2017 Fiscal Year Research-status Report
運動学習早期段階における中枢メカニズムに関する運動神経生理学的研究
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16K01597
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
船瀬 広三 広島大学, 総合科学研究科, 教授 (40173512)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 経頭蓋直流電気刺激 / 経頭蓋磁気刺激 / 小脳抑制 / タイミング制御 / 運動パフォーマンス |
Outline of Annual Research Achievements |
H29年度は,経頭蓋直流電気刺激(tDCS)を用いて小脳へのtDCS介入前後における動的目標に対するリーチング運動のタイミング制御に対する影響について検討した. 10名の被験者に対してダブルブラインド,クロスオーバーデザインのtDCS介入実験(sham,cathodal,anodal)を実施した.課題前後における小脳-一次運動野(M1)抑制(CBI)を測定した. M1への経頭蓋磁気刺激(TMS)によって右第一背側骨間筋(FDI)から試験運動誘発電位(MEP)を誘発した.試験TMSに5~6ms先行して条件TMS刺激を右側小脳に与え,CBIを測定した.CBI抑制量は試験MEP振幅が約50%になるよう条件TMS刺激強度を調整した. 結果は以下の通りであった.1)tDCS刺激条件間で,運動課題のパフォーマンス平均値に有意差は見られなかった.2)相関関係を調べた結果,anodal tDCS介入前後のCBIと動作開始時間(onset)に有意な負の相関が認められた.tDCS刺激条件間で運動課題のパフォーマンス平均値に有意差が認められなかった理由として,tDCS効果の個人差が考えられる.tDCS効果を示すresponderの割合は50%程度であり,またresponderにおいても,その効果量には個人差が見られることが先行研究で示されている.そこで,CBIの変化量と運動パフォーマンスの変化量との相関関係を分析したところ,anodal tDCS条件において,CBI変化量とonset変化量との間に有意な負の相関が示された.Anodal tDCSの介入によって,小脳皮質のプルキンエ細胞の興奮性が高まり,運動指令出力部であるM1に対する抑制入力が増大した結果,onsetの遅延が生じたものと考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H29年度に予定していた動的目標に対するリーチング運動のタイミング制御に対する小脳へのtDCS介入効果の検証についてはある程度の成果を得ることができた.しかしながら,tDCS効果の個人差の大きさから,tDCS条件間におけるパフォーマンス指標の平均値比較では有意差を認めることはできなかった.これを受けて,tDCS responderを数名,被験者として加え,追加実験の実施を計画している.
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Strategy for Future Research Activity |
H30年度は,野球盤様一致タイミング課題プログラムを新たに作成し,時間的外乱に対する適応学習における小脳の役割について検討する.被験者は,課題提示用のモニター画面の上部から下部へ一定速度で移動するボールを同画面上に設定したバットで打ち返し,打球が画面上の指定した位置に達するようにボールとバットのミートタイミングを調節する.試行完了後,画面上の実際に打球が飛んだ位置と指定した位置との角度のずれをエラーとして算出する.画面上のバットスウィングは一定速度とし,ボタンを押すことで開始される.まず,外乱無し条件でエラーがプラトーに達するまで20回×必要ブロック数の課題試行を実施する.その後,バットスウィング速度を速めるか遅くするかの時間的外乱を与え,バットスウィング開始のタイミング制御における適応学習過程を観察する.この学習前,学習の早期・後期段階及び学習後におけるCBIの変化について調べる.
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Causes of Carryover |
(理由)旅費の使用額が予定金額より少なかったため. (使用計画)平成30年度に繰り越し適切に使用する.
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Research Products
(7 results)