2017 Fiscal Year Research-status Report
自由度の制御から見た運動不振学生の運動制御・学習の特徴
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16K01614
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
古田 久 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (80432699)
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Project Period (FY) |
2016-10-21 – 2020-03-31
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Keywords | 運動不振 / 運動が苦手な児童 / 運動が苦手な生徒 / 運動が苦手な学生 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,運動不振を呈する者の効果的な学習支援策を考案するために,「自由度」の制御の観点から,運動不振学生の運動制御・学習の特徴を明らかにすることが目的である。 本年度は3つの面で活動を行った。 第1は国際学会への参加である。6月にNASPSPA(The North American Society for the Psychology of Sport and Physical Activity),7月にDCD (Developmental Coordination Disorder)国際会議に参加し,情報収集を行った。 第2は研究活動のレビューである。自由度の制御も含め,運動課題の分析,恐怖心,ボトルネックの4つの観点から,運動が苦手な児童・生徒(運動不振)への配慮のあり方を検討した。その結果,運動課題の分析については,課題達成のための必要条件に着目し,これに関連する要因を探ることが有効であると考えられた。恐怖心については,これが原因となって積極的に課題に挑戦できないことがあるため,指導者は注意する必要があると考えられた。ボトルネックは,情報処理的アプローチで重要な概念であり,このボトルネックの特定と解消がパフォーマンスの向上において特に重要であると考えられた。自由度の制御については,DCDなどの不器用な子どもの場合,自由度の解放がみられないことが指摘されていたが,その解放を促す練習法を開発するためには,運動課題の適切な分析が非常に重要であることが明らかとなった。なお,この検討は「体育科教育」第66巻第2号に掲載された。 第3は実験データの解析である。これまでに収集した実験データの解析を試みたが,解析方法に問題があったため,十分な成果を出すまでに至っていない。これを早急に解決することが課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究課題を含む運動不振学生に関する一連の研究は6つのステップから構成される。ステップ1 で,大学生版の運動不振尺度を作成し,運動不振の判定法を開発する。ステップ2 で運動不振学生の体育授業における「つまずき」経験を検討し,運動不振を呈する者が苦手とする運動課題を明らかにする。そしてステップ3・4で球技系の運動課題,ステップ5・6 で,非球技系の運動課題における運動不振学生の動作を自由度の観点から分析するという計画である。 本年度はステップ3・4に位置するが,筆者がキネマティクスデータの取得と解析に不慣れであったため,研究活動が停滞している。したがって,バイオメカニクスの専門家のサポートを受けるなどして現状を打開したい。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度の研究計画では,引き続きバレーボールのアンダーハンドパスの動作の解析を続ける。ただ,先に述べたように,バイオメカニクスの専門家のサポートを受けたうえで研究を進めていく。 また,同時に縄跳びの二重跳びにおける運動不振学生の動作を自由度の観点から分析する。熟達のプロセスにおいては,動作の変動と安定が繰り返される。このことは,練習の中で関節運動間の連結と独立により,自由度の拘束と解放が行われていると解釈できる。しかし,運動不振学生は,自由度の解放が遅い又は認められない等の非運動不振学生とは異なる制御方略を用いることが仮説として考えられる。 参加者は,運動不振学生8 名程度及び比較対象としての非運動不振学生8 名程度とする。運動不振学生の抽出には,大学生版運動不振尺度(古田, 2016)を用いる。デジタルカメラ2台を用いて参加者の二重跳び動作を撮影し,画像解析プログラムFrame-DIAS5を用いて解析する。以上の手続きによって得られたキネマティクスデータをもとに,相互相関係数を算出し,複数の関節動作間の関連を分析する。また,パフォーマンス指標(回数等)における違いも検討する。
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Causes of Carryover |
平成28年度分の残額を平成29年度に使い切れなかったため,次年度(平成30年度)使用額が発生した。平成30年度の本研究課題への配分額は非常に少額であるため,物品費等として使用する。
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Research Products
(2 results)