視標の動き(速度、方向)を捉える能力は運動パフォーマンスに大きな影響を及ぼす。動くものを見る際に誘発される滑動性追跡眼球運動(パーシュート)は身体運動に先行して発現する。視標の動きに対するパーシュート反応は、視標の動きを知覚、認知する時間に相当することから、従来の反応時間測定だけでは推定できない視標の動きを捉える能力の評価指標となる可能性がある。本研究の目的は、眼球運動の制御特性と身体反応との関連性を検討し、視覚情報処理における新しい測定法の研究開発につながる基礎的知見を得ることである。初年度である平成28年度は、視標の動きを知覚する能力を、パーシュートを指標として評価できるかどうかを検討することに主眼をおいた。眼球運動を誘発させる視覚刺激として、視標が静止した状態から一定速度で動く視標の追跡課題を用いた。この課題は、眼球の動き始めの加速度局面と、速度を一定に維持する2つの局面から成っており、それぞれが異なる制御特性を反映している。これらの2局面における水平方向の眼球加速度および速度を評価した結果、視標の動きに対するパーシュートの反応時間、眼球加速度、眼球速度には個人間で差異が認められ、眼球運動の計測によって個々の視覚情報処理能力の違いを評価することができた。眼球運動は、視標の動きを知覚するための一要因であることから、被験者間で異なる眼球運動の特性が、運動経験に基づいた個々の視覚情報処理能力の違いに関連していることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に予定した視標の動きを知覚する能力を、パーシュートの眼球運動成分を用いて評価するための基礎的知見は完遂した。ここまでは一定速度で動く視標の追跡課題を用いたが、本研究により、眼球運動の成分に個人間差異が生じることが明らかになったため、異なる視覚刺激によって誘発される眼球運動にも、同様の特徴が認められるかどうかについての検討を開始している。
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Strategy for Future Research Activity |
パーシュートの潜時(反応時間)や開始時の速度は、視標が動く速さや方向、視標のサイズにも影響されるため、平成29年度は引き続き、異なる視覚刺激によって誘発される眼球運動のデータを収集すると共に、視覚刺激に対する身体反応と競技経験及び競技レベルとの関連性についての検証を開始する計画である。これらの研究結果を踏まえ、反応時間測定の意義や生理学的な根拠について総合的な検討を行い、身体反応時間だけでは推定できない視覚情報処理能力を評価するための指標の研究開発につながる知見を得る。
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Causes of Carryover |
備品について、当初の予定より安価であったこと、本年度に予定していた消耗品の購入と研究成果報告の一部を次年度に行うこととしたため未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験用消耗品、共同実験および研究成果報告のための旅費(国際学会を含む)、国内、国際論文誌投稿のための費用として使用する計画である。
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Research Products
(3 results)