2017 Fiscal Year Research-status Report
長距離走の戦術としてのペース変化を意図した過渡応答運動に対する生体反応の検討
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16K01715
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
右田 孝志 久留米大学, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (00239211)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 酸素摂取動態 / ペース変化 / 過渡運動 / 脱酸素化ヘモグロビン |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究課題は次の二つであった。1)本研究に関して前年度に実施した実験結果を論文として発表する、2)当初予定の29年度の研究実施計画に沿って実験を行うことであった。1)に関しては、全身の応答特性を示す酸素摂取動態は、直前の速度がVT相当の高い場合、ペースアップ後の応答速度を遅くする可能性が示され、それにはペースアップ直前の酸素摂取動態が影響を及ぼしていると推察された。その一方で、筋出力の指標としての積分筋電図および組織酸素化レベルの指標としての近赤外分光法による脱酸素化Hbレベルには直前の走速度の影響は認められなかった。以上のことを論文としてまとめた。 2)に関しては次の通りである。長距離走中、突然のペース変化、特にペースアップは走者にエネルギー需要の点から負担を強いることになる。そこで、ペース変化のタイミングを知らされている場合とタイミングを知らされていない場合で生体応答に差があるのかどうかを検討した。被験者は走行中にペースアップする過渡運動を次の4条件で行った。(1)ペースアップ前4分間、ペースアップ後6分間でペースアップアップのタイミングを知らされている運動、(2)同条件でタイミングを知らされていない運動、(3)ペースアップの前3分間、後6分間の運動、(4)ペースアップの前5分間、後6分間の運動であった。なお、(3)と(4)はタイミングを知らされていない条件で実施した。いずれの群もペースアップ前の走速度は各自のVT相当であり、ペースアップ後は⊿40%相当(VT+(VO2peak-VT)×0.4)の走速度であった。生体応答の指標として肺胞レベルの酸素摂取量を呼気ガス分析装置を用いてbreath-by-breathで測定し、および活動筋の酸素化レベルの指標として組織の酸素化・脱酸素化ヘモグロビンを近赤外分光法(NIRS)を用いて2Hzで測定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題に取り組むために実施した平成28年度の研究を整理し、その成果は「高強度過渡運動に対するペースアップ直前の走速度の影響」のタイトルで論文にまとめることができた(研究発表欄に記載)。さらに、平成29年度の課題であるペース変化を「仕掛ける走者」と「追従する走者」モデルとして、ペースアップのタイミング情報の有無の影響に関するすべての実験を完了することができた。但し、平成28年度の実験結果をもとに、被験者に準備のためのストレスを負荷せずに実験を実施することから筋出力(積分筋電図)の測定は実施せず、全身の酸素摂取量および組織レベルの酸素化動態に関しての測定のみを行った。現在、一部のデータを整理した段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度の研究はほぼ当初予定通りすべて完了できた。得られたデータの整理を行い、今後、レース戦術としてのペース変化を「仕掛ける走者」と「追従する走者」の生体応答の相違という点で学会発表を行って広く意見を求めて、論文としてまとめる予定である。
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Causes of Carryover |
成果発表のための費用として使用予定である。
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Remarks |
2018年3月開催の第15回健康科学研究会にて、「過渡運動時の生体応答-ペース変化情報の有無に関して-」のタイトルで口頭発表した。
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