2016 Fiscal Year Research-status Report
スポーツメンタルトレーニングとスポーツカウンセリングの共通性と独自性
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16K01675
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
平木 貴子 日本大学, 経済学部, 講師 (00392704)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 心理サポート / メンタルトレーニング / カウンセリング / 心理専門家 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年,アスリートや競技団体から心理面のサポートを求められることが増えてきている.依頼内容も競技力向上に関することから,競技意欲の低下,スランプ,怪我や痛み,競技引退,食事,睡眠,対人関係など多岐に渡り,心理専門家が担う役割は多様化・複雑化している.多様化・複雑化する現場のニーズに対応するために,心理専門家には高い専門性と同時に,自身の拠って立つアプローチの理論的枠組みを超えた視点や,異なるアプローチで研鑽を積んできた専門家との連携・協力が求められている.今後,さらなる連携・協力を図るためには,まず,各アプローチが持つ共通性と独自性を明確にし,互いの専門性を活かした連携のあり方を模索する必要があると考えた.そこで,本研究では,我が国におけるスポーツ現場における心理専門家の資格として,スポーツメンタルトレーニング指導士とスポーツカウンセラーの2つが存在することに注目し,それぞれの心理専門家が拠って立つアプローチであるスポーツメンタルトレーニング(SMT)とスポーツカウンセリング(SpC)の差異や共通点を明らかにすることを目的とした. 本研究の目的を達成するために2つの検討課題を設定した.【検討課題1】心理専門家を対象にサポート形態を調査し,我が国の心理サポートの現状を整理する.【検討課題2】同一のサポート事例に対するSMT・SpCそれぞれの立場からの見立てと介入方針を比較検討することで,各アプローチの共通性や独自性を検討する.上記の検討課題を3年間かけて遂行する.2016年度は,主に検討課題1における調査項目の選定,調査協力依頼,検討課題2における検討事例の選定,心理サポート事例の提示内容の検討および資料作成,調査協力者の募集を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
検討課題1において,年度内に横断的調査を完了する予定であったが,調査の協力依頼に時間を要したために年度をまたいで実施することとなった.しかし,検討課題1に関しては,あらかじめ半年の猶予を持って計画しており,今後,十分調整が可能である.検討課題2においては,すでに数件の検討事例を候補事例として,抽出し,資料作成を終えている.事例検討の実施に関しては,すでに数名の調査協力者には調査参加の内諾をとっている.上記の理由により,おおむね順調に進んでいると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は2つの検討課題から構成される(研究実績の概要参照).平成29年度以降の実施計画は以下の通りである. 検討課題1:アスリートに対する心理サポートを実践している心理専門家を対象とした心理サポート形態(サポート経験,アプローチ法,サポート対象者の傾向,他の心理専門家との連携経験など)について調査を実施し,各立場によるサポート実態を明らかにする. 検討課題2:前年度に作成した資料をもとにSMT・SpCそれぞれの立場の心理専門家各5名程度を対象として,主訴の異なるいくつかの事例(各心理専門家には同一の事例を提示する.受理面接を中心に資料作成をする)をSMT・SpCそれぞれの心理専門家と検討し,各心理専門家の見立てや想定されるその後の介入方針を中心に比較検討する.得られたデータは,「提供事例に対する各アプローチの見立てや想定される介入方針の比較」「提供資料に対する着目点の相違」「異なるアプローチで介入した事例を検討する際に感じる違和感」の観点から分析する. 得られた成果は,論文化するとともに学会やSMT指導士会などで資格取得者への情報発信を行う.
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Causes of Carryover |
検討課題1の調査を平成29年度に実施することとなったため,謝金で使用する経費の一部(140,787円)を平成29年度の調査協力者謝金として繰越すこととした.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は本調査を実施するため,調査関係書類の発送料,データ入力にかかる費用,調査協力者への謝金などが必要となる.また,得られた結果についてほかの研究者とのディスカッションを行う必要があるので,学会において発表を予定している.
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