2016 Fiscal Year Research-status Report
女子サッカーの競技力向上を目指してPART2-アジリティ能力の検討-
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16K01708
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
吉村 雅文 順天堂大学, スポーツ健康科学部, 教授 (10210767)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 女子サッカー選手 / アジリティー能力 / GPSシステム / 方向転換 / 慣性センサー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、最新のGPSシステムを用い、試合中に出現する「アジリティ能力」について測定・分析を行い、日本人女子サッカー選手の特徴・傾向を見いだし、競技力向上のために必要な「アジリティ能力」を解明することを目的とする。日本サッカー協会は、フィジカルパフォーマンスは世界と戦う上では不十分としながらも、「アジリティ能力」に関しては、日本女子選手のストロングポイントであると述べており、この能力はどの国の代表と争っても優れていることを示唆している。また、国内においては、直線のスプリントテストでは差がないにも関わらず、年代間およびパフォーマンスレベル間でアジリティ能力では顕著な差が示されていることから、競技力を差別化する一つの要因としても考えられる。そのため、トレーニングによるアジリティ能力の向上、即ち方向転換走時における切り返しの安定性や、減速-方向転換-加速の一連の動きの円滑さを追求することは日本女子サッカー選手の競技力向上を考える上では不可欠な要素であり、日本女子代表が国際舞台で更なる飛躍を遂げるための必須条件である。したがって、日本女子サッカーにおける試合中のアジリティ能力を定量的に解明し、数値化したものを科学的なエビデンスとして選手の指導現場に還元することは意義あるものである。 本研究の目的を達成するにあたり、①世界初GNSSを採用したGPS、Optim Eye S5を使用し、女子サッカー選手の「アジリティ能力」に関連する「スピード・方向変化」に着目し定量化する。また、②女子サッカーの試合中に出現する素早い方向転換やターン等の動作に焦点をあて、速度変化(減速-方向転換-加速)について測定・分析し、日本人女子選手の方向転換やターン等の特徴および傾向について明らかにする。③世界のトップレベルであるアメリカ人女子サッカー選手との比較を行い、日本人女子選手との違いについて比較検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年は、①女子サッカー選手の「アジリティ能力」に関連する「スピード・方向変化」に着目し、世界初GNSSを採用したOptim Eye S5(Catapult社製)を使用し定量化を試みた。さらに、サッカーと同様に高強度間欠的運動能力を要する競技特性を持った、女子バスケットボールおよび女子ハンドボールを比較対象として、女子サッカーの特徴および傾向について明らかにした。 その結果、どの種目についても、速さについては、Low、Medium、Highの順で生起回数が減少しており、方向については、前後よりも、左右の頻度が多くなっていることがわかった。各種目ごとに4方向の移動の1分間当たりの発生頻度(Rate)をみると、サッカーでは、前方移動、702.1分で584回あり、1分間当たりに換算すると0.83回/分となった。方向に関係なく方向変化した回数の総計を種目ごとに集計すると、バスケットボールが、13.38回/分と最も単位時間当たりの方向変化の頻度が多く、次いでハンドボールが10.01回/分であり、サッカーが5.83回/分と最も頻度は少なかった。次にJリーグとJ大学について1分間当たりの発生頻度(Rate)を比較した。その結果、Total頻度では、有意差は確認できなかったが、1分当たりのMedium,Highの発生頻度では差が確認できた。ハンドボールにおいては、上位群、下位群に有意差が確認された。今回測定対象とした、女子サッカー、女子バスケットボール、女子ハンドボールに関して「スピード・方向変化」の様相は競技種目の違いにおいて、異なることが判明した。 また、女子サッカーとJリーグの比較から、性別においても、「スピード・方向変化」の様相は異なることが判明した。さらに、女子ハンドボールの上位群、下位群の比較から、レベルによっても、「スピード・方向変化」の様相は異なることが判明した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的を達成するにあたり、上述の①~③の研究計画を立てている。昨年度、女子球技選手を対象にAcc(Acceleration:加速), Dec(Deceleration:減速), CoD(Change of Direction:方向転換)の頻度, 強度(速度から定義した)、その方向を比較検討した。2年目の本年度は、日本人女子サッカー選手の実際の試合中に出現しているCoD(Change of Direction:方向転換)およびターン等の特徴・傾向について調査を行い、競技レベル別ならびにポジション別に比較検討を行う。また、世界のトップレベルの選手と日本人女子選手との違いについて比較検討できるようにしたいと考えている。 今後の調査では、女子サッカー選手を対象として、実際の試合中に出現する加速、減速、方向転換の現象が出現している頻度、ならびにそれらが高強度で行われている頻度について、より詳細な調査、分析を実施していく。競技力を差別化する一つの要因であると言われているこれらの要素を定量化することで、競技レベルの高い選手の方がより優れた値を示すことが予想される。また実際の試合において測定を実施するため、同時にポジションの違いによる動きの特異性も明らかとなる。 以上のことから、女子サッカー選手の競技力向上に非常に重要であると考えられる「アジリティ能力」に関して、ウェアラブルデバイスを用いて実際の試合中からその構成要素を抽出し、定量的に解明することで、数値化したベンチマークを指導現場に還元することができる。また、個別化・グルーピング化した評価を行うことで、選手各々の有する能力に基づいた適切なポジション配置や、各ポジションの動きの特性を活かした効率的なトレーニングメニュー考案の一助となり、女子サッカーの育成強化に貢献できる科学的エビデンスを得ることができると考えている。
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Causes of Carryover |
昨年度中に、国際学会での発表および情報収集を行う予定であったが、日程調整が難しく計画通りに実行できなかった。また、競技レベルの高い女子サッカーの被験者を増やすことができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
国際学会発表のための旅費、競技レベルの高い女子サッカーの被験者に対する謝金が必要になると考えられる。
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Research Products
(2 results)