2016 Fiscal Year Research-status Report
自由度の制御から見た運動不振学生の運動制御・学習の特徴
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16K01614
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
古田 久 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (80432699)
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Project Period (FY) |
2016-10-21 – 2020-03-31
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Keywords | 運動不振 / 動作解析 / 自由度 / アンダーハンドパス / バレーボール |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,運動不振を呈する者の効果的な学習支援策を考案するために,「自由度」の制御の観点から,運動不振学生の運動制御・学習の特徴を明らかにすることが目的である。 運動技能の学習―指導場面では,他者と同じように練習を行っても,なかなか技能の向上が認められない学習者が見受けられる。このような学習者は「運動不振」と呼ばれる。100 以上もの関節から構成されている人間の身体の制御には,それぞれの関節を独立して制御するのではなく,ある協応的な関節同士の動作を結合させることにより制御の負荷を低減することが重要となる。Bernstein(1967)は,このような結合を協応(シナジー)と定義しており,生体のように冗長な「自由度」を持つものの制御には,課題に適合した協応を獲得することが重要であると指摘している。そして,運動不振を呈する学習者は,この自由度の制御において一般の学習者と異なる可能性があるため,その検討が必要である。 本年度は運動不振学生1名(20歳女子),及び比較対象としての非運動不振学生1名(20歳女子)を参加者とし,バレーボールのアンダーハンドパスを課題として実験を行った。大学生版運動不振尺度(古田, 2016)を使用して参加者を抽出した。運動不振学生は身体操作力で7点,ボール操作力で6点だったのに対して,非運動不振学生は身体操作力で17点,ボール操作力で16点であった。 体育館の床に2m四方の枠をラインテープで作成し,その範囲内で参加者にバレーボールのアンダーハンドパスを遂行させた。そして,その状況を2台のデジタルビデオカメラ(スポーツコーチングカム, JVC)を使用し,参加者のパス動作を120fpsで記録した。試行回数は20回×5ブロック,計100回であった。 両肩や両腕の肘,手首などをデジタイズポイントとして現在分析を進めている最中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題を含む運動不振学生に関する一連の研究は6つのステップから構成される。ステップ1 で,大学生版の運動不振尺度を作成し,運動不振の判定法を開発する。ステップ2 で運動不振学生の体育授業における「つまずき」経験を検討し,運動不振を呈する者が苦手とする運動課題を明らかにする。そしてステップ3・4で球技系の運動課題,ステップ5・6 で,非球技系の運動課題における運動不振学生の動作を自由度の制御の観点から分析するという計画である。 本年度はステップ3・4に位置するが,本研究課題が追加採択であったため,研究開始が10月末と研究スタートが遅かったこと,及び研究代表者が動作解析に習熟していなかったことが達成度の遅れの主な理由である。研究期間は3年残されているので,挽回できるようにペースを上げて研究を進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29 年度の研究計画では,引き続きバレーボールのアンダーハンドパスにおける検討を続ける。現時点で実験参加者の数が少ないので,増やしていく予定である。 また,同時にボール投げにおける運動不振学生の動作を自由度の制御の観点から分析する。熟達のプロセスにおいては,動作の変動と安定が繰り返される(松永, 1974)。このことは,練習の中で関節運動間の連結と独立により,自由度の拘束と解放が行われていると解釈できる。しかし,運動不振学生は,自由度の解放が遅い又は認められない等の非運動不振学生とは異なる制御方略を用いることが仮説として考えられる。 参加者は,運動不振学生8 名程度及び比較対象としての非運動不振学生8 名程度とする。運動不振学生の抽出には,大学生版運動不振尺度(古田, 2008)を用いる。基本的には文部省(2000)の新体力テストのソフトボール投げの測定方法に基づいて行う。ただし,男子大学生を参加者とすると,ボールの飛距離が大きくなりすぎてパフォーマンスの測定が困難となるので,当該年度の実験参加者は,運動不振及び比較対象としての非運動不振学生の両群とも女子学生とする。 以上の手続きによって得られたキネマティクスデータをもとに,相互相関係数を算出し,複数の関節動作間の関連を分析する。また,パフォーマンス指標における違いも検討する。
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Causes of Carryover |
主として旅費として計上していた予算を執行しなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度も学会出席のために旅費は必要となるため,年度は異なるが,同様の目的で執行する予定である。
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Research Products
(1 results)