2017 Fiscal Year Research-status Report
体育・スポーツ指導者の交信分析能力の解明および養成方法論の確立
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16K01610
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
中村 剛 筑波大学, 体育系, 准教授 (60341707)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 交信分析能力 / 動感志向性 / 身体知 / 地平構造分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、平成28年度~30年度の3年間で実施されるものである。本研究の最終的な目的は、学校体育の教師や競技スポーツの指導者が備えているべき専門的な指導力の一つとされる「交信分析能力」の養成方法論の構築に向けた基礎資料を得ることである。 平成29年度は、当初の研究実施計画にしたがって、大学生を被験者とする「交信分析能力」の養成実習を例証として取り上げた事例研究によって、この能力の養成方法の検討・提示を行うことにしていた。しかし、本研究の内容をより深化・発展させようとするなかで、この「交信分析能力」の志向的な構造についてより詳細に検討する必要性があることが浮かび上がってきた。そのため29年度はスポーツ実践現場における指導者と選手の具体的な動感交信を例証として取り上げ、その実り豊かな交信分析の構造的特徴を明らかにしようとした。具体的には女子ハンドボールキーパーのスカウティングに関する動感能力の解明と並行して、指導者と選手のあいだの動感交信においてそれが有効に機能する上で必要な要因がどのようなものであるのかについて明らかにしようとした。 その結果、実り豊かな「動感交信」を実現する上で、指導者側が超越論的立場に立って相手の動感志向性を自らの動感身体で構成分析する必要があること、そしてそのためには類似の動感志向体験とその地平構造分析が不可欠であることを指摘することができた。 なお、この研究を通じて、指導者が実際の指導実践において「どのように交信分析を展開しているのか」ということを明らかにできたことで、当初予定されていた事例研究で明らかにしようとしていた〈交信分析能力の向上をもたらすきっかけとなる指導経験〉がどんなものであるのかということについても一定の示唆を得ることができた。この研究成果は、この能力の養成方法論やテスト方法の研究開発にとって有意義な知見であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、研究の内容をより深めるために、当初の研究実施計画に記載されていなかった研究課題に急遽取り組むことになった。具体的には、本研究で主題化している「交信分析能力」の志向的な構造を解明するための研究を実施計画の一部を変更するかたちで、追加で行うことにしたのであった。 こうしたこともあって、29年度の研究開始当初においては、研究の進捗状況に大幅な遅れが発生することが懸念された。しかしながら、急遽、研究実施計画の一部を変更して実施した「スポーツ現場における指導者と選手の動感交信を取り上げた事例研究」の成果が、当初29年度に計画していた「大学生を被験者とした「交信分析能力」の養成実習に関する事例研究」によって明らかにしようとしていた研究課題についてもある一定の解決をもたらす結果となった。こうしたことから、平成29年度の研究は、当初の研究実施計画から大幅に逸脱することなく、本研究の最終的な目的を達成する上で十分な成果を年度内に発表することができたのではないかと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度においては若干の研究実施計画の変更があったが、目下のところ、おおむね計画に沿って研究成果を上げることができていると思われる。 こうしたことから平成30年度も当初の研究実施計画にしたがって、研究活動を進めていきたいと考えている。なお、今後、研究実施計画を実行に移していくなかで予期せぬ問題や障害が発生することも十分考えられる。また平成29年度同様、急遽、追加の研究が必要となる事態も十分想定されることである。以上のことから、平成30年度の研究を進める上でも、その進捗状況を自ら点検・評価しながら、必要な場合には研究計画をすみやかに変更して対処するなど、大幅な遅れが出ないように、細心の注意を払って研究に邁進したいと考えている。 そのためにも、平成30年度も、平成29年度と同じように、年度の早い時期から研究を開始し、問題や障害などが発生したときの対応に十分な時間を確保できるようにしたい。また不測の事態を想定して、研究の実施に関するスケジュールについては、あらかじめいくつかの実施計画案を検討するなど、万全を期すよう心がける。 以上、これらの対応策を踏まえて、確実に研究実施計画を実行していきたい。
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Research Products
(1 results)