2016 Fiscal Year Research-status Report
地域スポーツ推進体制をめぐる構造的矛盾とソーシャルガバナンス
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16K01649
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
柳沢 和雄 筑波大学, 体育系, 教授 (60191152)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 地域スポーツ / ソーシャルガバナンス / 新自由主義 / 総合型地域スポーツクラブ / 指定管理者制度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は地域スポーツの推進体制が抱える構造的矛盾を明らかにし、それを克服するソーシャルガバナンスのあり方を目的としている。 1年目である平成28年度の研究計画は、新自由主義思想およびソーシャルガバナンスの理論的背景を整理するとともに、総合型地域スポーツクラブや指定管理者制度の先行研究を整理し、それらの構造的矛盾を検討することにあった。地域スポーツをめぐっても指定管理者制度に象徴されるような競争的な民営化が進んでいるが、それは住民主導による市民社会化を目指す総合型地域スポーツクラブの潮流とは相容れないことを確認した。その基本的差異は、公共サービスの提供方式や活動原則が根本的に異なることにある。すなわち本来、総合型地域スポーツクラブは「住民委託方式」よるものであり、地域スポーツの自律・自立と市民化を目指すが、指定管理者制度は「民間委託方式」であるから、住民の受動化と地域の市場化を促しかねないのである。それ故、複雑化する地域スポーツのローカルガバナンスを確立しなければならないという、今後の地域スポーツの方向性が仮説的に示唆された。 さらに本年度の先行研究では、「新自由主義VS市民社会」という構図を拡大し、「中央VS周辺」という構造問題とその構造が生み出す構造的権力問題まで論究した。2020年東京オリンピック・パラリンピックを象徴的な題材にしたが、この問題は、メガスポーツイベントの問題だけでなく、中央と地方、さらには日常の地域生活や地域スポーツの中に差別や格差を生み出す構造問題を内包していることを論じた。 その成果は、全国的研究誌論文、雑誌論文、招待講演という形で成果発表された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、先行研究の検討に必要な文献整理・資料収集・学会等での情報収集を中心に、2~3箇所の自治体で予備調査として、ヒアリングを行う予定であった。しかしながら、研究課題なっている地域スポーツの構造的矛盾が顕著に表出している自治体を見いだすことができなかったため、実際の資料収集とその整理や現地での関係者へのヒアリングを行うことができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、再度、予備調査となる事例自治体を抽出し資料収集とヒアリングを行う。そして、その整理した内容を参考に分析枠組みを作り、約1,000の総合型地域スポーツクラブに対するアンケートを実施したい。そこでは、新自由主義による民営化が進む中で、孤立化し取り残されていく、住民の主体的・自発的取り組みの現実と課題を検討する予定である。アンケート調査にあたっては、研究室に所属する大学院生の協力を得る予定である。 また、アンケートとは別途に、事例調査を行う予定であるが、事例の選定にあたっては、スポーツ庁、全国スポーツ推進委員連合から情報を収集する予定である。
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Causes of Carryover |
研究仮説を検討するための先行研究の整理や資料収集は行えたが、先行事例となる自治体の抽出が予定通りできなく、ヒアリングに赴く旅費およびヒアリングのテープ起こしの人件費が支出できなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は、スポーツ庁や全国スポーツ推進委員連合から、研究テーマに相応しい事例を紹介頂き、先行事例としてヒアリングを行う。またその事例は当初の計画であった2年目の事例研究としても位置づけていく。さらに、平成29年度はアンケート調査を行うが、アンケート調査費との調整もし、適切に支出する。
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Research Products
(3 results)