2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K01701
|
Research Institution | Nara University of Education |
Principal Investigator |
高橋 豪仁 奈良教育大学, 保健体育講座, 教授 (40206834)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | プロスポーツ / 地域 / 公共性 / ソーシャル・キャピタル |
Outline of Annual Research Achievements |
Jリーグクラブのホームタウンの地方公共団体が、Jリーグクラブにどのような支援をしているのか、またJリーグクラブとどのような協働事業を実施しているのかを、明らかにするために、168の地方自治体に対して2018年9月中旬に質問紙調査法を実施した(有効回答:112票、有効回答率:66.7%)。34%の地方公共団体がクラブに出資をしていた。ホームスタジアムとしてJリーグクラブによって使用されている地方自治体が所有するスタジアムのうち、7割以上がクラブによって優先使用され、6割近くの地方自治体が使用料の減免措置をしていた。また、観客のスタジアムへのアクセス面での便宜、クラブのPR、子どもたちへの招待券の配布等、様々な支援が、地方公共団体によって実施されていた。また、子どもを対象としたスポーツ教室(57%の地方公共団体が実施)、成人を対象とした健康増進活動(32%の地方公共団体が実施)などの協働事業や、地域経済活性化を目的とした協働事業が実施されていた。 2018年10月21日(日)、アルウィンスタジアム(長野県松本市)において、松本山雅FC 対 FC岐阜のゲームの観戦者に対して、ソーシャル・キャピタルを内容(「信頼」「ネットワーク」「互酬性の規範」に関する9項目)とする質問紙調査を実施した。調査票を334票配布し326票の有効回答を得た(有効回答率:97.6%)。観戦者の観戦回数と、ここで設定した全てのソーシャル・キャピタルの項目との関連性は見られなかった。また、サポーターグループへの加入とソーシャル・キャピタルとの関連性も見られなかった。一方、クラブ公認の後援会加入の有無とソーシャル・キャピタルとの関連性を検討したところ、ソーシャル・キャピタルの「ボランティア・NPO・市民活動への参加」と「地縁的活動への参加」において、後援会加入者の方が非加入者よりも、参加頻度が高くなっていた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度は、地域に根ざした活動をしているJリーグクラブの先進事例として松本山雅FCを取りあげ、関係者にインタビュー調査等を実施するができたが、ホームゲームの観客へのアンケート調査は、受け入れ側の都合で実施することはできなかった。本年度、再度松本山雅FCに観戦者に対するアンケート調査の実施を依頼したところ、実施を許可され、興味深い結果を得ることができた。 また、「新しい公共」の視点から、ホームタウンの公の行政を司る地方自治体と、株式会社という民間の組織形態をとるJリーグクラブとの関係に注目し、ホームタウンの地方公共団体は、Jリーグクラブにどのような支援をしているのか、またJリーグクラブとどのような協働事業を実施しているのかを、質問紙調査法を用いて、その全国的な傾向を明ができた。 こうしたデータを得ることができたが、それらを巧くまとめることができずに、学術論文として研究成果を公表することができなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和元年度は、それまでに得られた資料・データをもとに論文を執筆し、研究成果を公表したい。 まず、平成30年度に実施した松本山雅FCのホームゲーム観戦者を対象としたソーシャル・キャピタルに関するアンケート調査の結果を分析・考察する。さらに、ここで得られたJリーグの中でも地域活性化に貢献していると評価されている松本山雅FCの観戦者のソーシャル・キャピタルと、前年度実施したJリーグ入りを目指している奈良クラブの観戦者のそれとに違いがあるのかを明らかにする。 次に、平成30年度にJリーグクラブのホームタウンの地方自治体に対して実施した、Jリーグクラブへの支援・協働事業の結果をまとめるとともに、松本山雅FCの関係者に対して実施した聞き取り調査の結果や松本市のクラブ支援に関する訴訟に関する事例について分析・考察する。 あわせて、こうした論文作成において必要となる文献研究や追加の聞き取り調査も実施する。
|
Causes of Carryover |
当初予定していたスポンサー企業に対する調査が不十分であったために、次年度使用額が生じた。また、公共性に関する理論研究やデータ分析が不十分であった。そこで、公共性の理論に関する先行研究を検討したり、得たデータの細部にわたる分析をしたり、追加のデータ収集をするために助成金を使用する。
|