2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K01653
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
奥村 基生 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (90400663)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木島 章文 山梨大学, 総合研究部, 教授 (10389083)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | フェイント動作 / 二者間距離 / 動作の類似性 |
Outline of Annual Research Achievements |
フェイント動作はあらゆる対人競技で観察できる重要かつ有効な対人・スポーツ技能である.熟練選手は巧みなフェイント動作を駆使して相手の反応のタイミングとイベントの誤りを誘発し、決定的なチャンスを作り出す.本研究では,特に,1 対1 の剣道競技におけるイベントのフェイント動作を対象にして,1)偽装動作開始時の二者間距離の遠近と,2)通常動作と偽装動作の初動の類似性による有効性の変化を検証する.そして,有効なフェイント動作の実行・学習のための具体的な指標を呈示する. 本研究の学術的な特色・独創的な点は,フェイント動作の有効性の決定因を解明する試み自体である.先行研究は従来の認知技能の熟練研究に倣い,実験刺激を通常動作からフェイント動作に組み換えているに過ぎず,フェイント動作自体の有効性を検証していない.また,フェイント動作を分析した研究もあるが,動作の成功と失敗試行で明確な相違を発見できておらず,動作の有効性の決定因を解明できていない.さらに,これらの先行研究の欠点は,フェイント動作を観察する選手のみ,実行する選手のみを対象にしている点である.フェイント動作とは動作を実行・観察する選手の相対的な関係で成立する対人技能である.本研究では,フェイント動作を二者の関係性,成功と失敗の相違などから検討し,その有効性の決定因などについて新たな知見を得る. 本研究の発想や成果は,スポーツの熟練過程や対人認知の研究に新たな発見や方法をもたらすはずである.さらに,フェイント動作が多様なスポーツで重要な技能であるが故に,学校や競技現場での運動・スポーツ教育のために有益な情報を提供することにつながり,社会・教育的な意義も深い.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フェイント動作を実行・観察する選手の相対的な関係を考慮すると,動作を開始する二者間距離は動作の有効性の決定因となり得る.好例として,1 対1 の剣道やボクシングで500 ms 以内に終了する1 回の打撃の攻撃・防御動作を考える.二者間距離が近くなると,攻撃の移動距離が短くなり,攻撃の運動時間は短くなる.同時に,防御に許容される反応・運動時間が短くなる.そして,一定の距離よりも近づくと防御に必要な反応・運動時間を確保できず防御の成功率が急激に低下するはずである.一方で,距離が長くなると攻防の成否に対照的な現象が生じる.つまり,攻撃と防御の成功と失敗を決定づける臨界の二者間距離があり,この距離よりも近くで攻撃を仕掛けると相手は早急に防御する必要がある.すなわち,臨界距離よりも近くで偽装動作を開始すれば,相手は誤反応し「フェイントにかかる」可能性が高くなる.言い換えると,偽装動作を開始する二者間距離の遠近によってフェイント動作の成功・失敗などの有効性が変化するはずである.フェイント動作の有効性に対する距離の影響は,あらゆる対人競技において仮定できるため検証の価値がある. 今年度は,通常動作と偽装動作を開始する二者間距離の遠近を統制する実験を実施し,フェイント動作の有効性の変化を検証した.まず,通常動作と偽装動作の組み合わせから,参加者が実行可能な攻撃の通常動作とフェイント動作を選定し,その攻撃に対する適切な防御動作も選定した.そして,対戦する参加者に攻撃者か防御者の役割を与えた.各試行において攻撃者は通常動作かフェイント動作による攻撃をランダムに実行し,防御者は適切な防御を実行した.二者間距離の統制は,攻撃者の動作開始時の距離を10 cm 毎に区切り,各試行において防御者の位置を固定した上で,攻撃者は開始距離をランダムに変えて攻撃した.
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Strategy for Future Research Activity |
現在は実験データを処理している最中である。今後,必要であれば追加実験を実施する.また,今年度は複数の学会で成果を発表する予定である.
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Causes of Carryover |
三脚をレンタルするなどして物品費の使用を軽減,分析アルバイトを雇用しなかったため人件費の使用が少なかった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
必要物品の購入,分析アルバイトなどの雇用のために使用する計画である.
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