2017 Fiscal Year Research-status Report
過疎・高齢化する夜神楽の伝承現場から探る後継者確保・育成の方途
Project/Area Number |
16K01645
|
Research Institution | College of Nagoya Women's University |
Principal Investigator |
佐々木 昌代 名古屋女子大学短期大学部, その他部局等, 教授 (20270150)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
眞崎 雅子 名古屋女子大学, 文学部, 准教授 (10714925)
倉田 梓 名古屋女子大学, 文学部, 助教 (30780861)
豊永 洵子 名古屋女子大学, 文学部, 助教 (50780566)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 夜神楽 / 後継者育成 / 過疎・高齢化 / 椎葉村 / 旧東米良村 / 手割 / 格付け |
Outline of Annual Research Achievements |
・旧東米良村の銀鏡神楽について、平成28年度調査から手割の方針が変化していると思われたため、平成29年度祭当日もビデオ収録、手割の確認を行った。舞の技量が認められた祝子がより難易度の高い演目を手割される従来の方針から、祝子全体が全演目を習得することを目指した方針に変わっていた。それによって、より若い祝子に格上の演目が渡ることになったが、“覚える”までの舞にとどまっている演目が少なくなく、10年前の調査時と等しい高質の舞とは言えない状況であった。 ・椎葉村の栂尾神楽、尾前神楽について、平成29年度祭当日のビデオ収録と手割の確認を行い、10年前の調査時との比較資料を得ることができた。追手納神楽についても調査を行ったが、観客が非常に多く分析可能なビデオ撮影が行えず再調査が必要であるが、10年前調査時の現役世代は祭が“変わってきている”との認識を持っていることが分かった。調査結果の分析の視点に加味していく。 ・後継者確保の方途として学校の存在も欠かせないと考え、旧中之又小学校の崎田教諭、尾前小学校の外山校長に聞き取り調査を行った。学校の存在とともに、教職員の地域の人々と協働した伝承活動が大きな役割を果たしていることも分かった。 ・伝承が厳しい夜神楽として椎葉村の夜狩内神楽の調査を計画していたが、地域外には公開されず断念せざるを得ず、代わりに27年ぶりに夜神楽が復活された松尾かぐら祭を収録・調査できた。松尾地区には水越、畑、栗の尾の3集落それぞれに夜神楽が伝承されていたが、人口減少で存続の危機に見舞われ、3集落合同で夜神楽継承に取り組むことになった。伝承地域の広域化による復活として捉えていきたい。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
・椎葉村の向山日当神楽の平成28年度調査では、保存会や地域の人々とのコミュニケーションが難しく計画通りの調査はできなかった。春祭や小学校の焼畑学習などに足を運んで飲食を共にして漸く聞き取り調査や資料収集が可能になった。平成29年度祭当日のビデオ撮影ではカメラ設置に特段の配慮も得られた。このように、10年前の前回調査以降も祭には参加していたものの、調査となると改めてコミュニケーションを取るための意図的な関わりが必要であることを痛感した。平成30年度調査に向けては、追手納神楽において意図的な関わりが必要となった。 ・課題採択後に舞の分析のために研究分担者となった3名とは、椎葉村の夜神楽と東米良の夜神楽の両方を共に直接体験し、分析の視点について共通理解を進めることができたが、平成29年度は教職課程の再課程認定に向けた研究活動を優先する必要が生じ、課題申請時に想定したエフォート通りに研究を進めることができなかった。 ・宮崎県では、夜神楽の世界遺産登録に向けた調査、東・西米良の夜神楽群が国の重要無形民俗文化財指定を得るための調査が行われている。この県の調査と祭当日の収録や聞き取り調査が重なると本来の調査ができないため、日程を調整したが、これに火がかりによる祭中止が相俟って中之又神楽、尾八重神楽、嶽之枝尾神楽の補充調査ができなくなった。
|
Strategy for Future Research Activity |
・平成29年度までに祭当日のビデオ収録及び保存会に対する聞き取り調査が実施できた夜神楽について、①:夜神楽ごとの後継者育成の仕組み及び夜神楽執行状況について再確認しその変化について明らかにする、②:平成16年以降の夜神楽執行状況を確認する、③:平成16年以降の手割を確認し演目の格付けでの変化の有無について分析する、④:後継者の属性(年齢、継続年数、居住地、伝承地との関わり、手割された演目)を確認し10年前の調査時と比較する、について一覧表にまとめ、記録内容に錯誤がないか、平成30年度の祭執行状況の確認と併せて保存会の責任者に確認する。 ・平成29年度までに収録できたビデオ映像から、⑤:夜神楽ごとに指導的な立場にある宮司や保存会長などの舞の師匠への聞き取りを参考にしながら舞の個性(型)について、⑥:前回調査と今回調査の映像を舞の師匠、研究分担者と比較・検討して舞の変化について、確認する。⑥のための適切な映像を得ることができなかった追手納神楽、中之又神楽については補充調査(祭当日の収録)を行う。 ・映像収録・聞き取り調査及び映像分析をもとに調査報告書を平成31年2月中にまとめ、春期休業期間に、各神楽保存会の責任者に記述内容に錯誤がないか確認するとともに、研究協力者である椎葉村教育長甲斐眞后氏に助言を求めて加筆修正する。
|
Causes of Carryover |
・研究協力を依頼する予定であった舞の師匠(10年前の宮司、保存会長)の病気、比較可能な舞の映像を新たに収録できなかったことなどから、10年前の調査時と今回調査で収録した舞の比較分析が計画通り進んでおらず、そのために計上していた旅費、謝金が平成30年度へ繰り越しになった。 ・10年前より師匠もしくは師匠に準じた立場で指導に当たっているベテラン祝子、舞子が複数いる尾八重神楽、栂尾神楽、尾前神楽、追手納神楽、向山日当神楽について、祭(夜神楽)に向けた舞の稽古(習い)期間中に、新旧の映像比較から変化の有無、変化の内容を確認することになった。それによって、予算も執行していく。
|
Research Products
(3 results)