2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K01699
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
橋本 純一 信州大学, 学術研究院総合人間科学系, 教授 (60189488)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | スタジアム設計 |
Outline of Annual Research Achievements |
横浜で開催された国際会議「スタジアム&アリーナ2016 カンファレンス」に参加して、スタジアム設計の近年のコンセプトは、「都市(地域)再活性化」と「グローバル都市としてのプレゼンス」のふたつの側面が強調される傾向にあることが明らかになった。文献研究とこの予備調査に基づき、欧州における中規模先進スタジアム(今回は特にオーストリアの新設スタジアム)のケーススタディを中心に行なった。そのパースペクティヴは、研究代表者の提示していたスポーツ観戦空間分析の8つ(「自然」、「システム」、「課題解決」、「経済/投機性」、「イデオロギー」、「ヒストリー/物語」、「領域性/場所」、「美的次元」)を重視した。 オーストリア・ザルツブルグ市のレッドブル・アレナの視察と共に、ウィーン市のアリアンツ・スタディオンのフィールドワーク調査を、スタジアム設計者とスタジアム運営者への半構造化インタビューを混じえて行なった。具体的にはスタジアムのデザイン(設計)における方針(特にスポーツ観戦環境の政策決定過程において、いかに多くのステークホルダーが、どの程度の影響力を持ってそのプロセスに影響力を及ぼしたのか)、およびその構造・機能・意味について考察した。 この観点から明らかになったのは、ウィーンのアリアンツ・スタディオンにおいては、ドイツ人建築家のみならず、ファン/サポーター、各種メディア、スタジアム・コンサルタント企業、ウィーン市代表、ラピド・ウィーンのクラブ・スタッフ等のあらゆるステークホルダーが、利用者目線で積極的に設計に関わり、そのシステムが有機的に機能していたということである。そしてスタジアムを生かしたグローバル都市としての再活性化には、むしろローカルかつユニークなアドバンテージ/エレメントをいかに発掘し、盛り込み、進展させてゆくかが鍵になることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
綿密な先行研究レビューと予備調査によって、スタジアムに関する文献研究と事例研究が行われた。特に横浜にて開催された国際カンファレンス「スタジアム&アリーナ2016」において、スタジアム建築とアリーナ建築のグローバルなトレンドを把握でき、世界のスタジアムにおける後進性と先進性の理解が向上した。この会議における資料に基づいて適切な先進スタジアムを調査対象に選択できたことは非常に有意義であった。
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Strategy for Future Research Activity |
①環境面やサスティナビリティ(持続可能性)において国際的に評価の高いドイツのスタジアムの設計担当者へのインタビューと議事録や重要ドキュメントの分析により、デザインの特徴・コンセプトはいかなる経緯と要因で決定していったのかを明らかにする。なおここではドイツ語に堪能な仲介者(コンサルタント)を雇用する計画である。 特に環境問題や機能性で地域住民との対立のあったスタジアム等に関してのリサーチを行う。 併せて前年度まで展開したリサーチを踏まえて、どのような社会・文化的・環境的背景が影響していたかを比較文化論的に明らかにし、今後のスポーツ観戦空間の望ましいあり方に関して提案を行なう。 ②竣工したばかりの北九州市の新スタジアム及びヤフオクドーム(福岡)さらにはマツダスタジアム(広島)の建設に至る政策決定過程を、要人への半構造化インタビューや、重要会議議事録、新聞のドキュメント解析によりリサーチし、いかなる経緯と要因でスタジアム建設が決定したのかを政治的要因(影響力/権力)、経済的要因(影響力/権力)、文化的要因(影響力/権力)という3つの文化社会学視点から明らかにする。 ③その成果を「信州大学環境科学年報第40巻」にて明らかにする。
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