2016 Fiscal Year Research-status Report
体育授業における対話能力向上のための教育プログラムの構築:身体知の現象学と社会学
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16K01620
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
木庭 康樹 広島大学, 総合科学研究科, 准教授 (60375467)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田井 健太郎 長崎国際大学, 人間社会学部, 講師 (00454075)
佐々木 究 山形大学, 地域教育文化学部, 准教授 (30577078)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 身体性哲学 / インクルーシブスポーツ / 現象学的身体論 / 身体知 / ゴール型集団球技 / ブラインドサッカー / 身体図式 / アフォーダンス |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度では、まず第1回国内研究会を8月末に広島市内で開催し、分担者2名と連携研究者1名に対して、研究代表者が研究構想の発表を実施した。また、研究代表者の指導学生である川本真実と内山葉月がそれぞれ、「ゴール型集団球技スポーツにおけるボールの現象学的研究―モーリス・メルロ=ポンティの身体論の観点から―」と「ゴール型集団球技スポーツの種目特性に関する現象学的研究-状況判断のトレーニングの探究に向けて-」のテーマで発表を行い、参加した研究者らと意見交換を行った。特筆すべきは、後者の内山葉月が平成28年度総合科学部岡本賞を受賞したことである。また、年度当初より、現象学や生態学的心理学、インクルーシヴ教育に関する文献蒐集を行い、それらに関する研究成果を、広島大学総合科学研究科編/佐藤高晴責任編集『左と右・対称性のサイエンス』(叢書インテグラ―レ)丸善出版、2017年所収、第6章「スポーツにおける左と右―サッカーの対称性と反対称性をめぐって―」に公表することができた。なお、ブラインドサッカーの映像データはまだ収集できていないが、ブラインドサッカーとコートの大きさが同じ健常者のフットサルに関しては映像データの集積が整ってきている。また、現象学的身体論を専門分野とする武蔵大学の田中愛氏(連携研究者)と定期的に情報交換を行っており、「インクルーシブスポーツ」の<身体知>の研究成果を、後の映像分析の視座に設定できるよう準備を進めている。以上、本年度の研究によって、手が使えないサッカーと障碍者スポーツの類似性が指摘され、ゴール型集団球技スポーツの選手が、身体図式を基盤に、「まなざし」によってレイアウト(状況)を知覚し、その状況のアフォーダンスを把握することで「状況判断」が可能になっていることなどが主に指摘された。今後の課題は、「スポーツ的共通感覚」の更なる探究や「一人称複数研究」の展開などである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度であるにも関わらず、順調に研究成果が表れており、しかもすでにその成果を公表できつつあるため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の課題としては、ゴール型集団球技における種目ごとのトレーニングメソッドについて探求(ボールを使う部位、ゴールキーパーの有無などの相違点から)、「共通感覚の原則」の具体的なトレーニングの提示、「一人称複数研究」(「一人称単数研究」を複数人で行う)などが挙げられる。これらの課題を克服することで、ゴール型集団球技スポーツの状況判断と種目特性について理解が深まり、サッカーやブラインドサッカーの類似性、さらには、それらと他の種目の差異も把握できることが予想される。そして、最終的には、それらの研究成果を映像で確認できるところまで考察を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
映像データ収集等に関して、海外での研究活動の時間が取れなかったため、およそ2回分の海外旅費として次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、ポルトガルやスペイン、イングランド等において、映像データ収集等の研究活動を実施する計画を立てている。
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