2017 Fiscal Year Research-status Report
棘下筋のトレーニング効果に関する研究:動作特性と介入による影響の検証
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16K01685
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
谷本 道哉 近畿大学, 生物理工学部, 准教授 (70435733)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 棘下筋 / ローテータカフ / 筋活動レベル / 肩回旋運動 / 野球投手 |
Outline of Annual Research Achievements |
以下の2つの実験を実施し研究結果を得ることができた。本研究結果は次年度において学会発表および論文作成を行う。 野球投手の投球動作における棘下筋筋活動レベルの肩回旋運動の実施による一過性の影響:8名の野球経験者を用い、1kgの錘による肩関節外旋運動15回×2セットを実施し、その直後に全力での投球を行った。肩関節外旋運動を事前に実施した場合、実施しなかった場合と比べて投球動作中の棘下筋の筋活動がピーク時前後0.4秒間の平均では有意な増大(+23%)、最大値ではやや増加傾向(+17%)を示した。大胸筋、広背筋の筋活動レベルおよび球速に差は見られなかった。 野球投手の投球動作における棘下筋筋活動レベルの肩回旋運動の実施による長期効果の検証:8名の野球経験者を用い、1kgの錘による肩関節外旋運動15回×2セットを週5回×2週間実施し、運動介入期間前後に全力での投球を行った。肩関節外旋・内線運動の介入によって、介入期間前と比べて投球動作中の棘下筋の筋活動がピーク時前後0.4秒間の平均では有意な増大(+139%)、最大値ではやや増加傾向(+137%)を示した。大胸筋、広背筋の筋活動レベルおよび球速に差は見られなかった。また、棘下筋の筋厚に変化は見られなかった。 肩関節外旋運動の実施は一過性および持続性に投球動作時の棘下筋の筋活動を高める様子が観察された。肩関節の安定性の向上に役立つ可能性が示唆された。ただし、肩関節動作筋の筋活動レベルに変化はなく、球速にも変化は見られなかった。パフォーマンスアップに直接的な影響は見られないようである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H28,29年度ともに、被験者のリクルートおよび運動介入、測定が順調に進み、研究計画は順調に進捗している。 H28年度は予定通りの内容である研究1「肩関節不安定動作種目と安定動作種目の棘下筋の筋活動レベルの比較」を遂行し、H29年度にその結果を学会にて発表を行った。また、被験者リクルートが野球投手において行えた都合から研究3「野球投手のローテータカフ筋量および投球動作における棘下筋筋活動レベルの評価」の前半部分を行い、その結果を学会にて発表した。この研究において「野球投手の投球肢側の棘下筋は特に他競技および反対側と比べて発達していない」という結果が得られたため、主な着目点を棘下筋の筋量変化から筋機能に変更し、研究デザインに若干の修正を加えてH29年度の研究に修正を加えた。その概要は「研究実績の概要」に示した通りである。研究を順次遂行していくなかで、その結果を鑑みてそれ以降の研究計画に修正を加える予定であったので、この変更は想定内であり、研究の進行に問題はない。 引き続き棘下筋の筋機能に着目してH30年度にはさらなる実験を進めていく。その概要は「今後の研究の推進方策」に記す通りである。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定の研究3の後半部分である「野球投手の投球動作における棘下筋筋活動レベルの評価」をH29年度の研究結果を踏まえて修正を加えて実施する。 当初案:[被験者] 5年以上の競技経験を有する野球投手10名 [測定内容]投球動作における棘下筋の筋活動レベルを速球とカーブにおいて表面筋電図で測定する。比較動作としてパンチ等他の上肢をダイナミックに振り回す動きを用いる。 →追加修正事項:上記実験において、H29年度に行った軽負荷肩関節外旋運動の運動介入を行い、単回の運動による一過性の変化と長期運動介入による持続性の変化の観察を行う。評価対象の運動は当初案と同一、測定項目は当初案と同一のもの+長期介入による形態変化として棘下筋筋厚を追加する。単回の運動条件はH29年度の方法と同一、長期介入実験では運動介入期間を延長し、4週とする。被験者はH29年度は野球経験者を用いたが、H30年度は関西大学野球リーグに所属する、選手活動を現在行っている選手を用いることとする。
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Causes of Carryover |
H28年度の研究の結果から、「野球投手の投球肢側の棘下筋は特に他競技および反対側と比べて発達していない」という知見が得られたため、主な着目点を棘下筋の筋量変化から筋機能に変更した。これに伴う研究デザインの変更として、長期運動介入による形態変化を観察するための筋力トレーニング介入実験を行わず、運動機能の変化に着目した短期運動介入および一過性の運動応答の実験に変更した。このため被験者謝金および運動指導者日当が大幅に減額された。 H30年度は、棘下筋の運動時の活動に着目して介入期間を延長した運動介入実験を行うため、当初のH30年度予算予定よりも大幅に被験者謝金が増額となる。また、筋機能評価として近赤外分光装置のプローブを1式追加で設置する。
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