2016 Fiscal Year Research-status Report
運動観察法による思春期不器用時に生じる走動作変容の解明
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16K01596
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
國土 将平 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (10241803)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 思春期不器用 / 走運動 / 発育急進期 / 運動観察道 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、走運動における思春期不器用の発生から消失までの動きの変化を横断的・縦断的に追跡し、急激な発育が走動作ならびに走パフォーマンスに与える影響を明らかにし、該当時期における運動指導上の新たな知見を得ることを目的とする。小学校4-6年生の児童184名を対象に、50m全力疾走動作の動作を撮影し,38観点について評価を行った。 本年度は横断的資料に基づき走運動における思春期不器用の発現を検証した。まず,走速度と走動作の関連性について検証した結果,走速度と項目反応理論によって得られた走動作得点は、成長スパート期には直線的には発達せず,思春期不器用のために、小学校6年生の発育段階で走速度と走動作との関係は非常に低くなることが明らかとなった。 次に,学年進級にともなう走動作因果構造の変化を明らかにし、走動作の調整不全を検討した。探索的因子分析によって因果構造を仮定できる14変数に絞り、動作因果関係を考慮した構造方程式を作成し、学年進行による変化を多母集団同時分析により検討した。その結果、因果関係が同一であり、パラメータが異なる配置不変モデルが採択された。学年進行に伴い、腕の振り下ろし動作と二軸動作の連動性が向上する一方で、スイング局面から着地準備局面の関連性は小学3・4年生までは向上するが、5・6年生には低下し、ブレーキ動作、プッシュ動作などの誤差分散は小学5・6年生で大きくなり、個人のばらつきが大きくなることが明らかとなった。 小学校高学年における身長と走動作の関係性を探索的に分析した結果,身長と走速度を抑制変数とした走動作得点と走速度の間には、男子において脚接地準備動作、女子においては体軸の構成、腕振り動作,前腕位置には負の関連性が見られた。これらの結果は身長の伸びによって相対的に動作が不適切になってくる思春期不器用の可能性があると推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の研究成果は横断的資料に基づくものであり,検討できる課題についての限界はあらかじめ予想されたものであった。走運動の動作の継続調査を4か月もしくは半年ごとに実施する予定であったが,参加希望者が十分に集まらず,被験者数としては不十分な結果となった。調査対象校と協議のうえ,年間1度ではあるが,5月に測定した対象差を継続調査できるよう,研究のレイアウトを変更した。既に平成二九年の調査予定は確定しており,身長の伸びが同定できるため,縦断的な資料として,発育ステージの変化を含めた資料収集が期待できる。また,3月の学会発表により,研究者からの指摘で,新たな走動作の分析観点を2点追加しており,過去の走動作に遡り,その評価をおこなっている。 以上のように,計画の変更はあったものの,新たな評価観点の追加により,走動作評価の幅が広がり,継続調査が可能なため,概ね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は平成28年度の動作撮影者を継続して調査可能である。本年度は昨年度の同じ対象小学校の4-6年生の調査を5月9-10日に実施することに加えて,5/29-31日に対象小学校の児童の進学先の中学校においても,調査することが可能となり,思春期の身長発育の著しい次期の動作データを発育ステージの評価を伴いながら検討することが可能となる。 本年度後半には走動作の分析を終え,10月以降の学会では継続調査データにもどづく走動作の思春期不器用の発現,消失を検討する予定である。
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