2018 Fiscal Year Research-status Report
自由度の制御から見た運動不振学生の運動制御・学習の特徴
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16K01614
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
古田 久 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (80432699)
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Project Period (FY) |
2016-10-21 – 2020-03-31
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Keywords | 運動不振 / 自由度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,運動不振を呈する者の効果的な学習支援策を考案するために,「自由度」の制御の観点から,運動不振学生の運動制御・学習の特徴を明らかにすることが目的である。本年度は2つの面で活動を行った。 第1は大学生版運動不振尺度(古田, 2016)における運動不振の判定基準の検討である。これは当初の研究計画には組み込んでいなかったが,本研究も含む運動不振を対象とした研究を行う際の基礎になるため計画を変更して遂行した。この検討では,これまでに得られた大学生1792名(男性1072名、女性720名)のアンケートデータを分析の対象とした。9つの判定パターン(基準)を検討した結果,性差を考慮する場合で3つ,考慮しない場合で2つの判定パターンが妥当と考えられた。つまり,分布の観点からみて妥当な運動不振の判定基準は,1)両下位尺度(身体操作力とボール操作力)が男性で10以下、女性で7以下の場合,2)両下位尺度が男性で11以下、女性で8以下の場合,3)両下位尺度が男性で12以下,女性で9以下の場合,4)男女とも両下位尺度が8以下の場合,5)男女とも身体操作力が8以下でボール操作力が12以下,又は身体操作力が12以下でボール操作力が8以下の場合であった。この検討結果は,埼玉大学紀要(教育学部)の67巻2号及び68巻2号に掲載ないし掲載予定である。 第2はバレーボールのアンダーハンドパス及び縄跳び動作のキネマティクスデータの解析である。しかし,予算的な理由からこれまでデジタルビデオカメラ2台でデータの収集を試みてきたが,十分に精度の高いデータが得られていない。当初計画していた実験を完了するに至っていないため,デジタルビデオカメラの台数を増やして来年度に再度実験を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究課題を含む運動不振学生に関する一連の研究は6つのステップから構成される。ステップ1 で,大学生版の運動不振尺度を作成し,運動不振の判定法を開発する。ステップ2 で運動不振学生の体育授業における「つまずき」経験を検討し,運動不振を呈する者が苦手とする運動課題を明らかにする。そしてステップ3・4で球技系の運動課題,ステップ5・6 で,非球技系の運動課題における運動不振学生の動作を自由度の観点から分析するという計画である。 本来であれば本年度はステップ5・6に位置する。しかし,先に述べたように運動不振の判定基準の検討等を行う必要があったこと,及び2台のデジタルビデオカメラでは精度の高いキネマティクスデータが得られなかったことなどの理由から十分に研究を進めることができなかった。来年度は新規にデジタルビデオカメラを購入する予算的な見通しがたったため,この点を改善して研究を進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度の研究計画では,引き続きバレーボールのアンダーハンドパスの動作の解析と縄跳び動作の解析を行う。熟達のプロセスにおいては,動作の変動と安定が繰り返される。このことは,練習の中で関節運動間の連結と独立により,自由度の拘束と解放が行われていると解釈できる。しかし,運動不振学生は,自由度の解放が遅い又は認められない等の非運動不振学生とは異なる制御方略を用いることが仮説として考えられる。 参加者は,アンダーハンドパス及び縄跳びのそれぞれの課題において運動不振学生8 名程度及び比較対象としての非運動不振学生8 名程度とする。運動不振学生の抽出には,大学生版運動不振尺度(古田, 2016)を用いる。デジタルビデオカメラ3台を用いて参加者の動作(アンダーハンドパス及び縄跳び)を撮影し,動作解析プログラムFrame-DIAS5を用いて解析する。以上の手続きによって得られたキネマティクスデータをもとに,相互相関係数を算出し,複数の関節動作間の関連を分析する。また,パフォーマンス指標(回数等)における違いも検討する。 前年度まではデジタルビデオカメラ2台でキネマティクスデータを得ようと試みたが,十分なデータを得ることができなかったため,今年度は3台のデジタルビデオカメラを用いて実験を行う。昨年度は研究費の不足のためデジタルビデオカメラの追加購入ができなかったが,今年度は購入できる見通しとなっている。
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Causes of Carryover |
主として,計上していた国内旅費を執行しなかったためである。次年度も学会出席のために旅費は必要となるため,年度は異なるが,同様の目的で執行する予定である。
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Research Products
(2 results)