2017 Fiscal Year Research-status Report
動脈スティフネスの低下が運動パフォーマンスを高める機序の解明と実践的応用
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16K01676
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Research Institution | Nippon Sport Science University |
Principal Investigator |
岡本 孝信 日本体育大学, 体育学部, 教授 (40330518)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 脈波伝播速度 / 最高酸素摂取量 / 心機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は日頃から専門的にトレーニングを行っている成人男性7名を対象として、ストレッチが動脈スティフネスを低下し、左心室拡張機能および有酸素性運動パフォーマンスを向上させるかどうかについて検討した。被験者は実験室入室後20分間の安静を取り、血圧脈波検査装置を用いて頸動脈-大腿動脈間脈波伝播速度(cfPWV)および超音波画像診断装置を用いて左心室拡張機能を測定した。安静時の測定後、ストレッチ試行として30分間の全身のストレッチを実施し、ストレッチ終了直後および30分後に上記の測定を実施した。測定後、有酸素性パフォーマンステストとして最高酸素摂取量(自転車エルゴメータによる漸増負荷テスト)を測定した。また、コントロール(ストレッチを行わない)試行として30分間の安静を取り、ストレッチ試行と同様の測定を行った。なお、ストレッチ試行とコントロール試行は1週間以上の間隔を空け実施の順序が異なるよう無作為に実施した。ストレッチ試行のcfPWVはストレッチ前と比較してストレッチ終了直後は変化が認められなかったものの、ストレッチ終了30分後は大きく低下した。対照的に、コントロール試行のcfPWVはいずれの時点においても変化が認められなかった。また、ストレッチ試行の左心室拡張機能はストレッチ前と比較してストレッチ終了直後は変化が認められなかったものの、ストレッチ終了30分後は大きく増加した。対照的に、コントロール試行の左心室拡張機能はいずれの時点においても変化が認められなかった。ストレッチ試行の最高酸素摂取量はコントロール試行と比較して高い値を示した。これらの結果から、ストレッチによる大動脈スティフネスの低下は有酸素性運動パフォーマンスを向上させるとともに、その機序として左心室拡張機能が関係している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
29年度はストレッチが動脈スティフネスを低下し、左心室拡張機能および有酸素性運動パフォーマンスを向上させるかどうかについて検討し、ストレッチによる大動脈スティフネスの低下は有酸素性運動パフォーマンスを向上させるとともに、その機序として左心室拡張機能が関係している可能性が示唆したことから本研究の仮説通りに研究自体は進んでいる。しかし、現在のところ対象者が7名であり、論文として公表するにはさらに被験者を追加して実験を行う必要がある。本実験の追加実験は本年度の課題と並行して行うことより、本研究の進捗はやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
29度の実験においてストレッチは大動脈スティフネスを低下させ、左心室拡張機能を高めることによって有酸素性運動パフォーマンスを向上させる可能性が示唆された。また、ストレッチは身体の柔軟性(長座体前屈)も高めることによって有酸素性運動パフォーマンスに影響を及ぼすことが明らかにされた。したがって、本年度は身体の柔軟性を高める方法としてフォームローラーを使用した自己筋膜リリースを行い、動脈スティフネスと左心室拡張機能が変化するかどうか、また、その変化が運動パフォーマンスに影響を及ぼすかどうかについて検討する。
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Causes of Carryover |
29年度は年度始めに予定していた被験者よりも少ない人数で実験を終了した。次年度はさらに追加実験を計画しており、被験者に対する謝金に使用する予定である。
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Research Products
(3 results)