2017 Fiscal Year Research-status Report
学校のスポーツ活動における負傷事故の分析:根拠に基づく実態の解明と安全対策の推進
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16K01659
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
内田 良 名古屋大学, 教育発達科学研究科, 准教授 (50432282)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 学校安全 / スポーツ傷害 / スポーツ医学 / 頭部外傷 / 水泳事故 / 飛び込みスタート / 学校事故 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,次の2点である。(1)学校管理下のスポーツ活動における負傷事故について,その実態を解明して,安全対策の要点を導出する。(2)得られた知見を迅速にウェブサイト上に公開し,一刻も早い安全対策の検討を国内外に向けて呼びかける。 (1)の学校管理下のスポーツ活動における負傷事故に関する研究では,2017年度は特定競技に踏み込んだ分析に,重点的に取り組んだ。具体的には,プールの飛び込みスタートによって,頭部をプールの底に打ちつける事故の実態について,個別事例の分析,既存の資料の二次分析,質問紙調査による分析をおこなった。 個別事例の分析においては,鳥取県の小学校で起きた事故事例をもとに,指導者である顧問の知識不足が,重大事故に結びつくことを示した。また,学校や教育委員会における事後対応の問題点を検討した。 既存の資料の二次分析においては,『学校の管理下の災害』等の資料から,重大事故が体育の授業にくわえて部活動でも起きていること,また部活動では学年に関係なく起きていることを明らかにした。学校のプールは溺水防止用のために構造的に浅くつくられているため,初心者から上級者まで誰もが頭部を打つ危険性がある。さらに質問紙調査による分析においては,共同研究として東京都の高校生の水泳競技大会において質問紙を配付し,その分析をおこなった。その結果,高校での水泳部活動において約35%の生徒が,身体をどこか1回はぶつけた経験があることが明らかとなった。この分析からも,少なくない水泳部員が事故に遭っていることが示された。 (2)のウェブサイトにおける知見の公開については,筆者が主宰する「学校リスク研究所」ならびに「リスク・リポート」(ヤフーニュース個人)において,分析の結果を公開するとともに,事故防止の啓発活動に努めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記「研究実績の概要」に示した(1)の学校管理下のスポーツ活動における負傷事故に関する研究では,当初予定していなかった分析が可能となったため,豊かな知見を得ることができたと同時にそれを啓発活動へとつなげることができた。 とくに個別事案においては,被災した子どもの保護者と接点をもつことができたために,それが新たな研究の指針へとつながっていった。保護者からはさまざまな視点や検討事項を提示していただき,分析や啓発活動時における新たな着眼点を得ることができた。 また,高校生を対象とした質問紙調査も,当初は想定していなかった調査である。調査の結果,水泳部員も日頃から危険な状況を経験していることが明白になった。これが,既存の資料の二次分析の結果を補強することになった。 以上の理由から,本研究はおおむね順調に進展しているとみることができる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度の作業をとおして,水泳の飛び込みスタート事故を継続的に調査研究する必要性と,さらには飛び込みスタートの事故以外にもいくつかの競技種目を丁寧に検証する必要性が生じた。そこで平成30年度においては,まずもって上記の調査研究を遂行したい。 またそれに合わせて,当初から計画している,過去約30年分の負傷事故の概要についてもできるだけ明らかにしていきたい。具体的には,『学校の管理下の災害』のデータを過年度に遡って整理・分析する。 さらにこれまでの研究成果の概略を,ウェブサイト上に公開する。ただし現在のウェブサイトは,やや使い勝手が悪くなって箇所があるため,コンテンツやデザインを一新させる作業を優先させたい。その整備が終わった時点で,最新のデータを公開することとしたい。
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Causes of Carryover |
【理由】平成29年度は,年度当初に予定していた海外出張2件のうち1件をとりやめて,2018年度に延期したため。
【使用計画】平成30年度は,イギリスでは重度頭部外傷に関する安全対策の検討,アメリカでは水泳指導のあり方ならびにプール施設の整備状況に関する視察を計画している。そのための海外渡航費に充てる。
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Research Products
(4 results)