2017 Fiscal Year Research-status Report
ストレスが引き起こす生体防御反応が運動学習に及ぼす影響とそのメカニズムの解明
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16K01603
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
加藤 明 東海大学, 医学部, 准教授 (70546746)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 穣 東海大学, 医学部, 教授 (10146706)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ストレス / 運動学習 / 光遺伝学 / 眼球運動 / コルチコステロン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、運動学習を司る中枢機構に対するストレスの影響に焦点を当てる。ストレス負荷時に放出されるストレス因子コルチコトロピン放出因子 (CRF) を発現する神経細胞を光遺伝学を用いて時間及び部位選択的に抑制することで、CRF を介したストレス反応と運動学習とのクロストークについて解析し、将来的に運動学習効率を高めるストレス負荷あるいはその抑制につながる神経回路メカニズムの解明を目的とする。 平成29年度は、まず生体ストレス反応の指標の一つとして通常用いられる血中コルチコステロン濃度に対し、よりサンプリング時の侵襲性が低い尿中コルチコステロン濃度とストレス負荷との相関を C57BL/6 マウスを用いて ELISA 法により調べたところ、拘束ストレス、非同腹雄との同居ストレス共に、負荷後 90‐180 分にかけて尿中コルチコステロン濃度が上昇した。更に、90 分間の拘束ストレス、あるいは非同腹雄との同居ストレス負荷後に前庭動眼反射 (VOR) 運動学習を行なったところ、有意な運動学習が生じないことがわかった。また、初年度に作製した緑色光照射により活性化するプロトンポンプ ArchT を CRF 発現細胞選択的に発現する CRF- ArchT マウスを用いて、90 分間の拘束ストレス負荷下の終盤 30分間視床下部室傍核周辺に緑色光を照射し、直後に緑色光を照射しながら VOR 運動学習を行なったところ、運動学習が生じた。 初年度の結果と合わせ、CRF が脳内の発現個所により運動学習に対して逆方向の働きを担うことを示唆する結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時に予定していた侵襲性の高い血中コルチコステロン濃度計測に代わり、ELISA 法を用いた尿中コルチコステロン濃度がストレスの指標として使えることがわかり、初年度の反省点が克服できた。また光遺伝学の生体応用に用いるダブルヘテロマウスの作出も順調である。標的である視床下部室傍核が比較的深い位置にあり、脳室に隣接していることから、光刺激のためのガイドチューブ埋め込み法の確立に多少時間がかかったが、現在は順調に行うことができている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの研究をさらに継続しつつ、 ・長期のストレス負荷と運動学習との関係 ・CRF 発現細胞選択的抑制が内分泌系に与える副作用とそれを抑える工夫 ・ストレス経路抑制による運動学習のさらなる効率化 について研究を進める。
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Causes of Carryover |
(理由) 当初予定していた国際学会での発表を最終年度に延期したため。 (使用計画) 2年目の余剰分を含め、最終年度は動物の飼育・手術、光刺激実験などに用いる消耗品、学会参加に係る費用、論文投稿料などに使用する予定である。
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